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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第四章

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103.俺の役割を

 魔王城最上階にある一室、そのベランダに向かうと、下で戦っているみんなの姿がよく見える。

 思った通り、彼らは戦いを続けていた。

 未だに勝敗が決したことに気付いていない。

 もしかしたら気付いている者もいるかもしれないけど、信じたくなくて気付かないフリをしているのかもしれない。

 だから気付かせなくてはいけない。

 勝者として、新たな王として。

「魔王軍に属する者たちよ! 戦いは終結した!」


 俺は叫んだ。声を響かせる【拡声】を付与したことで、俺の声は魔王城全域に届いている。

 もちろん彼らにも。


「この声! あいつらやったのか!」

「まったく待ちくたびれたよ」

「信じていましたよ」

「……本当にもう、遅いのよ」


 彼らが戦いを止め、武器を降ろすと同時に、魔王軍の軍勢も一斉に戦いを止めた。

 皆が等しく同じ方向を見ている。

 これで視線は集まった。ここからは彼女たちの仕事だ。

 俺が一歩下がると、代わりに二人が前に出る。


「皆の者聞くが良い! 妾の名はルリアナ! 先代魔王サタグレアの娘じゃ!」

「先代の御息女?」

「嘘だろ? まさかリブラルカ様が敗れたのか?」


 ざわつく者たちに、ルリアナは大きくハッキリと宣言する。


「妾たちはリブラルカを倒した! この戦いは妾たちの勝利じゃ!」

「負けた……俺たちが負けたのか」

「そ、そんな……嘘だろ。リブラルカ様の魔力を感じない」

「じゃあ本当に?」


 自身の敗北を思い知らされ、次々に武器を手放していく魔王軍の悪魔たち。

 完全に戦意を喪失し、腑抜けたように立ち尽くす。

 彼らが強気で戦い続けてこられたのは、強者足るリブラルカの存在があったからこそ。

 彼が敗れたと知った時点で、その支えは消えてしまった。

 戦いを好み、争いばかり起こす彼らの心は脆く、不安定だった。

 だからこそ、彼らを支え導く存在が必要なんだ。

 今後その役割は、彼女が引き継ぐことになる。


「俺たちは……どうなるんだ?」

「案ずるな! お前たちのことは妾が導く! 妾と共に生きよ! 今日からは妾が魔王じゃ!」


 小さな身体を大きく見せるように、彼女は胸を張って皆に告げた。

 反論は上がらなかった。

 リブラルカに勝利した時点で、彼らは認めていた。

 魔王となるために最も必要な条件が、誰よりも強くあること。

 それを満たしたのなら、異論が出るはずもない。

 彼らは静かに、確かに、新たな魔王の誕生を見届けた。


  ◇◇◇


 激戦から一夜明け、魔王城は少しだけ賑やかになっていた。

 壊れた城の一部を修理しているから、金属音や重低音が鳴り響く。

 廊下をせわしなく走っていく悪魔たちを見ていると、人間も悪魔も、大して違いはないように思える。

 そんな風に思えるのはきっと、この旅を続けてきたからなんだと思う。

 そして今日――


「私たちの役目も終わりだね」

「ああ」


 アレクシアがそう呟いて、俺も頷き同意する。魔王を倒して人類の未来を守るため、俺たちは旅を続けてきた。

 その目的は果たされ、平和は守られた。


「そろそろ王都に戻らなきゃね。姫様も待ってると思うし」

「そうだな……うん」

「エイト君?」

「……いや、なんでもないよ」


 彼女の言う通りだ。

 俺たちの役目は終わったのだから、いつまでに魔王城にいるのも不自然だろう。

 そうして、お別れの日はやってくる。

 俺たち勇者パーティーの面々と、新魔王軍の面々が向かい合う。

 ルリアナの隣にはセルスさんが立っていて、その横にはベルゼドの姿もあった。

 リブラルカが負けたことで焦燥し、自害しようとした彼を、師であるセルスさんが引き留めたらしい。

 一時的に敵対したとはいえ、師弟としての絆は続いていたようだ。

 彼らの後ろにはインディクスの姿もあった。

 彼の技術力があれば、悪魔たちが不便に困ることはないだろう。

 頼もしい面々が揃っている。

 俺たちとしても不安はなく、任せていけると思っていた。


「戻ってしまうんじゃな」

「ルリアナ……」


 だけど、彼女の寂しそうな顔を見ていると、胸の奥がうずくように感じてしまう。

 このまま去ってしまっていいのかと。

 改めて俺は、自分の心に問いかける。

 今日までのことを振り返りながら、自分の役割を確かめる。

 そうして出た結論を、俺は仲間たちに告げる。


「すみません。俺やっぱり、しばらくここに残りたいです」

「エイト君?」

「ごめんアレクシア。いろいろ考えたんだけどさ。俺、ルリアナの手伝いがしたいんだ」


 胸の内に引っかかっていた心残り。

 まだ俺には、やらなきゃいけないことがあるような気がしていた。

 いや、やらなきゃじゃないな……やりたいことだ。


「俺は人間だけど、俺の中には先々代の魔王の力があって、その思いを知っている。彼が望んでいたのは、人間と悪魔たちの共存だった。互いに手を取り合い、助け合っていける未来を望んでいたんだ」


 俺も、そんな未来が来ればいいと思った。

 それに、俺が今日まで戦い抜けたのは、サタグレアから受け継いだ力があったからこそだ。

 彼がいなければ、きっと俺はここにいない。

 その恩返しもしたいと思う気持ちが、俺の中にはあった。

 俺は本心を、そのまま仲間たちに話した。我ながら我儘だと思う。

 でも――


「ったく、そんなことだろうと思ったぜ」

「エイト君なら言い出しそうだよね」

「そこが彼の優しさでしょう」


 みんなの反応は拍子抜けするほどあっさりとしていた。

 アスランさんも、ユーレアスさんも、フレミアさんも、なんだかみんな俺がそう言いだすのを待っていたように見える。

 もちろん、アレクシアとレナも。


「エイト君が残るならボクたちも残るよ!」

「それがエイトのやりたいことなら、私たちも協力するわ」

「みんな……ありがとう」


 旅は終わっても、俺たちの物語は終わらない。

 明日も、明後日も、何十年先だって続いていく。

 穏やかな平和を守るため、幸せを築くために。


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タイトルは――


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『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

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