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冒頭部SS - 6 / 9

ここでノルは大きな疑問を覚える

「そういえば、どうしてフィルは追われていたんだ?とても悪いことをする性格とは思えないけど……」

その言葉にフィルは表情を曇らせて言葉を濁らせる。

「えっと……それは、……その」

そこでルミアが口を開いた

「そうね、キミは事情を知らないものね……、ここは私が説明しますわ」

「キミには"フィル"と名乗っているけれど、本当の名前は違うのよ」

「彼女は、フィーンスウェルノーブルラン・フェイラペリドット、ある国の王女様、そして今はお尋ね者となっているわ」

「追われている理由は、色々噂があるけれど……、反逆国の身内だからと言われているわね……」

その話にノルは少し驚いたが、それよりも襲われた原因や名乗った時の様子に合点がいくことに納得していた。

「なるほどね、どうりであんなに大勢で追われていたのか。」

「……うん、そう、……だから、謝るのは私の方なの、巻き込んでしまって……ごめんなさい。」

フィルは涙目になり深く謝罪をする

「別に、謝る必要なんてないよ」

「……え?」

思わぬ回答にフィルは驚いていた。

「身を挺して君を庇ったのは僕の意思だ、それに君が追われるのも実に理不尽じゃないか。」

「君と出会わなきゃ、僕はこの世界のことを知ることもなかった、きっと今ここにいなかったと思う」

「だからこれは、こうなる運命だったと僕は思うんだ」

ノルはまっすぐフィルに向かってそう言い放つ。

フィルの瞳から一筋の涙が頬を伝い、今までにないほどの満開の笑顔を見せる。

その光景を横目で見るルミアは、怪しげな表情でノルにちょっかいを掛ける。

「あらあら、随分と格好いいことをシラフで言っちゃうのね」

しかしノルは真面目に返答する。

「まぁ正直、僕としてもそれは思う、けれど今の僕は"ノル"であって、前の世界の人間じゃないから。」

思わぬ回答にルミアは蠱惑的に微笑む

「あら、本当に素敵な人」

……それから、まだ病み上がりということもあり、静かにその日は過ぎていった。



次の日、目が覚めたノルはリビングに向かい二人に挨拶をする。

朝食をすますと、ルミアが口を開いた

「……それで、二人は今後の目的とかはあるのかしら?」

ルミアの質問に二人は考える、そして先に口を開いたのは、ノルだった。

「……僕は、フィルの髪を元に戻す方法を探したいと思う。」

ノルの言葉に激しく反応する

「え?いや、そんな、悪いよ!私は気にしてないからさ」

しかし、ノルは頑なに答えた。

「いや、原因は間違いなく僕だ、それに今の黒髪も良いけれど、やっぱり本来のあの空色の髪であるべきだと思うんだ、……正直、他に目的も思い浮かばないしね。」

(……本当はある。……だけど、フィルの境遇を解決するには、反逆国の汚名を晴らさなくちゃいけない。……今の僕には、僕だけの力じゃ到底無理だ。)

強い意志のノルに対抗するようにフィルは声を上げる。

「そ、それじゃあ私は!ノル君が異世界に戻れる方法を探すよッ!」

フィルの掲げた目標に困惑する。

「ええと……、僕は特に戻るつもりは無いんだけど……。」

そうノルが呟くが、それを聞いたフィルはぷくりと膨れっ面を見せる。

「ま、まぁ君の目的だから、君が良ければそれで良いと思うよ。」

ノルがそう言うな否や、フィルはにへーっと笑った。

その様子を見ていたルミアが静かに微笑む


「……そう、二人とも目的が決まったのね?」

そう言うとルミアは、どこか妖しさの纏った微笑みで話始めた。

「それじゃあ私から一つ提案があるの、アナタ達、私のギルドに入らないかしら?」

その提案を聞いてフィルは目を丸くする。

「実はね、異世界からの来界者には、実力に関わらずギルドのパーティを特別に与えることが出来るの」

フィルは申し訳なさで慌てふためく

「で、でも……私……!」

「大丈夫、黒髪の今のアナタなら追われる心配は無いわ。……元々は、アナタをかくまう為に来るよう呼んだわけだけれど、正直長くは持たないだろうしどうしようかしらと考えていた時、キミが現れた。」

そう言うとルミアはノルを指差してウインクする。

「まぁ本来パーティは何か功績を認められて与えられるものだから、急にパーティが現れると目をつけられるでしょうね、それにもし異世界について知識を持っているならばすぐ察しがつくでしょう。……けれど、アナタ達の目的を遂げるため、これから長い時間共に旅をするとすれば、そう悪い話じゃないと思うわ」

ルミアの口振りだとデメリットだけでは無いようだが、ノルには判断がつかない

「ええと、そうなのか?」

困った様子のノルを見て、フィルは考え説明する。

「……うん、そうだね、パーティを持てれば、基本的には"あのギルドのあのパーティ"って呼ばれるから、個人を事細かに特定されることは確かに無いかも。他のギルドでも仕事が出来るからお金の心配も少なくなるし、もしかしたら仲間が出来るかも……なんてね!」

少し興奮気味のフィルの説明を聞き、ノルは提案に同意する

「……そうか、じゃあその提案に乗ろうかな」

その言葉にフィルはうんうんと頷く。

二人の様子を見たルミアは笑顔で声を上げた。

「ウフフッ、それじゃあ決まりね!……でも、そうねぇ……、まずキミは色々覚えなくちゃいけないことがあるわねぇ……」


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