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●プロローグ●

 ●プロローグ●



 魔王が倒され、空を覆う暗雲が世界中から消え去り、美しい空が戻った。

 勇者一行が魔王を倒したのだと世界中の人々が歓喜に沸く中で、勇者を送り出した王都【ヴァルキルト】の玉座は恐怖で震え上がっている。

 勇者一行であった男が、一人だけで戻ってきたのだ。



「おお! 確かお前は勇者一行に居た……誰だったかな? 魔導師か?」

 血に塗れた男の姿を見て、ドルセ国王は引き攣る表情で何とかその言葉を口にした。



「魔王討伐ご苦労であった!……勇者や他の者達の姿が見えぬが、どうしたのだ?」



 国王の問いかけに対し、男は無表情のまま魔法の袋からナニカを玉座に向け放り投げる。

 ……ゴロリと落ちたソレは、魔法使いの首だった。

 玉座の間に響き渡る悲鳴をよそに、男は顔色一つ変えないまま仲間であった僧侶、更に勇者の首をまるでゴミのように投げ捨てた。



「あなた方の言う勇者一行とは、このゴミ共の事ですか。この方々でしたら魔王と戦う前に死にましたよ。一応、首だけでも持ち帰らねばあなた方が納得しなさそうでしたから、腐らないように魔法を掛けて持ち帰ってきたのですが」



 ざわめきが広がる中、男は魔法使いの首の前に歩み出るとコツッと首を蹴った。



「まず魔法使い、コレは使い物になりませんでしたね。麻薬に手を出して中毒症状を起こし、崖から落ちてお亡くなりになりました」

「そんな馬鹿な話があるか!!」



 勇者の出現を予言した、魔法使いの血縁者でもある賢者がそう叫んだが――。



「では、彼女の記憶でも見ればお解り頂けますか?」



 男は仕方ないとばかりに思念を呼び出す魔法を使う。床に転がった魔法使いの生首から靄が浮かび上がり、それは彼女が麻薬に溺れている姿を鮮明に映し出した。

 栄えある勇者一行の魔法使いであるという責任の重さに耐え切れず、逃げるようにして麻薬を使う日々……そして次第に壊れていく姿。目を逸らしたくなる最期の光景を見た数名が嘔吐した。



「彼女の死にざまは中々無様でしたね。錯乱して敵も味方も分からなくなり、最後は崖から落ちて死亡。まぁそれで楽になれたのですから、幸せな最後だった事でしょう」



 そう言いつつ映像を止めた男は、僧侶の首の前に立つとそれを先ほどよりも少し強めに蹴り飛ばし、生首がコロコロと転がるさまを見て不愉快そうに言葉を続ける。



「そして名ばかりの僧侶。彼女は見事な売女でしたね。行く先々の町や村や王国で男とやりたい放題。彼女の行いで何人子供が死んだかお教えしましょうか?」

「子供が死んだ?」

 その言葉にざわめく玉座の間で、彼が取り出したのはメモ帳だった。



「堕胎薬の使い過ぎによる副作用で、結局使い物にならなかった彼女。合計すると六人の自分の子供を堕胎薬で殺しています。癒し手となるべき僧侶が聞いて呆れる」



 そう言うと先程魔法使いに掛けた魔法を使う。映し出された僧侶の思念は、彼女が誰とも知れない男と快楽に溺れる姿だった。

 堕胎薬を使う度に動く事もできなくなり、宿屋で寝たきりの僧侶……それでもなお快楽を求めることを止めず、傷つきボロボロになって行くその姿を見た国王は目を逸らした。

 その様子を見た男は映像を止め、勇者の首の元に行くと壁にむけて強く蹴り飛ばす。壁にぶつかった頭はグシャリと不快な音を立てて潰れ、その中身を溢れさせた。



「最後にコレですが」

「もう良い、見せなくて良い!!」

「何を仰います? 皆様に証人になって貰う為にも、私は真実を見せなくてはなりません。私が彼等を楽にして差し上げたのだと言う事実をね?」



 そう言って薄っすらと微笑む男に、玉座の間にいる全員が震え上がった。



「まぁ、まずは見て御覧なさい。勇者と言う名を語っただけのゲスの行いを」



 そう言うと彼は勇者であった男の思念を映像化するが、それを見た国王達は一体何が起きているのか分からないでいる様子だ。いや、分かりたくないと言う所が正解だろう。



「街や村に王国、人の集まる場所に着けば勇者と言うだけで女性からは羨望の眼差しで見られます。それを良い事に自らのレベル上げもせずに寄り付く女を組み敷く日々。人々から依頼を受けた際にはその依頼を私に押し付け、自分は女と寝続けていましたよ」



 信じたくないとばかりに顔を覆う国王達に対し、男は淡々と語りかける。



「……とある村では依頼者の娘を無理やり襲って傷物にしたこともありますね。結婚を目前にしていたというのに、なんと哀れな。あまつさえ目の前で自害したその娘の家族に対し、勇者に抱かれて死んだのだから幸福だ、などと言い放ちましたよ」



 その言葉通り、勇者の目の前で首を刃物で斬って自害する村娘。映し出された涙は何を語っているのだろうか。



「まぁ、沢山の女性を泣かせましたが、最後には勇者自信が泣く羽目になりましたね。彼は最終的に梅毒に掛かっていました。僧侶の回復魔法も効かないくらいの末期です。……ここまで見ればお分かりでしょう。魔王を倒す事などできはしないと悟った私は、彼らを哀れに思い、魔王城に行く前に楽にして差し上げたのですよ」



 その言葉を待っていたかのように最後に映し出された映像は――助けを求める勇者の隣で首をはねられる僧侶。そして同様に首をはねられる勇者の姿だった。

 映像がそこで途切れると、ドルセは震える手を押えきれないように彼を見つめていた。



「もう一人……戦士については姿も首もない。彼はどうした」



 そう問い掛けられると、男は「ああ、申し訳ありません。失念していました」と口にし、続けて業務連絡のように告げた。



「戦士はとある戦いの際、敵の魔法で押し潰されてしまいまして。体の一部だけでも持ち帰ろうとしたのですが……いやぁ、見事に潰れていて持ち帰る事ができなかったのですよ。骨すら砕け散っていましたので、申し訳ありません」



 男が無表情のまま口にした言葉に玉座の間は再び沈黙に包まれたが、それを責めることはできない。

 公爵家の嫡男であり、賢者に予言された勇者。僧侶は伯爵家の令嬢であり、魔法使いは賢者の孫、戦士はこの国で長年王室騎士団隊長を務める家系の一人息子だったのだ。

 各々が由緒ある出自でありながら、映し出された映像は表沙汰にできる物では無い。その場に集った誰もが口を閉じて男を見つめるしかできなかった。



「ご安心下さい。魔王は私が始末しておきました。証拠が必要でしょうか?」

「証拠だと……? 証拠など空を見れば分かるであろう」



 そう力無く口にするドルセを前に、男は鞄からナニカを放り出す。辛うじて何かの頭だと理解できる程度の原型を留めたモノ。それを見て場に居合わせた全員が息を呑んだ。



「魔王の首です。一応血抜きはしてきましたが、切り取ったばかりですので新鮮ですよ?」



 その言葉に、国の重鎮達は男を恐怖の対象としてしか見ることができないでいた。

 目の前に居るのは勇者一行に着いて行った青年なのに。彼一人だけで魔王を倒し、世界から闇を晴らした事を称えても良いだろうに……。



 にもかかわらず、震え上がった面々は微笑を浮かべたままの男に対して言葉を出すことができない。玉座の間に集まっている重鎮達の半数は腰を抜かしたのか座り込み、失禁している者までいる始末。



「どうなされました? 国王様ともあろうお方が何を恐れているのです? 魔王は倒されたのですよ?」



 そう静かに口にした男に対し、ドルセは何とか力を振り絞ったが声は擦れて出てこない。

 男はその様子に小さく溜息を吐くと、もう一度「国王様」と口にした。ドルセには、それがまるで最後の警告だと言わんばかりの言葉に聞こえたようだ。



「そ……そなたの働き見事であった! 勇者達の死は残念であったが……無事魔王を倒し世界に平和をもたらしてくれた事を、誇りに思う!」

「ありがたきお言葉です」

「よって褒美を取らせる! 本来ならば勇者にこのヴァルキルト王国、たった一人の姫を娶らせる予定であった。その姫をそなたに授けよう!」



 震えた声でそう口にするドルセだったが、男は首を横に振り「そのような者はいりません」と口にした。

 それは不幸中の幸いか否か。もし姫を娶らせていればこのヴァルキルト王国の次期国王は彼になっていたのだから……そう考えるドルセは静かに安堵した息を吐いた。



「では一生遊んで暮らせるだけの金を与えよう!」

「それでは割に合いませんね。私は世界の闇を晴らしたのですよ? 一生遊んで暮らせるだけの金を貰うのは当たり前の報酬かと思いますが……たったそれだけですか?」



 その言葉にドルセや重鎮達は目を見開き驚いている。一生遊んで暮らせるだけの金では足りないと言うのだ。



「それでは望むもの何でも渡そう! 何なりと申すが言い! この際だ、何でもよい!」

「そう来なくては」



 その言葉に満足した男は少しだけ微笑むと、王国に何か起きた際に国政へ干渉する権利、さらに三回まで使える国への命令権を要求した。そして【勇者殺し】など不名誉な事を言い触らそうものなら、国を滅ぼす事もありえると伝えた。

 この要求に対してドルセや重鎮達は恐怖しながらも首を縦に振り、それを確認した男は次の要求を口にする。



「後は立地の良い場所に家が欲しいですね。無論魔王を倒したのですから、相応の屋敷を所望しますが」

「よろしい、すぐに手配しよう」

「そして、最後にもう一つ」



 これまでより強い意思を感じるその声に、玉座の間にいた全員が震え上がった。



「旅の途中で面白い話を聞きましてね……国王様のコレクションの中に妖精がいる筈です」

「妖精?」

「ええ、真珠色をした美しい妖精が」



 その言葉に周囲の重鎮達はざわめいた。それもそうだろう……真珠色の妖精は希少価値がとても高く、高額で取引されているのだ。



「その妖精を頂きたいのですが、宜しいですか?」

「それは……」

「この中では……国王様だけしか所持しておられませんよね?」



 まさか妖精を所持しているという事まで知られていたとは考えもしなかったのだろう。男にその事を告げられたドルセは、恐怖に震えながら静かに頷く事しかできなかった。

 ――真珠色の妖精。

 その話をとある村で老婆から聞いた時、懐かしい気持ちが湧き上がった男は、コレだけは譲れないとばかりに国王を見つめて微笑んだ。

 魔王を一人で倒したのもその妖精の話を聞いたからだ。そうでなければ魔王を倒そうなどとは思わない。勇者や僧侶を見捨ててどこかの村に隠れ住むこともできたのだから。



「改めて、報酬は一生遊んで暮らせる金と国へ干渉する権利に加えて三回まで使える命令権、そしてそれなりに良い家と……真珠色の妖精。宜しいですね?」



 その言葉にドルセは汗を噴出しながら頷く事しかできなかった。

 そして男自身も――何故国の重鎮や国王であるドルセが自分に対して恐れを抱く事には疑問を持たなかった。





 その後、ドルセに案内され向かった先は城の地下だった。

 真珠色の妖精は希少価値が高い為か、何重もの鍵が付いた扉の中に居るようで、さらには扉の前で一人の兵士が薄明かりの中見張っている。



「鍵を開けたまえ」



 国王がそう口にすると兵士は幾つもの鍵を一つずつ開けていく。

 ――この先に真珠色の妖精がいる。

 そう思うだけで無表情だった男の口角が上がっていく。

 そして最後の鍵を開けきり扉を開くとそこには広い部屋が用意されていた。



 まるで小さな子供の為に用意されたかのような、そんな印象を受ける部屋だ。窓もついているがその場所は高く、空しか見る事はできない。

 ふと、隣の部屋からジャリッと言う音が聴こえ、男は国王の制止を無視して扉を開く。そこには小さな、五歳くらいの少女が鎖で繋がれた状態で彼を見ていた。

 薄汚れた服、しかし決して失われる事の無い輝きを放つ真珠色のフワッとした髪……漆黒の瞳は大きく、じっと彼を見つめている。

 首や腕、足を繋ぐ鎖を見るに、国王は余程この妖精を逃がしたくなかったのだろう。男は少女に歩み寄ると解錠魔法を使いそれらを一つずつ外していく。



 その時、彼の瞳に映ったのは真珠色の妖精が居た部屋の様子だ。まるで檻のように、外の景色は見える造りになっている。

 真冬では辛かっただろう……それを物語るかのように、部屋の片隅は沢山の毛布で鳥の巣のようになっている。

 最後の鎖を解き放つと、真珠色の妖精は自由に動く小さな手足を見つめ、そのまま何も語らずに男を見つめた。

 そして男は妖精に手を伸ばしこう呟く……。



「さぁ、一緒に家に帰ろう」



 ――たった一言。

 たった一言口にした男に、少女は大きな瞳を見開いたまま大粒の涙を零してしがみつく。

 最早、国王は真珠色の妖精を諦めきっているようだったが、男を見つめて眉をひそめた。



「時にその方……勇者に着いて行った者として記憶にはあるが職は?」



 そんな事も記憶に無いのかと思う男だが、真珠色の妖精を抱かかえ静かに微笑む。



「勇者からは道具係と罵倒されてきましたがね……只の錬金術師ですよ」



 驚き腰を抜かした国王をよそに、男は真珠色の妖精の手を取り牢屋を後にする。







 その夜、国中……世界中の人間が魔王討伐を祝う中、男だけは華美な宴など必要が無いと言って出席もせず、明日用意ができると言う家を待つために城で休んでいた。

 その傍らには真珠色の妖精。城の風呂で妖精を綺麗にすると、真珠色の髪はますます輝きを増し、可愛らしくも美しい姿へと変った。

 まだまだ五歳くらいの少女だというのに、年頃の妖精になればさぞかし美しい女性の姿になることだろう。

 一緒に居た時間はさほど多くは無いが、少女は未だに一言も喋らない。

 声を失うほど辛い思いをしてきたのだろうか……男は優しく妖精を抱き上げると、部屋のドアを開け中庭へと歩みを進める。

 城の中でも宴が行われているようで、その喧騒を聞きながら一緒に満月を眺めていると、妖精は辺りを見渡し自分が自由になった事を初めて理解したようだった。

 そして――。



「これからはお外にでれる?」

 初めて聞いたその声は、鈴の音色のように可愛らしくも綺麗な声だった。



「ええ、お外に出られますよ」

 その返事に妖精は輝いた笑顔を向けた。



 あまりにも無防備に喜ぶその表情に男は苦笑いしか出ないようだが、地面に下ろされた妖精は男の周りをクルクルと回りながら外の開放感を味わっているようだ。



「明日からは別の家で一緒に過ごします。お買い物もできますし、屋台で食べ物を買って差し上げましょう」

「本当!?」

「私の下で……と言う制約はありますが、貴女はこの城に居る時よりも自由に生きられる筈です。お外への散歩もできますし、私が貴女にお使いを頼む事もあるでしょうね」



 そう男が口にすると妖精は更に輝いた笑顔で彼に駆け寄った。

 本来妖精とはそういった役割を主とするのだが、この少女はそれすらできないで暮らして来た。彼女にすれば憧れの夢が叶ったような気分だろう。男の前で小さく飛び跳ねながら「嬉しい」と何度も口にした。

 この姿を見る為に魔王を討伐して良かったと心底思いながらも、男は子供らしく喜ぶ妖精を見つめて微笑んだ。それは本当に自然と出た微笑みだった。



「自己紹介がまだでしたね。私の名はビリー・エレゼン。貴女のお名前は?」

「プリア!」



 そう元気良く名を口にしたプリアに、ビリーは跪いて目線を合わせた。



「これからの生活は、貴女にとっても私にとっても幸せな生活である事を望みます。気苦労も多いかもしれませんが、いつも笑っていて下さると嬉しいですよ」

「はい!」

「良いお返事ですね」



 そう言うと、ビリーはプリアのフワフワの真珠色の髪を撫でて微笑み、彼女を抱き上げて一緒に満月を見上げた。

 魔王が倒される前までは見る事すら叶わなかった月だが、今では綺麗に見ることができる。月明かりに照らされた真珠色の髪はとても美しく、ビリーは空に小さな手を伸ばして月を仰ぐプリアを静かに見つめていた……。





 翌朝、二人は早速新しい屋敷へと赴く。必要な物が全て整った屋敷を見て回る最中、プリアは嬉しそうに家の中を走り回っていた。

 一応は英雄として扱われているのだろう。かなりの部屋数と大きな庭に、噴水まである大きな屋敷だった。

 この屋敷にはビリーとプリアしか住まないようになっている。ビリーが錬金術師という事もあり、それらの設備は完璧に整えられていたし、錬金術に関する書物は貴重な物まで揃えられ、大きな図書室のようになっている一室まである。



 それだけではなく、台所も充実していた。これに関してビリーは大満足したようだ。

 意外かもしれないが、彼は家事が得意だ。

 料理をしている時は錬金術で薬品を作るよりもストレス発散になるらしく、ストレス発散したい時こそ料理に走ってしまうのがビリーだった。

 広い屋敷に一人と妖精一人……傍から見れば寂しい生活のように見えるかも知れないが、彼にとってはそれだけで十分だった。



「ビリちゃん、ビリちゃん!」



 そう声を掛けてきたのは屋敷を一通り散策してきたプリアだった。

 城で着ていた薄汚れた服のままでいるプリアを見た時、ビリーは早く服を用意せねばと思ったが、プリアはそんな事は気にしていない。小さな手で彼の指を握ると、とある部屋の前で止まった。



「このお部屋欲しいな! ダメ?」

 そう言ってドアを開けたその部屋は、庭を一望できるが屋敷の中では小さな部屋だった。



「プリアさんはもう少し大きなお部屋で宜しいのですよ?」

「でもこのお部屋とっても暖かいの! お空も見れるしベランダもあるんだよ!」



 そう強く訴えるプリアにビリーは苦笑いを零した。これからは幾らでもお庭に出ても良いし、屋敷の中は自由に歩き回っていいのだと再度伝えると、プリアは大きな瞳を見開いて再度感動している。



「そうですね、後は一緒に街にも行きましょう。貴女にはお使いを頼む事もあると思いますので、ある程度道を覚えて貰わねば困りますし」

「お使い? 頑張るよ!」

「ええ、その為にもお外に出る練習を一緒にしましょうね」

「はぁい!」



 そう言って元気良く返事を返したプリアの頭を撫でると、ビリーはプリアの隣の部屋を自分の部屋とした。緑で統一された落ち着いた部屋だ。一日でこの屋敷全てを用意したドルセには、多少なりとも感謝せねばならないだろう。

 だが、まずはやらねばならない事がある。ビリーがそう思った時、隣から大きな音が聴こえてきた。



「……お腹すいちゃった」



 そう言って、上目遣いで申し訳なさそうに見つめてくるプリアに微笑むと、ビリーは軽めの昼食を用意する。質素で申し訳ないと言いつつ、夜は野菜たっぷりのポトフに柔らかいパンを用意し、二人は広い食卓で食事をとった。

 これからは二人でこの屋敷で生活していける。

 喉から手が出るほど欲しいと願った、真珠色の妖精と共に――。

 それだけでビリーの心は満たされていた……。


+++

既に執筆完了している小説を、2018年5月1日から土日どちらか休みを貰い毎日UPしていきます。

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