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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第四章

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100.逆転の一点

 かつてアービスが使っていた武器庫の魔導具。

 所有者の魔力と肉声に反応して、中から大量の武器を出し入れできる。

 その性質上、所有者以外に開閉は出来ない。

 ただし例外が一つだけ存在する。

 より強力な言霊であれば、強制的に所有権を奪える。


「くそっ、閉門!」

「もう遅いぞ」


 武器庫から千の剣が飛び出す。

 さっきの一言によって中身の所有権まで変わってしまった。

 付与が施された無数の剣が、これまで強敵と戦ってきた剣たちが、今は俺たちを斬り裂こうと迫ってくる。


「【止まれ】」


 迫る剣を言霊で止める。

 もとは自分で施した付与によって動いている剣だ。

 今の俺なら難なく止められるけど、全ての所有権を奪い返すには時間がかかる。

 何より千という本数は多い。

 アレクシアとルリアナにも俺の剣が迫る。


「これはエイト君の剣だよ!」

「今は我の剣だ」

「この!」


 アレクシアも襲い掛かる剣の対応に追われる。

 ルリアナと俺も同様。

 これではいずれ隙を突かれる。


「ルリアナ!」

「わかってるのじゃ!」


 その前に、彼女の特権で全て叩き落す。

 例によって俺たちにも影響する広範囲の重力だ。

 さっきはアレクシアだけだったけど、俺にも【抗重力】を付与する。

 一瞬なら耐えられるはずだ。


「うっ」

「ぐっ、これで良い」


 落ちていった剣たちには悪いと思う。

 これまで一緒に戦ってきた相棒みたいな存在だから。

 それでも今は、あいつを倒すことだけを。


「リブラルカ!」

「ふっ」


 瞬間、俺たちは空中から地面に移動する。

 正確には移動したのではなく、リブラルカの特権で空間が変化した。

 硬い黒曜石の地面だ。

 なぜこのタイミングで地上に戻したのか、その理由はすぐに分かった。

 俺たちは全員、重力に負けて地面に伏せる。

 そう、俺とアレクシアだけではなく、ルリアナも含めて。


「重力支配、中々に良い力だ」

「な、何じゃと……」


 地面に頬をつけながら、悔しそうにリブラルカを見つめるルリアナ。

 リブラルカの能力は模範。

 相手を観察し、理解することで自らの力とする。

 つまりそれは、何度も見せ続ければいずれ、俺たちの力も模範されてしまうということ。

 分かっていたことだ。

 予想は出来ていた。

 だからこそ短期決戦を仕掛けて、防御より攻撃に比重を置いていた。

 

「っ、予想より早い……」


 こうも早くルリアナの特権を模範されるとは。

 元から一番懸念していた力だし、その前に決着をつけたかった。

 

「妾の力を……」

「もうお前だけの力じゃない。これからは我の力でもある」

「お、お前は……」

「挑発に乗るなルリアナ! それより重力を反転させるんだ!」


 ルリアナの力も同じく重力操作。

 重くされたなら、反対に軽くすれば相殺できる。

 特権を再発動したことで、俺たちの身体は徐々に軽くなっていく。

 

「頑張るではないか。しかしそれではもう、先ほどまでの戦い方は出来ないぞ?」


 まさにその通り。

 ルリアナの重力操作は今後常に、リブラルカの重力の相殺に使わなくてはならない。

 実質ルリアナを無力化しているに等しい。

 加えて俺は武器の大半を失った。

 この時点でかなり不利になったのは事実だ。

 でも……


「まだボクがいるよ!」

「未熟な勇者一人で何が出来る?」


 アレクシアが単身でリブラルカに戦いを挑む。

 無謀ではあるが状況的に仕方がない。

 現状でリブラルカとまともに戦えるのは彼女だけ。

 俺の言霊も効果が薄くなってきている。

 魔力もかなり消耗してしまったし、乱発は出来ないだろう。


「エイトすまないのじゃ……」

「そんな顔しないで。まだ終わってない。ちゃんと手はある」

「本当か!」

「ああ、そのためにはルリアナの力もいるんだ。頼りにしてるよ」


 そう言って安心させるように、俺は彼女の頭を軽く撫でる。

 目の前でアレクシアが命がけで戦っているというのに。

 落ち込んでいる妹を慰める兄の気持ち……なのかな。


「二人の戦いを見るんだ。チャンスは一瞬、でもアレクシアなら必ず作り出す」

「わかったのじゃ」


 初手のタイミングは完全にアレクシア頼りだ。

 まともに戦える彼女だけが、唯一リブラルカを追い込める。

 俺に出来ることはせめて、可能な限り彼女に付与を施すこと。


「【身体強化】、【痛覚鈍化】、【反応速度向上】、【視野選択】、【魔力循環】……やれるだけ助力はする。後はアレクシア、君にかける!」


 何とも他力本願だ。

 それでも、彼女に期待する気持ちに嘘はない。

 なぜなら彼女は勇者だから。

 勇者とは、人々の期待を背負う存在なのだから。


「頑張れ!」

「任せて! ボクは負けないよ!」

 

 その直後からアレクシアの動きが格段に良くなる。

 足運びに迷いがなくなり、剣速も上昇した。

 重力と空間、モードレスの剣技をもつリブラルカと互角に渡り合う。


「急に動きが良くなったな。何をした?」

「何もしてないよ! ただエイト君が頑張れって言ってくれたから!」

「根性論か。人間の一番愚かしい価値観だ!」


 リブラルカも引かない。

 おそらく彼が最も警戒するのは、アレクシアの聖剣だろう。

 彼の力をもってしても、勇者の力だけは模範出来ない。

 だからこそリブラルカは、彼女の力を底上げする要因を先に排除した。

 俺の言霊、ルリアナの重力。

 どちらも強力だが、リブラルカを倒すまでには届かない。

 届くとすればアレクシアの聖剣のみ。


「どうしたのかな? 動きが鈍くなってきたよ!」

「この程度で図に乗るなよ」


 故に追い込まれれば必ず、最も信頼する手段に頼る。

 リブラルカは空間支配を発動。

 世界は一変して砂漠地帯となり、アレクシアの足元の砂が盛り上がる。

 そのままアレクシアの脚から胸にかけて絡まり、動きを封じる。


「ぐっ……熱……」

「ただの砂ではないからな。そのまま焼けて死ぬがいい!」


 苦しむアレクシア。

 だけど――

 

「今だ」

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