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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第四章

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97.魔王リブラルカ

 右肩から左脇にかけて、斬撃によって出来た傷から血が流れ出る。

 悪魔の血も人間同様に赤い。

 生き物である以上、当然痛みも感じる。

 セルスを睨むベルゼドの表情からは、苦痛に耐えている様子が伺える。

 傷口を手で抑えるベルゼドに、セルスは見透かしたように言う。


「どうしましたか? その程度の傷なら、何の問題もなく治癒できるでしょう?」

「……ふっ」


 ベルデドは小さく笑い、傷口から手を離す。

 すでに傷口は塞がっていて、流れ出る血も止まっていた。

 悪魔は人間よりも頑丈に出来ている。

 人間なら即死の攻撃も、悪魔にとっては致命傷にはならない。

 さらに魔力量に比例して、自己治癒能力も高くなる。

 ベルゼドほどの悪魔なら、一撃で即死するか、魔力が尽きない限り死ぬことはない。


「やはり騙せませんか。油断してもらおうと思ったのに残念です」

「油断などするつもりはありません。貴方の命が消えるまで、私は剣を振るい続ける」

「……先生は変わらない。本当に容赦がない」

「他人なら……あるいは、手加減出来たかもしれませんね」


 セルスは剣を握る地力を強める。

 彼の脳裏に過っているのは、弟子と過ごした日々。

 一日一日で確かな成長を見せる彼に、私は期待していた。

 それと同じくらい、負けたくないとも思っていた。


「ベルゼド、貴方は強い。それを誰より知っている私が、どうして手を抜けるというのですか」


 かつての弟子だからこそ、力を認めているからこそ。

 セルスは一歩引くことはない。

 

「ふっ、ふふ……本当に先生は変わらない。目の前のことしか見えていないんですよ。先生こそ、私と戦わずに王の元へ行くべきだったのに」

「……私がいなくとも、あの三人なら心配はいりませんよ」

「まだそんな甘いことを言いますか。貴方は知っているはずだ。我が王の力を」

「ええ。だからこそ私がここに残ったのです」


 エイトたちの戦いに、邪魔な雑音を立てさせない。

 彼らの勝利を信じているからこそ、妨げになる要因は排除する。

 それこそが自分の役目だと確信し、セルスは切っ先をベルゼドに改めて向ける。


「構えなさい、ベルゼド。貴方は私から一時も目を離すべきではありません」

「……本当に……相変わらずだよ先生」


  ◇◇◇


 雑兵とベルゼドをみんなに任せた俺たちは、魔王城の中をひた走る。

 人間には大きすぎる廊下に矢への扉は重厚で、まさに悪魔の城に相応しい佇まい。

 しかし意外なことに、俺たち以外の姿が見えない。


「おかしいね。何で誰もいないのかな?」

「確かに不自然じゃが、罠の類も感じ取れん」

「本当にただ誰もいないってだけみたいだね」


 俺たちは警戒しながら走る。

 悪魔たちの巣窟である魔王城。

 その中が空っぽなんてことはありえないだろう。

 何らかの仕掛けがあるのかと予想して突入した身としては、拍子抜けと言ってしまえる。

 ただ、無人と言うわけではもちろんない。

 俺たちが目指している最上階に、おそらく魔王リブラルカはいる。

 そのことだけは、漏れ流れる重たい魔力が物語っていた。


 そして遂に、俺たちは対峙する。


「ようこそ。愚かな人間と、過去の遺物」


 現魔王リブラルカ。

 かつての魔王サタグレアの側近。

 思慮深く、計算高く、意地汚い。

 その容姿はサタグレアとは対照的に、ゴツゴツとした歪な角と、黒い肌に紫色の瞳。

 一目で悪魔だとハッキリわかる容姿は、逆に俺たちを冷静にさせる。

 彼は玉座に座り待ち構えていた。

 下では部下たちが死力を尽くして戦っているのに、王である彼は何もせず、ただ俺たちを待っていた。

 その態度に、少なからず怒りを感じてしまう。

 ルリアナは特に……


「お前がリブラルカ……父上を裏切った」

「その通りだ」


 彼は何の言い訳もなく、あっさりと肯定した。

 表情や声色からも、一切悪いと思っていないことが伝わる。

 ルリアナは激怒する。


「なぜじゃ! なぜ父上を裏切った!」

「今更その説明がいるのか? そんなものとっくに理解しているはずだろう? それとも子供故の癇癪か。先代と同じで哀れ極まる」

「父上を侮辱するな! お前なんて父上の足元にも及ばん! 今から妾がそれを証明して――」

「落ち着いて!」


 俺はなるべく大きな声で、広い部屋中に響き渡るように叫んだ。

 リブラルカの挑発に乗せられ、頭に血が昇ってしまっては相手の思うつぼだ。

 感情を抑えるようにと、俺はルリアナの肩を叩く。


「気持ちは一緒だ。俺たちはあいつを倒すためにここまで来たんだから」

「エイト……」

 

 言霊なんて必要ない。

 思いを込めて伝えれば、気持ちは届くだろう。

 それに、俺たちには頼もしい味方もいる。


「ボクたちで! だよルリアナちゃん! 魔王を倒すのは勇者の役目なんだからね!」

「アレクシアの言う通りだ。怒りたい気持ちは一先ず置いておこう。言いたいことは全部、剣に、拳に、力に載せよう」

「……そうじゃな。そうじゃった!」


 怒りを吹っ切ったルリアナが、清々しい笑顔を見せる。

 そんな彼女を見たリブラルカは、つまらなそうにため息をこぼす。


「下らない感情論だ。まったく嫌になるほど似ているな……この親子は」


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