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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第四章

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98.頂点の戦い

 リブラルカの目つきが冷たさを増す。

 すでに臨戦態勢の俺たちに対し、リブラルカは未だ玉座から動かない。

 座ったままの姿勢で余裕そうに、ルリアナを煽る。


「元魔王の娘、お前は恥ずかしくはないのか? 魔王の血を引きながら、人間の助力を受けるなど」

「恥ずかしくない。二人は妾の大切な友人じゃ」

「友人? それこそ魔王には不要なものじゃないか。弱い生物特有の群れをなす哀れな行為。そこも先代と同じなのか。つくづく相応しくないな」

「【黙れ】」


 リブラルカが口を閉じる。

 ルリアナが意外そうな顔をして、俺のほうへ視線を向けた。

 落ち着けと制止した俺が、感情のままに力を振るっているから、驚いてしまったのだろう。

 本当は最初から苛立っていた。

 彼女の父親、先代魔王は俺にとっても父親みたいな存在だ。

 実際に声を聞いて、期待されていることを知って、それに応えたいと心から思った。

 先代こそ王に相応しい。

 そう思っているからこそ、勘違いで玉座に座る奴を、黙ってみていることは出来ない。

 幸いなことに俺の能力は、強い感情を込めるほど力が増す。

 頭はクリアに冷やしながら、言葉だけに感情を乗せる。


「くっくくく……これがお前の言霊。先代から受け継いだ力か!」

「こいつ……」


 言霊による縛りを無理やり解いた。

 セルスさんも出来ていたし、今さら驚きはしないけど。

 先代との邂逅、ルリアナの覚醒を経て、俺の言霊も強さを増している。

 あの時よりも強力になっているはずだから、それを解除するリブラルカの力は確かということになる。


「悪くはない。だが所詮は人間、悪魔の領域には届かない」

「偽物の癖によく口が回るな」

「……偽物かどうかは、味わってから知ると良い」


 リブラルカの雰囲気が変わる。

 冷たい視線はもっと濃くなり、漏れ出す魔力で背筋が凍る。

 彼はゆっくりと、その口を開き――


「【ひれ伏せ】」


 命令一言。

 リブラルカは俺と同じ言霊を行使した。

 直後、強力な圧力にさらされて三人とも地面に膝をつく。

 ギリギリ顔をつかないように手と膝で耐えながら、玉座でニヤリと笑うリブラルカを見る。


「どうだ? これが本物の力だ。貴様程度とは比べ物にならんだろう?」

「……確かに……強い。けど!」


 俺は大きく息を吸う。

 その全てを吐き出す様に、大口を開けて叫ぶ。


「【立ち上がれ!】」


 言霊とは、言葉に魔力をのせて放つことで、強制的に相手を従わせる力。

 解除する簡単な方法は、より強い言霊で上書きすること。

 言霊使い同士であれば、言葉に乗せる魔力量と、意志の強さで優劣が決まる。

 相手は曲がりなりにも現魔王になった悪魔。

 魔力量では敵わない。

 だけど――


「【怯むな!】」


 俺たちは立ち上がる。

 リブラルカの言霊に抗い、確かな二本足で。


「【前を見ろ!】」


 魔力で劣っていようとも、意志の強さでは誰にも負けない。

 思えば、俺はいつだって意志だけで戦ってきたようなものだ。


「【勝利を手にするまで、絶対に倒れるな!】」


 力なんて大したことはない。

 大事なのは、その力に屈しない強い心。

 俺たちにとってそれは標準装備。


「くくっ、愚かな」


 あざ笑うリブラルカを黒い影が覆う。

 頭上に視線をあげると、アレクシアが聖剣を振り上げて迫っていた。

 そのまま玉座に向けて振り下ろす。


「いきなり襲い掛かってくるとはな」

「ごめんね! ボクって難しい話が苦手なんだ!」


 リブラルカは攻撃を回避した。

 代わりに玉座は粉々になったが、当人に怪我はない。

 アレクシアは続けて猛追する。


「それに挨拶ならいらないでしょ! ボクは勇者でお前は魔王! 戦う理由はわかってるんだ!」

「それもそうだな!」

「っ……」


 アレクシアの斬撃が弾かれる。

 気付けばリブラルカの手には、どこからか取り出した魔剣が握られていた。

 禍々しいオーラを放つ漆黒の剣。

 形状や雰囲気はモードレスが使っていた剣と酷使している。


「その剣!」

「どうした? 見覚えでもあったか?」

「別に!」


 アレクシアは間合いを詰めて聖剣を横に振るう。

 体格差がある以上、懐に入らなければ切っ先は届かない。

 しかし近づきすぎれば当然、一定のリスクはある。


「怖い怖い。その一振りが致命傷になりえる。だからこそ確実に殺しておこう」

「ぐっ……」


 リブラルカの影が浮き上がり、刃の形になってアレクシアを襲う。

 咄嗟に回避した彼女だったが、身体中に切り傷を受けてしまう。


「よく躱した。だが遅いな」

「【動くな】」

「っ――人間が」


 影の刃で追撃しようとしたリブラルカを、俺の言霊が止めた。

 リブラルカは俺を睨む。


「いいのか? 俺を見ていて」

「そうじゃ! 妾を忘れるでないぞ!」

「ぐうっ! これは……」


 重力操作。

 すでに魔王の特権を発動していたルリアナが、リブラルカを高重力で押しつぶす。


「どうじゃリブラルカ! これが妾の力じゃ!」

「っ、確かに悪くはない」

「ふっ、今さら気づいても手遅れじゃ! 今じゃアレクシア!」

「うん!」


 アレクシアが聖剣を力強く握り、動けないリブラルカに迫る。

 俺の言霊と、ルリアナの重力。

 二つの力で拘束されれば、いかにリブラルカでも動けない。

 勝負はついた、と俺たちが思った直後。


「やはり甘い」


 リブラルカが笑う。

 そして世界は、透明な氷の大地へと変化した。


「なっ!」

 

 アレクシアが動きを止める。

 世界の変化に動揺したわけではなく、下半身が凍結して動けなくなっていた。

 俺とルリアナの身体にも氷がまとわりつく。

 何の前触れもなく世界が一変した。

 空は青ではなく紫色で、地の果ては見えない。

 ただ氷に覆われた大地に、俺たちは立っていた。


「空間転移? いやこれは……」

「父上の……力じゃ」


 ルリアナが唇をかみしめるように言う。

 そう、これは先代の魔王が使っていた特権。


「空間支配か」

「それだけじゃないよ! あの剣はやっぱりモードレスの剣だし、動きもあいつと同じだ!」


 アレクシアが叫ぶ。

 彼女はずっと違和感を感じていたようだ。

 その違和感は勘違いではなく事実。

 リブラルカは先代の力を扱い、モードレスの剣を振るっている。


「聞いていた通りじゃな。奴の能力は……」

「模倣」


 あらゆる力を模倣し、自身の力へと変換する。

 それこそがリブラルカの能力だ。

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