表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わりから始めましょう ー女伯爵は事後処理中ー  作者: 月のしずく
第2章 フォース国編
31/43

机上は世界を造る

やっとここまでこれました。彼女の本領発揮です。

なかなか更新できなくてすみません。


2週間という時間をフル活用したのは、私ではなくギルバートの方だった。


一足早く城に戻っていた私は、それこそ鬼気迫る勢いで全ての準備を整えていた。

もう二度とあんな無様な会談をする訳にはいかないからだ。

机上は、私の領域だ。


もう負けない・・そう思ってますが、まずは、内部をどうにかしないといけなかったらしい。


「えーっと・・・それは真実なのよね?」


「はい、特別(・・)な方法で聞かせていただきましたから」


特別の意味を知っているので何も返せなかったが、まさか一国の王子(仮)に薬を盛るとは思わなかった。


「ありがとう、マリー・・でもあまり無茶はしないでね」


マリーに頼んでいた事実の確認は、思いの外早く進んだらしい。


「あら、お嬢様への暴挙を考えれば本当なら・・・」


「マリー・・・怖いからやめて」


自国の王子に自白剤なんて恐ろしいもの盛る侍女は、とても清々しい笑顔で新に薬瓶を持っているので慌てて止めた。


「わかっております。冗談ですわ、お嬢様」


絶対ウソですよね。そんな綺麗な笑顔でもあなたの目は本気です。


「それよりも、今の報告を聞く限り随分とあちらも詰めが甘いようですね」


「はい、・・・こちらが考えてたよりわ、ですが・・それでお嬢様、御子様はなんと?」


「それがね・・・事情を聞こうにも・・・・」


私が1週間程で城に戻った頃、私は、事情を聴きにもう一度御子様に面会を求めた。

だがそれは叶わなかった・・というよりもできなかったのだ。


理由は、もう言わなくてもいい気がするが公爵様のおかげだった。

朝昼夕と・・・随分と熱心ですねぇ。グルベス様。


「ここまで徹底してくれて、本当にありがたいわね」


こう、わかりやすく動いてくれたのは、こちらとしてはありがたいのだが、その対象になってしまった御子様には大変申し訳ない。


「そうですねぇ・・・まあ、あの方が迂闊な事を言わなければいいのですけど」


「そうね、言質を取られてしまったら・・・ちょっと怖いけど。王妃様がどうにかしてくださるとは思うの」


そのために病み上がりの王妃様を監視役としてお願いしたのだ。


「で、そのエヴァン男爵はどうなんですか?明日には会談が」


「大丈夫よ、多分」


そう遮ったのは、他でもない私が一番不安だからだったりする。


ーーーーーー



二度目の決戦は、宵の口より始まった。


前回よりも手狭ではあるが、機密性はあるその部屋を選んだ理由を両者が理解している。

円卓も前回とは違って、楕円系だ。

中央線を引くように細長いクロスが横切りまるで陣地を示してるようだ。


「今宵は、また一段とお美しいですね。ラピス」


そう彼は告げる。彼の賛辞をテキトーに流してもいいが、そこは大人として、女として返す事にした。

今日の衣装は、前回とは違いこの国の伝統的な型のドレスだ。

薄い生地を幾重にも重ね、動きによってその美しさを増す・・・ダンスの際に綺麗に見える事を考慮して作られている。

そのせいか異様に重いのだが迫力はある。


「お褒めの言葉有難うございます。此度はお時間をいただきありがとうございます。・・そしてこれが、おっしゃっていた献上いただいた品ですわ・・お確かめ下さい」


そう告げて、後ろに居た従者に運ばせたのは、レムソンから送られた品々だ。

そこには、ちゃんと『レムリナの髪飾り』もしっかりある。


「ありがとうございます、では確かめさせていただきますね?」


食えない笑みを浮かべてゼスランは自身の後ろの鑑定師にその品を受け取らせた。


「そういえば・・・一つお話しておきたい事があります。」


「何をですか?」


「此度の同盟条約の規約・・・変更をさせていただきますわ。」


私の言葉に視線が集まる。


「・・・それはどのようにでしょうか?」


「まず、御子様の婚姻の件。全て白紙にさせていただきますわ」


「っ!それは困り」


「私共としても心から残念に思っていますの、ね」


私のすぐ後ろに控えていたミカエルの同意を求める。

彼がまるで人形のように勢いよく頭を振る。自身が現在どんな状況に置かれているのか正しく理解されているようだ。


「・・・御子様には既にお話したのですが、伝わってなかったようでして」


さて始めましょう。後始末を。



「此度の件・・・いくつか不備がありました。まずこちらを・・・正規の文書はこういう内容でしたので、それに対するこちらの応えをお持ちしましたわ」


微笑ながら、エヴァン男爵が保管(?)していた最初にこちらに送られた文書を彼等の前に提示する。


「上記2つの内容は、既に解決済みですね?」


上質な用紙には、他のものとは違いわかりやすく端的な内容が記されている。

我が国への特別処置についてだ。


・原因不明の奇病の原因解明のため両国間での情報共有を要求する、原因の排除が難しい場合は、軍用施設を国境へと併設しそれについての管理を両国間で決める。

・レムリナ鉱石の輸入経路の確執化。

・御子姫であるアカリ・テンドウ様のレムソンへの遊学、レムソン建国記念式典への参加。


と三つの要求がもう少し丁寧な言葉で連なっている。

3つのうち2つは既に対応済みだと判断出来た。そして3つ目の条件に私は歓喜したのだ。


「これは・・・この書状は、既に破棄するものとして」


「破棄・・・ではその破棄の理由を教えて下さい。・・・我々は既に2つの事項についてあなた方の要求を呑み、既に実行しております。それを破棄なさるなら、それなりの代償も必要だと思うのですが?」


「そんっいくらなんでも1年も前のもの」


「はい。1年以上も前のものですから・・・状況が変わっているのはお互い様ですわね?」


そうですよね。・・でもそれはこっちのセリフです。

レムソンのお客人。


「・・・ですがっ・・・これは我々にとっては、話が違います。」


「そうなのですか?」


慌てたように彼等は、私達の前に金糸の豪奢な紙を差し出す。


「はい・・・我々は、先日お渡しした」


そうだ。彼等が本当に望んでいるのは2週間前に私達に提出した方の条約だ。


「一度印を押した物は、こちらではなくこの親書の条約ですよ」


彼等が私に差し出した粗末な紙には、日付とそして立ち合い人の紋章と名がつづられていた。

そう日付だ。


「我々は確かに」


「この親書は、立ち合い人であるエヴァン男爵が保管していたものです。確かにそちらの王の王印が押された正式書面ですわ。こちらとしては、第二王子であるハークライト様が署名なさっているのを確認させていただき事実の確認も各所で行い全てを把握した上でこちらの書面を我々が受理したという事になっていました。」


「・・・」


「軍用施設の併設、その施設には軍医いえ治療師が必ず常駐するようにとおっしゃられてますが・・・それだけの人員をどう確保するのですか?・・・我が国の治療師は、既に現在瘴気の浄化に全勢力を持って在ったっています。ならそちらから、治療師を派遣していただくことになりますがよろしいですわね。・・・その施設には、検疫というものをしてもらう必要があるのですから」


エヴァン男爵が持っていた議事録を彼等の前にそっと差し出す。


「これは・・・」


「エヴァン男爵が立ち合い人としての義務として記録員を雇って下さっていたらしく、我々もなんとか事実の把握をする事ができました。」


種明かしと同時で彼等の首元に言葉の刃を突きつける。


「まだ全ての施設を廻って確認はしてませんのですが、西国境に出来た施設のうち5つは、治療師や軍医も置かれていないようですがどういう事でしょうか?」


治療師いや、魔術師自体がある意味国の財産である。

しかも元々魔術師の少ないレムソンが『検疫』の機能をもった施設を造る事が出来るはずがない。


「そっそれは・・」


「検疫の機能を持たない施設など必要ない・・そう私は思いますけど?」


後処理は、速やかに。


「どういうおつもりですか?」















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ