冒頭部SS - 5 / 9
……ノルは差し出された服を着ると、小さなリビングへと案内され席に着く。
「ひとまず食事をとりましょうか、食欲はあるかしら?」
その言葉を聞いて、ノルは三日間眠っていたことと空腹感を思い出す。
「はい、すっかり空腹のようです。」
……差し出されたスープを飲み干すと、ルミアは話を始めた。
「さてと、……キミ、無理矢理 魔力門を抉じ開けたわね?しかもよりによって禁術をつかってね。」
……ゲート、詠唱魔法術を使うことに関わるものらしいが、まだそれについて何も知らない。
「そうでした、ゲートって何ですか?それに三日間眠っていたと言うのは、その禁術を使った影響ですか?」
ノルの質問にルミアは腕を組むと質問を返す。
「そうねぇ、魔力門の言葉を知っているのなら、マナ、詠唱、詠唱魔法術について、知っているかしら?」
「ええと、マテリアルを使うのにマナが必要ということくらいです、それぞれがどういうものなのかはあまり……」
ノルの言葉を聞いて、ルミアはなるほどといった表情で説明を始める。
「それじゃあ、そこらへんも簡単に説明しましょうかしら。……ちなみになのだけれども、この世界の文字は読めるかしら。」
ルミアは一枚の紙をノルに差し出す、見ると紙には文字が刻まれている。
よくよく見ると、何となく読める気がする。
漢字、英語とカナに近い文字と綴りで奇妙に組み合わせ記述されており、
魔素、魔力門、詠唱魔法術、詠唱、この単語は読み出せた。
「ええと、部分的に単語は読めそうです、だけど文章としては読めないですね。」
その答えは予想通りのようで、ルミアは驚く様子もなく話をつづけた。
「そう、そのうち文字も教えないといけないわね、それじゃ口頭で説明するわ、細かい説明は省いてかいつまんで…ね。」
そしてルミアは小慣れた様子で説明を始めた……。
「私たち人間は、詠唱魔法術と呼んでいる力を使うことができる、……キミのような異世界から来た人は魔法と呼ぶ方が聞きなじみがあるかしら。」
「詠唱魔法術を使うには魔素という力の源を使うの、そして詠唱という言葉で、使う者の意志を魔素に伝えることで、詠唱魔法術は発動するわ」
「……魔素は、それは大気や草木全てに満ちていて、特に人は体の中に多く持っているの」
スラスラと説明するとそこでルミアはほんの少し考える素振りを見せる。
「ええと……そうね、例えるなら倉庫かしら、……人は体の中にマナを貯める倉庫を持っているの」
「詠唱魔法術を使うには、倉庫から魔素を取り出す必要があるの、でも普段は倉庫の入り口に鍵がかかっているのよ、……それが即ち魔力門」
「魔力門を開くには鍵を開けなくてはいけない、けれど鍵の開け方は人それぞれなの」
「魔素の多い地域で生まれ育てば無意識に開くけれど、多くの場合は学んで知識を持つことで開いたり、……詠唱魔法術を受けたことで開いた場合もあれば、それこそ詠唱魔法術の発動を何度も試みてようやく開いた場合もあるわ」
そこでルミアは大きくため息をつく
「ふぅ、……キミの場合は、最後の例の究極かしら、……魔力門が閉じたまま、禁術を無理やり成功させてしまった。」
「恐らく、今のキミの魔力門は、言わば鍵が壊れて扉が閉じることのままならない状態なのよねぇ……、まぁその話はまた今度にしましょうかしら。」
そこまでの説明を聞き
「……そうですか、それじゃあ禁術とは一体何でしょうか?」
それを聞くと、ルミアは少し表情をしかめて答える。
「ええ、伝えること、使うことを禁じられている詠唱魔法術のことよ、正しい詠唱や条件などは不明だけれど、悲惨な代償や人が使うには強大すぎる力のため封じられたとされているの」
「あの時発動したのは、やっぱり……」
どこか冷たい目をしてノルとフィルを見ると、ルミアは口を開いた……
「代償は、大量の魔素、生きた人の血が二人、それに生きた人間の肉……今回は自分の肉体ってとこかしら。」
「……発動された詠唱魔法術は”ドレインヒール”、辺りの生者の生命力を奪い、発動した者の意志によって集まった生命力を分配する、……禁術の一つね」
(……生きた人間の肉、僕の体が代償の一つ……、通りで突然こんなに痩せたのか)
「それで3日間も眠っていたのか。」
ルミアはあきれた表情で話す
「……まぁ、色々な状況が重なって三日で済んだと言えるわ、本来は一週間、一ヶ月……もしくは一年は眠っている可能性があったわけよ」
その話を聞いて一時安堵するが、心配する点が一つある。
「もしかして、フィルの髪が黒くなったのもその影響なのか?だとすると……ごめん。」
「ううん、目が覚めて良かった、それと遅くなったけど、あの時助けてくれてありがとう!」
謝罪するノルに対して、慌てるように感謝するフィル




