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14.不穏な影が迫る

 エイトと別れたルミナスエイジ。

 不穏な空気に耐えかねて、シークの提案でいったん解散することに。

 カインは早々にどこかへ消えてしまった。

 残った三人は、苛立ちを露にするカインの様子を思い出し、大きくため息をこぼす。


「はぁ……どうするのよ」

「こっちが聞きたい。カイン……どうしてあんな態度しかとれないんだ」

「仕方ありませんよ。プライドの高い人ですし」


 彼らも薄々わかっていたことだった。

 カインがエイトにお願いする様子など想像できない。

 ましてや謝罪なんてするはずもなく、いつも通り高圧的にいくと考えていた。

 それでも、押しに弱いエイトなら、渋々了承してくれると期待した。


「エイトの奴、まさか宮廷で働いているなんて」

「ほんとビックリよね。最初は嘘だと思ったもん」

「ええ、ですが騎士の方が一緒でしたし、本当のことみたいですね。一体何があったのでしょうか」

「さぁな。でもどっちにしろ、あの様子じゃ戻ってくることはなさそうだ」


 リサとライラが頷く。

 当てが外れ、今後のことを話し合う。


「やっぱり新しい人を入れるしかないと思う」

「でも来てくれるかな? 今のあたしたちの評判……正直悪いでしょ」

「ええ。それにリーダーがあの調子では……」

「そうだな。まだ依頼は来ていないし、しばらく落ち着くまでそっとしておこう」


 三人がそんな話をしている一方。

 当の本人は荒れ狂っていた。


「ふざけんなっ!」


 豪快に、乱暴に、路地にあった木箱を蹴り飛ばす。

 寝ていた猫が驚いて、毛を逆立て逃げていく。

 続けて硬い壁を思いっきり殴り、恨み言を口にする。


「エイトの癖に……嘗めた態度しやがってぇ……」


 シークは落ち着くまで待とうと話していた。

 その想いとは裏腹に、カインの苛立ちは時間をかけるほど増していく。

 彼の脳内には、エイトに言われたことが何度も再生されていた。

 なまじ図星だった所為で、嫌でも心を抉る。

 見下していた相手に見放される気分は、想像を絶する惨めさだ。

 彼の心は夜の闇よりも濃く黒ずんでいる。

 

 その闇は、悪魔にとって最上の餌だった。


「憎いか? 恨めしいか?」

「だ、誰だ!?」


 突然聞こえてきた声に驚き、後ろを振り向く。

 しかしそこには誰もいない。


「怒りが抑えられないのだろう? どうしようもなく苛立つのだろう?」

「な、何なんだ? どこにいやがる!」


 それでも声は聞こえる。

 左右を見渡し、前後も確認して、空も見上げた。

 誰もいない。

 自分だけがいるはずなのに、声がハッキリと聞こえてくる。

 しかも聞こえてくる声は、寒気がするほど冷たく、無意識にカインの身体が震える。


「殺したいとは思わないか?」

「何だと?」

「自分を陥れた相手を」

「何を言って……」

「力がほしいなら、ワシが貸してやろう。恨みを、怒りを晴らすための力だ。ほしくはないか?」

「……ち、力だと?」

「そう、力だ。気に入らない物をすべて壊し、誰もがお前に平伏する。そんな力がほしくはないか?」


 悪魔のささやきだ。

 カインは直感的に、声の主が人間ではないと察する。

 それでも尚、力という言葉に惹かれ、こう答えてしまった。


「どうすれば手に入る?」

「簡単だ。ワシに……その身体を貸せばいい」


 次の瞬間、カインの影から紫色の炎が出現する。

 炎は膨れ上がり、カインへ襲い掛かる。


「な、何だこりゃ! う、うおおおおおおおおおおおおおおおお」

「さぁ、ワシに身体を預けるのだ。さすれば、この国の全てを壊してやろう」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ではエイト殿。私が留守の間、姫様を頼む。昨今は物騒だからな」

「そう心配なさらないでください。王城には結界もありますし、この中にいれば早々危険もありませんよ」

「うむ。まぁそうなのだが、何が起こるかわからない。特に魔王軍の悪魔であれば、この結界をも破壊できるだろう」

「幹部ですか」

「ああ。用心は必要ということだ」


 そう言い残し、騎士団長は遠征に出かけた。

 城門で彼を見送り、自分の仕事に戻ろうとしたところで、俺のことを呼ぶ声に引き留められる。


「エイト殿!」


 声の主は、街に出かけた時に護衛をしてくれた騎士だった。

 その後ろに誰かがいる。


「どうされましたか?」

「はい。実はエイト殿にお話があるという方が見えておりまして、以前にお話しされていた方です」

「カイン?」


 後ろにいたのはカインだった。

 珍しく一人だけだ。

 それに何だか、様子がおかしいような……


「お知り合いなのは存じ上げておりましたので、ご案内させて――え?」

「なっ……」


 一瞬、理解が追いつかなかった。

 騎士の腹部から刃が飛び出ている。

 その刃には見覚えがあった。

 何度も付与してきたカインの剣……彼が騎士を刺していた。


「どう……して……」

「カイン? 何をしている?」

「ふ、ふふふ、ふははははははははははははははは」


 叫び声で地面が揺れる。

 空気が軋むようだ。

 明らかにカインではない。

 見た目は同じだが、発する威圧感がまるで違う。

 声も――


「実に愉快! こうも容易く結界を越えられるとは思わなかったぞ」

「だ、誰だお前は? カインじゃないな」

「いかにも! ワシの名はアービス、魔王軍が幹部の一人だ」

「魔王軍の……」


 幹部だって?


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[気になる点] 関係悪いって言ってたのに、王城に入れるて……
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