勇者、王宮にて 閑話−1
こんにちわ!
今回は王宮に残った勇者さんの視点です!
彼がその大きな扉をくぐるのを見て、せいせいする私と、どうしてこうなってしまったんだろうと思う私がいた。
5人でこの世界に来たはずなのに、気づけば私たちは4人になっていて、でも他の3人はそれが余り気にならないみたい。
むしろ、彼がいなくなったほうがよかったと思っている。
3人の態度はそんな風に受け取れてしまう。
「いやー、高橋のやつはやっぱり後ろ暗いこと考えてたのかね? 俺らと違ってスキル隠すとかさ、正気かっての」
「でも、あそこでボロを出してくれて助かったかもしれない。あとあと裏切られてからじゃ、遅いんだから」
「んー。あいつにはあいつなりの考えがあるんだろうよ。ま、元気にやってりゃ問題ないさ!」
小嵐くん以外は、彼の心配すらしない。
あのあと、兵士さんに各々の部屋に案内された。
歓迎の昼餐会を開くから、その用意ができるまで待っていてほしいとのことだ。
部屋は豪華で、きっとホテルのスイートルームってこんな感じなんだと思う。
3人が示し合わせて訪ねてきたから、4人でおしゃべりをしている。
こんな唐突に異世界なんて言われても実感は薄くて、そのうえ私が勇者だなんて、全然信じられない。
私はごく普通の女子高生でしかないし、特別な能力なんてひとつも持ってない。
3人は男の子だし、特別な能力が手に入ったからきっとなんとかなるって思ってるみたいだけど、私なんかが勇者で本当によかったのかな?
私は、高橋くんが勇者だと思ってた。
だって、彼は私たちを守ろうとして王様に立ち向かっていた。
怖くて足が震えて、私が支えないと今にも倒れてしまいそうだったけど、頑張っていた。
私たちに傷ついてほしくなくて、彼は声を上げたんだよね?
でも、気づいたら、私の中で彼は裏切り者になっていた。
自分が傷つかない方法を探すだけの臆病者だと思ってた。
どうしてだろう?
私は彼を信じてたはずなのに。
勇者だと思ってた高橋くんは勇者じゃなくて、気づいたら裏切り者になっていて、私たちの前から去っていってしまった。
去っていく時の彼の顔を思い出す。
裏切られたくないものに、裏切られるはずがないものに裏切られた人の顔。
どうして、私は彼を裏切ってしまったのだろう?
彼が裏切り者だなんて、どうしてあの時は信じ込んでしまったのかな。
「かけいっち? 元気ないみたいだけど、大丈夫? 高橋のことは仕方なかったって。落ち込むのはわかるけどさ。今はこれからのこと考えたほうがよくね?」
「うん、そうだね。高橋くんのことは、仕方なかったのかな。わかんないけど、私たちにできることも、ないよね」
「もう彼は行ってしまった。時間も経ってしまったし、今から追いかけるのは難しいと思うよ」
「そうだよね。私たちが追い出したんだもんね。……ごめんね、心配かけて」
「いやー、しゃーねーだろ。仲間がひとり欠けたんだ。そりゃ落ち込むのが当然さ。でも、掛井ちゃんもあんまり気に病まないようにな」
3人はそれぞれの言葉で慰めてくれる。
でも、私を心配する言葉はあっても、高橋くんについてはやっぱりほとんど何も思ってないみたいだった。
私がおかしいのかな。
でも、自分があんなことを考えてしまう人間だなんて、信じたくない。
少し王様に声をかけられたくらいで、仲間を売るような薄情な女じゃないと思いたい。
「そっか。王様が、話しかけてきたんだっけ」
そうだ。あの時、王様が私たちのやり取りに割り込んできた。
私はただ、彼の意図を問いただしたかっただけなのに、気づけば彼は裏切るのだと確信していたのだ。
王様への不信感が募る。
きっと、王様がなにか仕掛けたのだろう。
だって、そうじゃなきゃ私が高橋くんを見捨てるなんてありえない。
「うん。そうだね。今は、これからのことについて考えようか?」
私は3人に愛想良く振る舞う。
この王様への負の感情を表に出してはいけないと思ったから。
取り繕った明るさだけど、元気になった私を見て3人とも頬を緩めている。
彼らまで不安にさせる必要はない。
もう、取り返しのつかない失敗をしてしまったけれど、だからこそもう二度と間違えられない。
高橋くんも、なんとかして救い出してあげないと。
あの時、教室の端っこから私たちの輪に入ってもらったときみたいに。
彼が報われないなんて絶対間違っているから。
もとの世界でも、この世界でも、彼ばかりが割りを食うのはおかしいんだから。
幸せになれない人なんていちゃいけない。
みんな幸せになるべきだと思う。
そのためにも、この世界の人たちだけじゃない。
私も、高橋くんも、3人も、みんなで幸せにならないといけない。
だから。
「まずは、みんなのスキルで何ができるのかを確認していこう。これから、戦いは避けれないはずだから」
戦い抜くんだ。
誰も欠けさせない。
みんなを救ってみせる。
私が犠牲になるんじゃない。
誰も犠牲にしないの。
あの性悪な王様だって、いきなり襲いかかろうとした兵士さんたちだって、自分たちが助かるために必死だっただけだから。
真剣な表情をした私に、3人が目を輝かせる。
赤葉くん、藤原くん、小嵐くん。
高橋くんは今はいないけど、きっとまた戻ってきてもらおう。
みんなで頑張っていくんだ。
こんな荒唐無稽な状況でも、5人いれば頑張れるはずだから。
少し行き違いがあったけど、きっと話せばわかってくれるはずだから。
だから、一歩ずつ歩いていこう。
自信はないけど、勇者として、全部を救うために。




