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2 異世界召喚。

 

 光が収まった先で、目に入ったのは豪華なドレスを着てひっくり返っている女性と、驚愕の表情を浮かべた周囲を取り囲むように立つ騎士風の人達。


 次いで周りを見渡せば、ここが日本にもあるような教会に近しい見た目をした場所だとわかった。


 ひっくり返った女性の後ろには天井まで届くステンドグラスが。後ろを見れば多数の長椅子が見える。


 一つ違うところがあるとすれば、優たちがいる足元だろうか。大きな幾何学模様、優のオタク知識を生かして答えるなら魔法陣と言えそうな物がある。長椅子が並んでいる場所と、神父さんが立つお立ち台のような場所の間に教室一個分のスペースがあり、そこにいるわけだ。


 我を取り戻したのか、女性はいつの間にか起き上がり、側にいた騎士風の男性一人に言われるがまま深呼吸をしていた。


 そして、落ち着きが取り戻せたのか、優達に向けてこう、言い放った。



「皆様、戸惑いもあるとは思いますが、どうか、耳を傾けてください。──ようこそ、我らが勇者様()よ……。危機に瀕した我らが民をお救いください。(わたくし)、ルーベルグ王国第二王女であるミリア・フォン・ルーベルグと申します。以後、宜しくお願い致しますわ」



 皆がついていけないとキョトンとした顔をする中、優の頭の中では、異世界召喚勇者パターンキター!!と流れていくのがわかった。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 ミリア王女は、詳しい説明を王からすると告げ優達を謁見の間へ連れ出した。クラスメート達もだれひとり騒がずについて行くことになる。誰も取り乱したりしなかったのは、頭が現状把握に追いついていないからだろうか。クラスのリーダー格である例の四人組も黙って着いて行っていることも大きいのか。


 そして、謁見の間であろう場所に着く。これまたファンタジー映画でよく見る感じだった。異様に背もたれが大きい、豪華な装飾が施された椅子に腰掛ける50代くらいの男性。王冠(クラウン)に、錫杖を持ち、表情は薄く笑みを浮かべているが、入ってきた優達を見定めるように見つめている。


 そこを起点に弧を描くように並ぶ、如何にも重役ですと言わんばかりの人達。そんな場所に優達は誘導され、説明を受けることになった。



「我は、この国の王。カイゼル・フォン・ルーベルグ、シンサイズ13世である。歓迎するぞ、勇者様方。突然のことで戸惑うとは思うが、先ずはご静聴願う」



 そんな導入から淡々と話を進める国王様。要約すると以下になる。



・テンプレ的な剣と魔法の世界。

・人間以外にも、亜人族(獣人やエルフなどの人間ではない種)、魔人族が存在する。

・魔人は魔王と呼ばれる魔人族の王を中心に人間を根絶やしにしようとしている。

・そのために、亜人族の力を上手く支配しつつ、魔人族への対抗をしなければならない。

・勇者召喚の理由は、その戦力として。

・勇者召喚された者には特別強力な力が付与される。

・勇者召喚は一方通行で呼び出すことしか出来ず、送還方法は不明。



 以上だ。

 割とオブラートに包まれていた部分もあるが、簡潔に要約すればこういった意味合いになってしまう。



 亜人達と協力し──とか。

 同族を襲う悪しき魔人族から護って欲しい──とか。

 勇者は魔王を討ち滅ぼした後に帰還した伝説が──とか。



 聞こえの良い言葉を使っているが、デメリット部分を上手く避けているだけ。言っていることが全て事実かどうかは見てみなければわからないだろう。優はそう判断した。


 しかし、皆が皆そう判断するわけでもなく。



「皆、僕は見ず知らずの人でも、僕の手の届く範囲で助けたいと思う。勇者として、世界を救ってみせるよ!」

「ハッ。お前ならそう言うと思ったぜ。とーぜん、俺も参加だ。漢なら一度は憧れる存在だしな」

「二人がそう言うなら、私も頑張ろっかな!!」

「……ふんす」



 クラスのリーダー格である例の四人組は、どうやら世界を救うことに賛成らしい。


 であれば、当たり前のようにクラスメート達へ、伝播していく。次々と賛同していく彼等に、優はこっそり溜め息をついた。



(いや、まじか。どう考えても危険だろ。まさか反対する奴が誰もいないなんて)



 とはいえ、そんな事が言い出せる訳もなく、全員が勇者をするということで話は進んでいく。



「では、勇者様方。秘めたる力を知ることから始めようぞ。左腕を前へ突き出し、人差し指と中指を絡めて下に振り下ろすのだ。さすれば、[ステータスボード]が現れる。そこに勇者様方の力が記載されておる。さあ、確認を」



 言われるがままに、腕を振り下ろしていくクラスメート達。


 優も、下手をすれば厨二病としてアイタタタな人の仲間入りをしそうだと恥ずかしさを抑えながらそれに従った。



 名前:最上 優

 年齢:18

 性別:男

 心:10

 技:10

 体:10


 スキル:[継承]

 [継承]:ある条件下で、以前の物を受け継ぐスキル。


 称号:[巻き込まれた者]

 [巻き込まれた者]:ある事象に巻き込まれた際に現れる称号。追加効果無し。




 チリンという軽快な鈴のような音と同時に、透明な板が目の前に現れる。


 これは、どういうことだろうか。思った以上の数値の低さとスキル・称号の意味の分からなさに、背筋が凍る。


 それと同時に大きな歓声が聞こえたためそちらを振り返ると──。



 名前:皇 輝

 年齢:17

 性別:男

 心:200

 技:200

 体:200


 スキル:[聖剣術] [攻撃魔法適性] [防御魔法適性] [限界解放]

 [聖剣術]:聖属性を付与した状態での剣術スキルを使用出来る。

 [攻撃魔法適性]:攻撃魔法を習得することが出来る。

 [防御魔法適性]:防御魔法を習得することが出来る。

 [限界解放]:一定時間、心・技・体の上限を解放し、倍加する。時間経過後、心・技・体の値は一定時間半減する。


 称号:[勇者]

 [勇者]:勇者に授けられる称号。信頼し合う仲間達の数により心・技・体の数値が増加する。




「これは凄まじい!! 人間族の平均能力値が心・技・体10前後。更にスキルは無い者が大半な中、やはり勇者様は素晴らしいお力をお持ちだ!!」

(……おいおい、今なんて言った? 平均値、10?)



 この世界の能力値は心・技・体に分かれ数値化されるらしい。それぞれの値が高ければ高いほど、多々な面において秀でる訳だが、どうやら優は平均値しかない能力値と使えそうにないスキルで、生きなければならないようだ。



「っぷ。はははっ!! おい見ろよコイツのステータス!! オール10だぜ!?」

「うわ、お前異世界に来てまでそんなかよ。やっぱり駄目な奴はどこでも駄目なんだなぁ」

「いきなりハードモードって! ねえねえ、今どんな気持ち?」



 近くで嘲笑混じりな声が聞こえたと振り返った優は、教室で絡んできた三人の少年にステータスボードを覗かれたようだ。


 その声を聞き、(ざわ)めき立つクラスメート。ゴミを見るような目でこそこそ話す異世界の人達。

 周りを見渡せば、勇者は皇だけの称号だが、皆それぞれ別の称号が獲られていた。少なくとも[巻き込まれた者]は優だけのようだった。


 しかし、優の心はそこまで落ち込んではいなかった。



(うーん。正直、状況を整理したい。まだ、慌てるような時間じゃない……なんてな。実際問題、あまり悲観的になりすぎるのもよくないだろうけど、希望的観測も良くない。程々に可能性について探りたい)



 マイナス面を見るならばキリがないこの状況は、異世界に来る前(地球に居た頃)から変わっていない。


 なら、あの頃と同じように、プラスの面を第一優先にこれからを進めたい。


 優は結論を出す。



(先ずは、好きなことを見つけよう)

 


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