表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/107

17.5.IF【もしカインが裏切ったら?】

 翌日。

 身体もすっかり回復して、俺は宮廷付与術としての仕事に戻っていた。

 アービスを倒すために使った剣の回収がまだ終わってないらしい。

 千本もばら撒いたことは申し訳なく思う。

 何本かは駄目になってしまったので、新調して付与し直さないと。


「エイト」

「ん?」


 作業中、後ろから声をかけられた。


「カイン」


 声の主はカインだった。

 身体を乗っ取られていた時の負荷で、まだ眠っていると聞いていたけど。


「もう起きて大丈夫なの?」

「ああ、お陰様でな」


 そう言ったカインは不機嫌そうに俺を睨む。

 

「そう。なら良かった」

「良かった? はっ! お前にとってはそうだろうな~」

「……どういう意味?」

「惚けてんじゃねーよ。どうせオレのことを見下してるんだろ? 悪魔なんかに取りつかれて、哀れな奴だと思ってるんだろ?」


 何を言っているんだ?

 カインの様子がおかしい。

 まだ操られている……わけではないみたいだ。

 だけど何だが、悪魔ではない何かにとりつかれているように、俺を見る目が淀んでいる。


「どうしたんだよ。そんなこと思うわけないだろ」

「何だ? 余裕のつもりかよ? そうだろうな~ お前は宮廷付きで、こっちは哀れな一介の冒険者。それも今回の件で確実にBランクに格下げだ」


 そういえば、次の依頼が達成されなければBランクへ降格になる、という話があったんだっけ?

 今回の件でということは、もう冒険者ギルドに伝わっているのか。

 さすがにそれはないと思うけど……


「他のみんなは知ってるの?」

「知るかそんなもん! どうせあいつらも思ってるさ。惨めで哀れな俺になんか、誰もついてきやしない。なのに……何で情けをかけた?」

「え?」

「お前が言ってくれたんだろう? 猶予を設けてほしいってな~ お陰で俺は生き恥をさらすことになった。満足か?」

「そんなつもりでお願いしたんじゃない! 俺はただ――」

「うるせぇ! 全部てめぇの所為だ!」

「カイン……」


 彼はひどく錯乱している。

 アービスに乗っ取られていた影響が残っているのか?

 あいつは確か、負の感情が強い者の身体を乗っ取ると言っていた。

 アービスの影響で、カインの中にあった負の感情が……俺への恨みや憎しみが、爆発しそうなほど膨れ上がっているのかも。

  

 これは良くないな。

 念のために備えをしておこう。


「言いたいことはそれだけかな?」

「あ?」

「終わったなら俺は失礼するよ。やることがあるからね」

「そうかよ……オレなんてもう眼中にねぇってか」


 カインから激しい怒りを感じる。

 身体が震え、その手が腰の剣に伸びる瞬間を見てしまって、俺は諦めた。


「エイトオオオオオオオオオオオオ」

「残念だよ」


 剣を抜き、襲い掛かってきたカイン。

 そんな彼を縫い留めるように、空中から剣が降り注ぎ突き刺さる。


「ぐおっ……こ、これは……」

「そうか。操られていた間の記憶はないんだね? じゃあ知らないか」

「て、てめぇ……」

「本当は、こんなことしたくなかったけど」


 彼が剣を抜いてしまった時点で、俺は諦めるしかなかった。

 もう彼は、取り返しのつかない所まで踏み入ってしまったのだと。

 俺が何を言おうと、無駄だと悟った。


「エイト殿! 何事ですか?」


 騒ぎを聞きつけた騎士たちが駆け寄ってきた。

 カインは手足を剣で貫かれて動けない。

 犬のように唸り、俺を睨んでいる。


「こ、これは……」

「彼が襲ってきたので、手荒ですが拘束しました。すみませんが、最低限の手当だけして牢へ入れてもらえませんか?」

「わ、わかりました。エイト殿はどちらに?」

「姫様の所へ行きます。俺が間違っていたと、伝えなければならないので」


 俺はカインに背を向け、城の中へと歩いていく。


「待てエイト! 覚えてやがれぇ! 必ずお前を呪い殺してやる……絶対にだぁ!」

「……カイン」


 今のお前は、本当に惨めだよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
[一言] 地獄のそこからよみがえった悪魔と合体する話もありかも
[良い点] 失点を認めるのも背けるのもその心ひとつと言うのが、よく分かるよね! 自分の出来ない事や失敗を認めるのは難しいと言うのが良く出来てて良いね! コアでは有るけど、人間模様もこの作品中々面白い!…
[一言] 『ざまぁ』作としてはこちらが正道でしょうか。 ただ、一度どん底を見てようやく自分の位置に気づき、 そこからやり直そうとするのも良い展開だと思います。 ってか、最近の意地でも認めない、最後…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ