え、異世界転移だったの?(注 走馬灯です)
目の前まで大剣が迫っている。
僕の生存本能が知らせてきた。これは本物だと。この剣は僕を殺せると。
こんな状況になってから気付くなんて、友達からよく言われているように僕の危機管理能力って欠如してるな・・・
去年のケモミミイベントでもはりきって朝イチで並んで全気力使ったあと、帰り道で生活に必要なもの全部入れてた鞄会場に置いてきてしまって盗まれたんだっけ…。でも、ケモミミグッズたちは肌身離さず持ってて無事だったんだよな。おまえ、本来肌身離さず持っとく方逆やぞって笑われたっけな。あの会場で企画されてたケモミミっ娘、最高だったな。
今までお気に入りだったケモミミっ娘たちが頭の中を駆け抜けていく。これが走馬灯ってやつか。
そう考えながら一歩も動けず、迫りくる剣の切っ先を凝視していた。しょうがないよ、安全な国で生まれ育ったもん。異世界転移主人公ならチート能力に目覚めたりして俺つえーってなるんだろうな。
…異世界主人公?ん?
ドンッ
トラックにでもぶつかったような衝撃を受けた僕は女の子の母親に吹っ飛ばされた。そして、母親からは剣が生えていた。
えっ。どうして…初対面の僕を。
女の子は絶叫している。僕の全身を濡らす女の子の母親の血に誓ってこの女の子だけは助けないと。僕はそう固く決心した。
「逃げるんだ、はやく!」
僕は自分が現れたほうを指さし、女の子に語りかける。
「言葉が伝わらないか…」
そうしている間に大剣を放棄した母親を刺したやつが短剣を構えて突っ込んでくる。
やれるだけのことはしよう。彼女に背を向け、決心した。