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4話

家の馬車に運ばれてタウンハウスに戻った。

昨日から、ぐるぐると考えを巡らしすぎて頭が重い。


まずは軽食をとるために、食堂へ向かう。

温かいパンとコールドミート、少しの野菜をとると、食後に小さいカップが出てきた。


「これは……。」


「コーヒーを、マシンを用いて濃く抽出したものです。

 ロカマーナから新たに入ってきた飲み方だそうです。」


給仕を務める侍従が応えた。


なるほど、口に含めば強い苦みに衝撃すら感じる。

婚約者にまつわる悩みに煩わされていた私のために、一種の清涼剤として用意したものだろうか。

砂糖も多く使われているようで、落ち着く香りと濃い甘苦さが口中に残った。


しかし、かの国から来たものか。タイミングが悪い。

ロカマーナはフランチェスカ様の出身国だ。

一度落ち着いた悩みが、また胸の奥に溜まりはじめた。

抑えきれない不満があふれ出す。


だって、あの方が婚姻を結ぶ気なら、それでもいいと思ったのに。


他国から来た令嬢と親しくしたことを責めておいて、婚姻を結ぶことを許容するというのは矛盾しているかもしれない。


しかし、初めて彼女のことを知ったとき、ロカマーナ出身の美しい少女が我が国の王太子と町を歩いていると聞いたとき、真っ先に頭によぎったのは、あきらめに似た感情だった。


王太子と肩を並べて歩ける者は多くない。

そもそも謁見できるという時点で、高い身分を持っており、周囲の厳しい調査に耐えうる出自、身分をもっていることが確定する。


そのような基準を満たす他国の令嬢が、わざわざ我が国まで来て王太子と親交を深めているのはなぜか。

新たな婚約者であるという結論の他考えつかない。


ロカマーナ帝国は我が国より大きい。

小国の伯爵令嬢が早々に身を引くのが正しいと思われた。

だから、王家の手を煩わせないようこちらから婚約の取り下げを申し出た。


それなのに、実際はどうだ。


フランチェスカ嬢は確かに出身国において侯爵令嬢という身分を持つが、元は平民の娘だという。


我が国に来たのも見聞を広めるためのただの旅行であり、王太子殿下とは街で偶然会ったのだと周囲に説明しているらしい。

流石にそれは口実で、本当は婚約を結びに来たのだと考えたが……。

肝心の殿下があの認識だ。


おそらく、今後も彼女に関する誤解は広まっていくのではないだろうか。


たった1人の少女の言動に貴族社会がかき乱されていくような、嫌な予感が胸に広がった。

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