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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第四章

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101.成長と停滞

コミカライズ化決定しました!

 ここしかないと、本能が叫ぶ。

 リブラルカが空間を入れ替え、アレクシアの動きを止めた。

 彼は今追い詰められ、アレクシアに集中している。

 虚を突くなら絶好の機会。

 しかし俺たちの攻撃が、リブラルカにとって致命傷にならないだろう。

 魔王を倒せるのは勇者の聖剣だ。

 アレクシアを救い出し、彼女の剣を当てるために。


「やるぞルリアナ!」

「うむ!」


 俺たちに出来ること。

 すでに情報は揃っている。

 残る魔力のほどんどを、今からの一言に込めろ。

 

「――【この場にあるすべての力よ! 無に還れ!】」


 最大出力の言霊。

 発動後に世界は静寂に包まれる。

 様々な世界を転々とした俺たちは、最初にいた魔王城へと戻ってきていた。

 氷も、水も、空も、砂もない。

 俺たちは最初から、この場所で戦っていた。

 あるべき姿に戻っただけ。

 

「なっ――」


 驚愕するリブラルカ。 

 思ってもみなかっただろう。

 自身が最も信じる手法、かの宿敵の力が人間の言葉にかき消されるなんて。

 俺の言霊は成長して、世界に直接干渉できるようになった。

 それはリブラルカが変化させた空間でも例外ではない。

 氷の世界になった時、俺たちを縛った氷を言霊で破壊出来た時点で、その可能性には気付いていた。

 あとは単に魔力量だ。

 一時的でいいから、リブラルカの魔力に打ち勝てば、空間を無効化できる。

 ただしそれだけじゃ足りないから、この場に作用する全ての力……すなわち重力も一時的に無効化させてもらった。


「ルリアナ!」

「任せるのじゃ!」


 リブラルカは状況の整理で一瞬だけ出遅れる。

 その遅れが命取り。

 対してルリアナは動揺せず敵だけを見ていた。

 無効化されたのは一瞬で、すでに効果は解除されている。

 彼女は重力操作を発動して、リブラルカの動きを封じる。

 そこへ駆けだす勇者アレクシア。

 対応しようとするリブラルカだが、それよりも速くアレクシアが迫る。


「この速さは――」

「ボクだけの力じゃないよ!」


 アレクシアが加速した理由は重力操作。

 リブラルカの動きを止めた高重力とは別に、ルリアナはアレクシアの身体を一瞬だけ軽くした。

 蹴り出しの瞬間に軽くしたことで、速度が何倍にも上昇したわけだ。

 ついさっきまで、重くするか軽くするかの片方しか出来なかった彼女は、土壇場で自身の能力を物にした。

 リブラルカも重力操作を発動。自らにかかった重力を相殺して迎え撃とうとする。

 すでにアレクシアは眼前。

 ギリギリだが、対応できない距離ではなかった。


「こんなもので我が負けるか!」

「【動くな】」

「っ――貴様ぁ」

「注意が散漫してるよ。やっぱりお前は偽物だ」


 聖剣の輝きが増し、光速の斬撃がリブラルカを斬り伏せる。

 文字通り瞬きの一瞬。

 目にも留まらぬ速さで振り抜いた聖剣は、まるで流れ星の様に光の線を残す。


「がっ……は……」


 胸を斬り裂かれたリブラルカは、傷口から血を吹き出し倒れ込む。

 間違いなく致命の一撃だった。

 加えて聖剣の力がリブラルカの身体に流れ込む。

 悪魔にとって聖剣は毒に等しい。

 

「はぁ……勝った……よっ!」

「ああ」


 アレクシアが指でブイサインを作る。

 嬉しそうな笑みは子供みたいに無邪気で、今すぐ抱きしめたくなるほど愛おしい。


「終わったんじゃな……」

「うん。終わったよ」

「父上の仇も……取れたんじゃな」

「ああ」


 ルリアナの瞳から涙が溢れ出る。

 やり遂げた達成感と解放感がいっぺんに襲ってきたのだろう。

 それでも彼女が立派なのは、泣きながらも前を見据えていたこと。

 流した涙を拭いながら、彼女と俺はリブラルカの元へ歩く。


「どうじゃ? これが妾たちの力じゃ」

「……ふっ、人間の力を借りた癖に、よく威張れる……」


 リブラルカはまだ生きていた。

 しかし命も残りわずか。

 勝敗は決し、敗者は消えるのみ。

 そんな状況ですら、リブラルカは不敵に笑う。


「所詮……お前たちは個では我に勝てなかった。我こそが魔王だ……」

「そうじゃな、妾たちは一人ではまだ未熟じゃ。でも……じゃからこそ助け合える。手を取り合える。じゃろ?」

「ああ。きっとあの人は、そういう光景を望んでいたんだ」


 先代魔王が目指した世界。

 そこには人間と悪魔に隔たりはない。

 互いに助け合い、手を取り合って生きていける。

 そういう世界を彼は夢見た。

 ちょうど今の、俺たちのように。


「リブラルカ、お前は確かに強いよ。でもやっぱり魔王にはなれない」

「……なぜそう言い切れる」

「お前がやっているのは誰かの真似だ。憧れた誰かの、畏怖した誰かの背中を真似して、その人みたいになろうとしているだけ。お前は魔王じゃない。魔王に憧れただけの……ただの悪魔だ」

「ふっ……そうだな。その通りだ」


 最後になって、彼は清々しく呆れた笑顔を見せる。

 まるでつきものが取れたように。

 彼の行いを許すことはないだろうけど、俺たちが色々と悩み葛藤するように、彼もそうだったのかもしれない。

 だとしたら俺たちは、もっと違う形で出会えていれば……

 リブラルカの身体が消えていく。

 綺麗な粒子になって、どこかへ飛んでいく。


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