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魔族サーの姫−2

こんばんわ。


昨日は更新できずすいませんでした。

今日も短いのですが、ご容赦願います。

 魅了のスキルを持った魔族の娘マリアラと出会った僕たち。

 正直、助かったっちゃ助かったけど、別の身の心配をする羽目になった気もする。



「不思議です。魔族でも二つ名持ちでもレジストできないはずなのに」



 いや、あの男を一瞬で止めた辺りから察するべきだった!

 想像以上に危険だ!



「って、そんなのを警告もせずに発動したわけ!? 僕とかサンドラが喰らってたら、どうするつもりだったのさ!?」



 当然の疑問だろう。

 助かった端から次の苦難が来てちゃ、やってられない。

 幸い、ふたりともに影響がなかったらしいからいいけど。



「別に、初対面ですし。それに、効いたほうが私には都合いいです」


「そりゃもっともだ。もっともだけど、それ罠にはめようとしたって告白してるようなもんなんだけど……」



 呆れる僕と、目を見開いて驚くマリー。


 素直なことはいいことだけど、彼女の先行きが不安だ。

 もし僕が、今ので気分を害して襲いかかるような悪人だったら、どうするつもりだったのだろうか?


 驚いたようだけど、すぐに我を取り戻した彼女は、両こぶしを胸の前で握って可愛らしく力説してくる。



「その発想はなかったです。でも、効かなかったなら同じです。よかったのです」


「結果論ね。ただし、完全にレジストできたわけじゃなさそうだから、その結果も怪しいところだ」



 まぁ、その内容には問題しか感じないんだけど。

 うんうん、と頷いているけど、この娘は反省してないんじゃないかなぁ。


 多分、機会があったらまたやると思う。

 なんで僕に効かなかったのかは謎だけど、これから先彼女に巻き込まれる被害者の皆さんには同情してしまう。



「さっき使ったのが〈魅了〉ってことは、あの男は今君に魅了されているわけ? 見惚れて固まってるのか、君の言いなりになっているのか、よかったら教えてもらえない?」


「あの人は、今は見惚れているだけです。でも、言うことも聞いてくれると思います。だから、この場で一番偉いのは私です!」



 えっへんと胸を張るマリー。

 豊かな胸が揺れ、僕の視線が吸い寄せられる。


 これは、彼女に魅了された影響だ……なんとか自分に言い聞かせて目を離すが、その先にはサンドラがいる。

 ふと目線を下げると、そこには母性も何もあったものではなかった。

 僕は泣いた。



「ふむ、(たわ)けたことを言うな。この我に刃向かえると、本気でそう思っているのか?」



 僕に目線を向けられたのを自分へのパスだと思ったのか、サンドラが名乗りを上げる。



「そいつには礼儀を向ける余地があったが、お前にはそんなものはない。お前に操られて誇りを失ったそいつもまたしかり、だ。覚悟しろよ? ドラゴンに真正面から喧嘩を売ったことを」



 ぐぉおおお! と天井に吠えるサンドラ。


 その咆哮は人の姿だからか本来よりも迫力はなかったが、マリーをびびらせるくらいには真に迫っていた。

 ついでに言うと、洞窟中に響き渡るくらいには立派だった。



「今のはなんだ!?」


「牢の方から聞こえたぞ!」


「お頭はどうした!? 牢のそばにいるんじゃなかったか!?」



 サンドラは、あ、やべ、という顔をしたが、もう遅い。

 洞窟中に響き渡ったその咆哮は、賊たちを慌てふためかせ、注目を集めてしまった。


 夢見るかのようにとろんとしていたマリーの顔も、どこか引きつっている。

 もちろん、僕は冷や汗ダラダラで失神寸前である。


 こんな洞窟の奥じゃ、ドラゴンの姿で戦うことはできないだろう。

 そして、僕に戦闘能力はない。


 サンドラひとりで賊すべてを打ち払えるか?

 できるかもしれないけど、こんな袋小路にいるのだ。

 直接やり合わずに搦手でやられてしまうに違いない。



「ま、マリー。ちょっと話し合わないかい? 具体的に言うと、この場を切り抜ける方法とか」


「流石に、私とあの人だけじゃ厳しいです。ここは、不本意ですが手を組むです」


「別に、我だけでも大丈夫なのだぞ? ただ、人手は多くて困ることはあるまい。どれ、我が先行して蹴散らしてくるから、ふたりであとから出てくるといい。外で待っているぞ!」



 相談は、一瞬で終わった。

 いや、賊がどんな規模かわからないけど、流石に多勢に無勢。

 先程追い詰められたサンドラも、油断するわけにはいかなかったのだろう。


 マリーの方も〈魅了〉がどれだけの力を持っているかわからないけど、無理があると判断したようだ。


 僕に関しては言うまでもない。


 強さもそうだけど、人に刃を向けるのは今の僕には無理だ。

 平和な世界で生きてきたことを後悔はしないけど、その経験が足を引っ張ってしまっているのは否定できない。


 だから、おんぶにだっこではあるけど、彼女たちについていくしかあるまい。

 今更マリーに裏切られる心配は無駄だろうし。



「サンドラ頼んだよ! きちんと賊を全部引っ張っていってね!」


「誰に言っている! 任せておけ!」



 サンドラもやる気だから、問題ないだろう。

 風のように駆け抜けていった。

 悲鳴と金属音がここまで聞こえてくるから、陽動として完璧なくらい派手だ。


 つくづく、弱い自分が嫌になるけど、彼女たちが頼もしすぎるだけな気もする。


 かたや世界最強のドラゴン、かたや元最上級の冒険者を一瞬で手駒にする魔族。

 それに比べて、ちょっと料理ができて器用貧乏な僕ときたらね。


 召喚された僕以外の勇者一行のスキルも、すごそうなのばっかだったし。

 とことん女神様に嘲笑らわれている気がする。

 女の娘に守ってもらうくらい情けない僕ってのは、そろそろ卒業したいんだけどなぁ。



「さて、サンドラも行ったことだし、そろそろ僕たちも行こうか?」


「はいです。ここを出たら、なんで効かなかったのか教えてもらうです」


「わかったよ。だから、それまでの間はよろしくね」



 素直に頷いたマリー、それと頭領を連れて歩き出す。

 彼女は僕に興味津々みたいだから、アジトの外までは安全かな。

 なにせ、ここで一番強いだろう頭領が支配下にいるわけだし。




 無事にこの洞窟を抜け出せると、そう思っていた時期が僕にもありました。


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