人間とドラゴンと魔族のクリーム煮−4
こんばんわ!
本日2話目の投稿です!
シチューがー! 食べたくなってきたぞー!
作者自身が飯テロ食らってどうするんでしょうね……。
そんなこんなで紆余曲折。
ローリエの代わりに使った葉っぱが、奇跡的にシチューに絶妙なとろみを生み出してくれていた。
長い間煮込むと粘ついた液体が出る植物だったみたいで、その粘度が丁度よいとろみに繋がったのだ。
いやぁ、手持ちの野菜とか組み合わせて試行錯誤したけど、最終的にうまくいってよかったよ。
「というわけで、リス肉のシチューの完成です!」
湯気を放つ大鍋の中には、濃厚なシチューがふつふつと煮え立っている。
つくっている間、あまりのいい匂いに、何度か味見と称してつまみ食いをしてしまった。
だってあの鼻孔をくすぐる脂の匂いときたらね!
野生を生き抜いてきた強力なリスの肉を使っているんだ。
身は引き締まって、脂はノリノリ!
フォン・ド・ジビエを擬似的につくれたから、シチュー自体の味の深みもばっちりだ。
更に、今回のシチューが本当の牛乳を使うよりもクリーミーになったのは、コロミの葉っぱのおかげだ。
あの葉っぱは有用すぎる。
これからの必需品だな。
色々と我流になったけど、もとの世界でもなかなかお目にかかれないレベルの出来栄え。
やっぱり素材がいいと、味も変わるもんだね。
そして、僕の調理中、手伝ってくれていた魔族のおふたりには感謝感謝だ!
「ほう、これがシチューってやつか。手元に残ってたパンをほとんど持ってかれたんだ。その分くらいは見返りがあってくれよ?」
その節はお世話になりました……。
まさか、ミルクを加えたパン粉があそこまでぼそぼそとするとは思わなくて。
いや、ハンバーグのタネに使う時の4〜5倍は水分を加えたんだよ?
なのに、全部吸収されてしまった。
この世界の植物、全体的にたくましすぎでしょ!
おかげで、シチューソースのタネには使えなくなってしまったから、リス肉をいくらかミンチにして、ハンバーグにしてみた。
フライパンがなかったから、亜流の煮込みハンバーグっていうか、もはや肉団子みたいになってるけど。
そんなわけで、当初の予定の倍はパンを使ってしまう羽目に。
ま、まぁ? パンがなくても肉を食べれば死にませんから?
勘弁してくれると助かる。
彼らが余り気にしていないことだけが救いだ。
自分たちの食料に無頓着すぎるなーとは思うけど。
「というわけで、念願のお食事タイムだよ! サンドラもこっちおいで。さぁ、さぁ、ニョルドルもミネスルさんも座って座って!」
一緒に料理をしている間に、ニョルドルとはまた一段仲良くなった。
呼び捨てにするよう言われたくらいだ。
サンドラとは全く目も合わせようとしない彼らだけど、僕には親しく接してくれる。
ニョルドルは気安い兄ちゃんのようなものだし、ミネスルさんは近所のお姉さんみたい。
ふたりともすっごく人懐こかった。
もしかしたら、冒険者として大成するためにはこうしたコミュ力が大切なのかもしれない。
だとしたら、僕は冒険者としてやっていけないことになるので、料理人への道を爆走するのが正解ということになる。
ま、こうやって料理を振る舞っているのだから、見かけだけは立派な料理人よね。
職業料理人とはどこから名乗っていいものなのだろうか……。
「さ、僕特製リス肉のシチュー! たーんと召し上がってね!」
自分が料理人だと思ったときにはすでに料理人なのかもしれない。
哲学的だね。
声をかければ彼女たちは素直に円になって座ってくれるけど、サンドラと2人の間には見えない壁があるように思える。
やっぱり、一時的な休戦だからか、お互いわだかまりがあるみたいだ。
料理を食べてリラックスして話し合えば、きっと分かり合えると信じてるけどどうだろう。
「ふむ、まずはそちらの魔族どもから食べるがいい。我が食べようとすると、鍋が空になるからな」
お、サンドラが歩み寄りの姿勢を見せてくれた。
あの食欲の塊が他人に先に譲るなんて、素晴らしい!
これは仲良くなるに近づく一歩だね!
「あ、ぁあ、いや、食べたいんなら、無理しなくていいんだぜ? そ、そうだサーブ! お前は食わねぇのか!?」
んん?
なんか雲行きが怪しい。
「あ、僕はみんなが口をつけてからでいいよ。やっぱり、料理人としては先に誰かに食べてもらって、美味しいって言ってもらえるのが幸せだと思うんだ!」
だが、そんなギスギスしそうな雰囲気は許さない!
喰らえ、必殺! 無垢なる笑顔!
僕の純粋な好意を笑顔に変えて放つ!
観念して食べるがよいよ!
「く、食べればいいのよね。食べれば……」
いったい、何が彼らをそこまで怯えさせるのか。
たとえシチューが未知の料理だからって、そんな尻込みする?
さっぱり理由がわからん。
「おい、貴様ら、食うのか食わんのか。はっきりしろ!」
ほら、サンドラの機嫌も急降下してるし!
早く食べて!
お皿も木匙もあるでしょ!
「でもなぁ、これ、あのリス使ってるんだよな? 本当に美味いのか?」
それを聞いた瞬間、ああなるほど、と僕は納得してしまった。
そりゃ、ひたすらまずい肉ばかり食わされていたら、警戒もするよね。
当然の帰結だった。
ただあれだけ手伝ってくれて、あれだけ言ってくれたのに、僕の料理を信じてもらえなかったのは、ちょっと傷ついたかな。
だから、次の瞬間サンドラが吠えたのは純粋にびっくりした。
僕自身は傷ついただけで、全然怒ってなんかいなかったから。
「つくってもらったものに文句を垂れるな! これだから魔族というやつは嫌いなんだ! なんでもかんでも上しか見ない! 妥協というものを知らない! 今回だって、わざわざ我の縄張りにやってくるなど、傲慢がすぎる!」
まぁ、他の理由が主だったみたいだけど。
でも、僕の料理のために怒ってくれたのは嬉しい。
だから、ここらで止まってくれたら助かったんだけど……。
「しかも言うに事欠いて、本当に美味いのか? だと? まずは食え。サーブが満足する出来なんだ。絶対に美味い。そして、その後、現実を思い知らせてやる」
完全にこじれましたね。
彼らは、竜の逆鱗に触れてしまった。
「この地を統べるドラゴンの力、貴様らに見せつけてやろう」
うん、とりあえず深皿にシチューよそっておこうかな。
まずは食事の流れっぽいし。
「下手に出ればつけあがる! 勝てるものなら勝ってみろ! その時はこの縄張りくれてやる!」
ああ、決まったわ。
二つ名持ちのドラゴンにふさわしい、威厳たっぷりの宣戦布告だった。
裏ダンジョンのボスみたいな風格あるよね。
さて、シチューよそい終わった。
完全に硬直してるニョルドルとミネスルさんの前に置いとくかな。
残りのひとつは僕が食べる用っと。
「あー、美味しい。鶏肉みたいな感じだけど、もっとワイルドな味だね。あれだけやったのに臭みが消しきれなかったのか、獣っぽさが残ってるのがいいアクセントだ。にんじ……ヨソの実もよく煮えていてホクホクでいいねぇ。いやー、我ながら美味! こんな美味しいシチューははじめてだね」
ついでに言えば、シチューソース自体もなかなかに肉肉しい味がする。
これでもある程度は取り除いたんだけど、浮くほどに出てきていたリスの脂の味がストレートに味覚を刺激する。
ありていに言って、ビーフシチューよりも肉っぽいホワイトシチューだ!
サンドラも、僕の実況を聞いて待ちきれなくなったのか、鍋に顔を突っ込んですすっている。
顔、熱くないのかな?
そして、やっぱり食事中のサンドラは、子犬とかそういう系統の愛らしさを放っていると思うんだけど、これは余人には伝わらないのだろうか?
固まったままの2人を置いて、僕とサンドラの美味しい食事は進むのだった……。
あ、僕のおかわりの分は残しておいてね!?




