第六夜
――やあ、みなさん
またお会いしましたね
私、この呪いのWeb小説の主です
――呪いのWeb小説へようこそ
いきなりではありますが
あまり時間が残されていないかもしれません……
残念ながら
いやぁ、さすが大手さん
対応が早いですね
ご覧になった誰かが
この小説のことを運営さんに
通報したらしくてですね
通報されるほど
PV数もなかったはずなんですが……
削除されるのも時間の問題かもしれません……
本当はもっといろいろとみなさんに
『なろう民』を紹介したかったのですが
あまり時間も残されていないので……
そろそろ、主ぬしの話をさせていただきましょう
このまま、すべてが謎のまま、
いきなりこの呪いのWeb小説が削除されては
さすがにみなさんもポカン状態ですよね
せめて謎解きしておくのが
筋かなと思いまして……
主も昔は『なろう民』だったのですよ
「え、今は違うのか?」ですって?
まぁ、それは
続きを読んでもらえれば分かります
しかも『小説家になろう』で今流行りの
異世界転生・転移、俺Tueeeeeや
ハーレム、ラブコメには屈しない
自分のやりたいことをやる
自分が書きたいものを書く
誰もやってないような
新しいことをやってみたい
それぐらいの気持ちで小説を投稿してた
まぁまぁ面倒な奴だったのですね
でもこれだけ小説がある中で
誰もやってないことなんて
そうそうある訳ないですから
本当に随分と尖った
キワモノみたいな作品ばかり
書いていたんですよね
兆しは最初からありました
最初に書いた作品
人間世界の通り魔、凶悪犯が
異世界に転移して
異世界住人を皆殺しにする
そんな小説を書きはじめまして
その小説を連載中に
東京で本当の通り魔事件が起ったんです
被害者も多勢出ていたので
数日に渡ってニュースで
取り上げられたりもしていました
本人はどうにも気持ち悪くて
やはり背筋がゾワゾワしたものですよ
前にも言いましたが、そもそもは
脳内補正で事実が捻じ曲げられるぐらいに
思い込みが激しい質ですから……
オカルトチックで薄気味悪さを感じる反面、
誰かに聞いて欲しいような気持ちもあって
ちょうど小説告知用にtwitterをやっていたので
そこでまるで独り言のように呟いたんです
本人的には炎上したりしないか
ビクビクしながらだったんですが
ただまぁ、小説の告知以外、
誰かとコミュケーションを取ることも
全くしていませんでしたから
誰からも反応もなく
正直『そんなもんか』と思いました
やはり他人の作品などに
みなそれほど興味は持たないのだなと
これもまた後で
大失敗につながる訳ですが
その後も、書いた小説と現実世界の
ちょっとした不思議な符号は続きました
例えば、誘拐事件の話を書いたら
数日後に誘拐事件がニュースで報じられるとか
自分が小説に書いたことなので
その事柄に対して過敏になっているのだろう
敏感になり過ぎているため
ついつい関連した出来事だけを
勝手に過剰に認識してしまうのだ
そう自分に言い聞かせながら
気にしないように努めました
真剣に考えはじめると
結構、薄気味悪いですから
それからも、個人情報保護と
SNS社会をテーマにした新作を書いたら
駅にカニが落ちていて
それを動画撮影してSNSにアップした女性が
ストーカー被害にあったという
なんとも珍妙な事件が起きたり……
豪華客船での濃厚なラブシーンを小説に書いたら
新型ウイルスの感染者が豪華客船に隔離されて
濃厚接触が話題になったりもしました
その度に、
そんな偶然もあるものかと思いながら
誰かに聞いて欲しくて
小説告知用のtwitterで発信していたんです
そこまでは、
全然誰も反応がなかったので
『そんなもんだよな』と思っていたんですが
やはりあの大事件がきっかけで
潮目が大きく変わってしまったんですよね……
自分自身、そのネタは
数十年前に実際にあった事件を元にしていたんですよ
それを異世界モノにアレンジしただけなんですが
空からガソリンをぶっかけて
火を点け魔族達を焼き殺す
そんな話を書いて投稿してしまったんです
数日後、同じ手口の大事件が起きました
まだみなさんの記憶に新しく
傷が癒えていない方も多いでしょうから
詳細は敢えて割愛させていただきますが
何日にも渡ってニュースで報じられていましたし
今なおニュースになり続けていますよね
自分でも本当にコワくなって
めまいを起こして倒れそうになりましたよ
胸はモヤモヤ、背筋がゾワゾワ
全神経がザラつくような不快感
そこまではまだ
単なる偶然だったのですがね
このおぞましい感覚を
誰かに知って欲しくて
いつものように
小説告知用のtwitterで発信したんです
ですが、その時に限って
見事に大炎上しました
センシティブな社会的大事件の影響力を
完全に見誤ったということなんでしょうね
簡単に言ってしまえば、空気読めない
不謹慎な発言ということなんでしょうけど
わずか数分で何百、何千という罵詈雑言が……
最終的には数万件以上になるのですが
震えが止まらなくなって
きっと顔も真っ青だったんじゃないですかね
まるで世界中のすべての人が
自分を批難し罵っているような
そんな錯覚にすら陥りました
尋常ではなく動悸が早くなり
正常に呼吸が出来ない
過呼吸だったのでしょうか
血が巡っていないのか
巡り過ぎているのかよく分からないが
とにかく頭が真っ白で
胸が苦しくなる
そんな生易しいレベルではなくて
ダイレクトに心臓が痛く苦しくなりました
心筋梗塞というのは
こんな感じなのだろうなと
さら最悪なことにはネットの誰かが
主の個人情報を調べ上げたらしく
本名やら性別、年齢、
住所までもがネットに晒されてしまったんですよ……
それからは、毎日
アパートのチャイムが鳴る度に
ネット民が突撃して来たのではないかと
戦々恐々とする日々でした……
それで、ノイローゼになってしまい
発作的に空を飛んでしまったんですよね……
ビルの屋上から……
この呪いのWeb小説で
主が最初に説明したこと
覚えてますか?
…… 死んでしまった
『なろう民』を紹介する小説だと
今回、主自身について説明しましたよね?
そうなんです、主は
すでにこの世の者ではないんです
ただ、それはあくまで
主の核となった
人間の怨霊の話でして
それだけでは
主の正体と呼ぶには不十分なんです
そして、主の正体には
あなたも関係あるかもしれません……
人間の怨霊を核として
『小説家になろう』に吹き溜まった
負の感情や怨念の集合体
それこそが主の正体
その中にはあなたが発した
負の感情も入っているかもしれないのです……