冒頭部SS - 1 / 9
思いついたネタを書き残そうとしたら、
想像以上に長くなりSSと化してきたので、折角だからと投稿してみた次第です。
投稿しておいてなんですが、読ませる様な推敲はしてないのでご了承ください。
時間潰し程度になれば幸いですね。
気付くと、青年は異世界に立っていた。
前も後ろも分からぬ深い森に立ち尽くす。
「……全く、こんな小太りの野郎が来ても、すぐにやられるだろうに。」
座り込み、ぶつぶつと独り言を出しながら、現状の把握と次の行動を考えていると
不意の物音、草の茂みが揺れる音
生きる意思は持たず、半ば諦めた精神状態で音の方向を眺めていると……
「……わっぷ!……ぺっぺっ、もうっ 口に草が――、……はれ?」
現れたのは、透き通るように淡い空色の髪をした、小柄で可憐な少女であった。
少女は青年とじっと見つめ合う。
そして目の前の存在が、人であり、男性ということに気付く、と同時に今の様子を見られたことに察すると、顔を赤らめる。
「あ、あはは……今の見られた……よね?」
恥ずかしがりながら青年に語りかける、青年は無表情無言のまま軽く頷く
(言葉が理解出来ている?言語は通じるのか?)
青年が想像を実証しようと口を開いた……が、すぐに止めて考える。
見ず知らず少女に掛ける言葉は何だ?……挨拶で問題無いか?
「えっと………、こんにちは」
そう声に出した、それは出会った少女の声、多少距離はあるが、当然に挨拶してきた。
「あ、ああ、こんにちは」
青年が挨拶を返したことで少女は微笑む、その笑顔に思わず心が動くが、平静を取り戻す。
「えっと……、貴方はここで何をしているの?……見たところ装備とかも無いみたいだけど」
その質問への回答を考えようとするがすぐに諦める、少しばかり申し訳なく感じるが、適当に返した。
「ああ、森に入ったはいいが道に迷ってしまった。」
青年の思わぬ回答に、少女はなるほどと頷く。
「返すようで悪い、そう言う君はどうしてこんな森に、しかも道らしい道ではなく茂みから?」
その質問に少女は何やら考えてから答える
「隣街に行こうと近道していたんだけど、ちょっと怪しいかな?」
「今、街と言ったか?近くに街があるのか」
「う、うん」
「すまない、道が分かるのなら、俺も連れてくれないか。」
街という単語に食い気味に反応し、頭を下げる青年の様子に、少女は困惑する。
「わわっ、分かったから、頭を上げて?」
少女の返答に青年は安堵し礼を言う
「そうか、ありがとう、恩に着る」
「……着る?とにかく、よろしくね」
……ほんの少し妙な違和感があったが、会話は成立していることに、青年はひとまず安堵をする。
「それで君の名前は……?」
少女の質問に答えようとしたが……、答えることは出来なかった。……名前が思い出せない。
先程は勘ぐって適当に誤魔化したが、今度は素直に答える。
「……正直に言うが、自分の名前が分からない。」
「え?」
思わぬ回答に少女は分かりやすく困惑する。
「さっきは道に迷ったと言ってしまったが、実のところ何故ここにいるのかも定かでなくてな。」
「ともかくは名前か……そうだな……」
ふと顔を上げると、目の前にしなった枝先に果実が実っていた。
青年は「ふむ」と頷くと、軽やかな身のこなしで跳躍し、器用に果実をもぎ取る
「とりあえずの名で悪いが、実……いや、"ノル"と呼んでくれ」
そう言うと青年は少女に果実を差し出した。
少女は微笑み、差し出された果実を受け取る
「君の名前を聞いても良いか?」
青年の言葉に少女は答える
「私の名前はフィー……あ、えっと、フィル!フィルって呼んで!」
少女は始めの言葉を咄嗟に遮りそう答えた、分かりやすく焦る様子に青年はいぶかしむ。
(……名前を誤魔化した……か?)
会って間もない者へ本名を名乗ることに躊躇いを感じたのだろう、不自然さは感じるがそこに追及はしなかった。




