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終わりから始めましょう ー女伯爵は事後処理中ー  作者: 月のしずく
第3章 亡命と開戦 編
36/43

亡命は使命と共に

間に合わなかった。そして・・・連続投稿もこれで終了です。

本年度もよろしくお願いします。


「僕も弟を殺すのは、戸惑うさ」


そう続けられた事にも驚き、視線を王子に戻せば、疲れた顔で彼は笑った。


「君がフォースとの開戦を示唆してくれたのがこのタイミングじゃなかったら、実行に移したかもしれない」


そう言いながらも彼は再び目の前に置かれた紅茶を見つめた。


「ルクス様はご自身のレムソンとの条約が破棄されると?」


「うん。まぁ・・一時期レムソンに行ったよ。大体の事は予想がついた。レムソンはジュヴェールとの国交を随分と制限しその代りにフォースとの間で今までなかった物流を生み出していたから」


「物流?」


「レムリナ石を国が買い取って、その買い取ったレムリナをフォースに高値で売りつけていたよ」


「レムリナを?」


魔法石としては、需要が少ないのに何故と思う。


「装飾品としてではなくそれ意外の使い道があるという事ですか?」


「そこまでは調べきれてない。一応それについて密偵には調べさせているが、まだ明確な答えが見えない」


そう言われてしまった後に、もしやレムリナの髪飾りをこちらに提出させたのには他の意味があったのではないかと自身の行動の迂闊さに寒気が走った。


「その」


「とにかく、あのバカを廃嫡できない今、フォースとの開戦は防げない。そういう事だよ」


「それ以前に叔父上が5年以上前から準備したものを今更変更する事がないです。」


シルヴィアとしての記憶の中の叔父は頭脳明晰、冷静沈着という感じだ。

容姿は母によく似ているというか、母が男装したらこんなという感じだという説明で足りる。双子だからと本人たちは言っていたが中身はおっとりゆったりそれこそ貴族中の貴族という母とこの人が同じ腹で出来たとは思えないと父が言っていたのを今でも覚えてる。


「君を守るために用意していた最後の手だったんだ・・これから君には隣国のフォースへ出向いてもらいたい。」


「それは・・私に逃げろと?」


そういう事だろうと思う。

そして現在私は私自身が望んでいたことを提示された。


「いや・・ただそれも視野に入れてやってもらいたい事があるんだ」


そう言いながら彼は私の前にコトリと小さな紋章を置いた。

大きさは5センチくらいだが純金製のそれが見た目よりも重くそして中心に輝くブルーサファイヤは、濁りなどなく部屋の明かりを何倍にもして光輝いていた。


「これって」


「この紋章をお返しするとそうフォースの宰相である君の叔父上に伝えてくれないか?」


彼のおいたそれが何か、知らないものは居ない。


「これを取引の材料になさると?」


「あぁ、だが秘密裏にだ」


「その・・もし私がこれを持って亡命して・・叔父上に渡したらどうなるかお分かりでしょうか?」


そう告げても彼はその小さな石を手元に戻す事はなかった。


「それならそれでいい。君にならいいよ」


「っバカ・・・」


本来なら許されない言葉。

でもつい漏れてしまった。


「バカでいいよ・・・コレが君に捧げられる僕の気持ちだから」


私の前に置かれたそれは、この国が所有する最も大きな魔法石、そしてこの国で代々の王妃に受け継がれてきた宝珠だった。


そしてこの石の名は、フルディジア・ル・ジュヴェール。 意味は、王者の元侍り仕えん。


「この石が何を意味すると思いますか・・・従属なんてさせない」


「フォースなら、構わないよ」


と続けた彼が力なく微笑む。この宝珠を渡す意味を彼が正確に理解しているとわかった。


「君を守りたい。そのためならこの宝珠を利用してくれ」


だけどそれでも私はそれを許したくなかった。


「っなにを言ってるの!?この魔法石がどれだけの威力を持つかあなたが知らないわけがない。これを利用されればどうなるか」


「それでも、君に望まぬ婚姻なんて絶対結ばせないっ!!」


彼がそう言い切った。


「わ・・私が・・何時のぞまないと」


いいましたかとそう続ける筈が彼は視線一つで私を黙らせてしまう。


「亡命したいと真っ先に僕に告げたのは、マレキサンド王の側室に望まれていたからだろう」


なぜ知ってるのだろうか。そう疑問が頭に浮かんだ。

私が父についてフォース国に出入りした回数はたった4回。その内の2回でマレキサンド王が私を見初め側室にとそう話を打診してきたのは、父と陛下と私だけが知っている事だった筈だ。


「どうして・・」


「そりゃあ、ここ数年で銀髪の髪の女性を3人も側室に迎えているんだ。気づくよ。」


えっとそれは知らなかったというか知りたくなかったです、王子。側室8人のうち3人が銀髪。


「私が行けば、あの王は一時的でも」


「させないよ。君を愛してるから」


「・・・・えっ?」


すっごく良い声で言われた言葉だった。

随分と疲れているのかしらと心配になりながら、私はただただ茫然と彼を見つめていた。


「君が他の男に嫁ぐなんて許さない。」


よし、耳を疑おうかなぁ。


「君にこれを託す。魔法師大国であるフォースには喉から手が出る程欲しいものだろうしね」


そうですね。ブルーサファイヤという宝石がこの世界で最もたくさんの魔法力を内包出来ると知っているのはごく一部の人間だけだった。


「なんで・・これではあちらにわざわざ戦力を渡すような」


「そう思う?」


「えっ?」


「その魔法石は、元はフォース国からの送りものだった。それはこの石が国内にある事で争いの種になりかねないからだ・・・まっ厄介払いって所だったと思う。だってあの頃の王家には魔法を使える子供は生まれていなかったし」


そう彼は告げるととても美しく微笑んだ。

それはどういう意味なのだろうと考えて、私はただただ首を傾げる。


「争い?」


「わかりやすく言うと今のフォースでは、魔法師たちの力が強くなりすぎるっていう事だよ。伯爵」


そうヴァン様が付け足してくれる。

魔法師を優遇してきたフォース国では、魔法師の地位は貴族そして王家を脅かす程になってきているのだそうだ。

特に今は、野心家が魔法ギルドの長に立っていて、魔法師の地位向上を訴えて王家に反旗を翻す可能性さえ出て来たのだとそうヴァン様は話してくれた。


「俺がフォースに行ってみたら、魔法師たちが随分と面白い活動をしていた」


そう言って彼が私の前に差し出した一枚の紙きれには、魔法師の地位向上のためというもので無償でその力をお貸ししますのような事が書いてあった。


「これを民衆にくばってたよ。これで民の心を掴んで、最近じゃ側室に無駄に金を使っている王家を非難してたなぁ」


楽しかったよ。まぁ、この無償で力を貸すっていうのには限度があるらしいけどねと彼が言って、私の前に差し出したのは、"レムリナの髪飾り”であった。


「これって・・・」


「物さがしの魔法で探してもらったよ・・随分と廃れた骨董品屋の目玉商品になってた。」


「本物?」


「物さがしの魔法は、金取ることもあるらしいね」


レムリナの髪飾りは確かに本物だった。受け取って見ると少しだけ汚れてはしまっているがそれでも本物が手に入ったのはありがたい事だった。


「その髪飾りをどうするかは、伯爵・・・あなた次第だ。」


ヴァン様の言葉に顔を上げると、ルクス様は私をしっかりと見据えていた。


「君にこの石を叔父であるエーリッヒ・ルーン宰相に届けて欲しい・・この石で彼がどう動くかは、君次第だシルヴィア」


そう言ってくれるこの人は、誰?

シルヴィアと甘く名を呼ぶのは・・・何故?


「バーミリオン伯爵と呼ばないでいいのですか?」


そう言葉にしてから、後悔した。


だってそれを望んだのは私だった。

きっとこの人に望まれることはないと、この人を好きだと、そう自覚した時には私は第二王子の婚約者だった。


「呼ばない・・だって君が居なくなってしまったら、もう呼べないから・・」


そう言って彼の瞳が潤んだ。


「ルクス・・様?」


「・・・君に行って欲しい。君にしか頼めない・・・」


彼はこんな人だったろうか。

いつも私とそして弟君を何時も一歩後ろで見ててくれる人だった。

大人びた視線の先にはいつも国いや国民の未来を見据えていた。


「でも・・同じぐらい、行かないで欲しい・・・愛してるシルヴィア」


言葉はもうでなかった。

驚きとそして歓喜とそして・・・過去の記憶。

ゲームの中で第一王子は、アカリ・テンドウを守るためにフォースと戦争をするとまで言い切った。

それを止めたのはアカリ・テンドウ自身だった・・・どうして戦争が起きようとしていたかその原因を思い出せないが、彼はアカリ様を・・愛していた。


「っ・・」


いや、あれはゲームのしかも第一王子とのエンドだ。

現実ではない。そして、私が婚約破棄を言い渡されている今、ゲームは終わってて。


混乱したまま固まった私を見つめるのは3人。


「シルヴィア・・・すまない。困らせて」


「あっ・・えっ」


「応えはいい・・・それでも今しか伝えられないと思ったんだ。もし君が本当に亡命するなら、今しかなかた・・・すまない」


そう彼は本当にすまなそうに告げて立ち上がってしまった。


「ジェイン・・・シルヴィアを頼んだ。無事にバーミリオンの領へと届けてあげてくれ」


「承りました。」


ジェイン君がそう王子に応えて・・・・ルクス王子は、ヴァン様を連れて部屋を出て行ってしまった。


「・・・王子・・」


「さよなら・・愛しいシルヴィ」


遠い昔たった数ヶ月しか呼ばれていなかったその名で私を呼んで、彼は行ってしまった。


















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