第32話:新章開幕!? こわもて男とマジカル玲君
「はい、これ今日の夕食。また後で取りに来るので」
「うむ、いつもすまないな」
テントの中って意外と広いんだな。家奪っといてなんだけどなかなか快適そうだし
「すいませんねぇ、こんな暮らしをさせて」
「いや、お主は悪くなかろう。こうして食事も作ってくれるしな、気にしていないぞ」
まぁ俺に出来る事ってそれくらいだしなぁ。一番反省しなきゃいけない人間は気にしてないみたいだけど
「……ところで、パソコンで何をしてるんですか? もしかして雫さんみたいに株とか?」
「いや、仕事じゃぞ」
「は……?」
仕事……? あれ、この妖精さん仕事してるの? またもイメージがぶち壊されたよ、一度壊れてまた壊されたよ、二段底は予測してなかったなぁ……
「む、な、なんじゃその眼は。仕事と言ってもちゃんと妖精らしい仕事じゃぞ!? 確かにパソコンを使ってはいるが、間違ってもサラリーマンの様な事はせん!!」
「……じゃあどんな事してるんです?」
大体妖精らしい仕事ってなんだよ。あれって結構自由なイメージあったのに……
「そ、それはじゃな。ロリコンの数が増え過ぎない様に調整したりとか、なんかアレな感じのモンスターが出てないか見張ったりとか……」
「……へぇ、凄いですね?」
「お、お主信じていないな!? モンスターを相手にする魔法少女を適度に生み出したり、変身時を狙ってカメラを構えるロリコンの人払いをしているのは妾なのじゃぞ!? 妾が何度この町と少女の未来を救った事か!!」
だって、ねぇ……?
「くっ……まぁ良い、初めから信じて貰えるとは思っておらぬ」
「いやいや、信じますよ? ええ、信じますとも」
「その優しげな視線を向けるな!! 絶対信じておらんじゃろうが」
しょーがないだろ。天使悪魔と妖精だけでも信じられないのに今度は魔法少女なんて……
「大体魔法少女なんていなくてもこの町には化け物に張り合えそうなのが二人もいるじゃないですか」
「まぁ確かにそれはそうなのじゃが……絶対に何か請求されるのは眼に見えておるしのぉ……」
「まぁ確かにそうですね。大家さんは面倒がって自分に被害があるまで放っておくでしょうし。雫さんも変身セットを市場に出したい、くらいは言いますね」
「うむ」
そもそも皆にとっては万害あって一利なしの人達だからなぁ。モンスター自体はまぁ……信じなくもないかな。悪魔と天使がいるんだし
「それよりも今は素材が少なくてのぉ……」
「素材って……魔法少女のですか?」
「そうじゃ、美少女でそれなりに妄想癖があればそれでいいのじゃが……」
「…はぁ……」
もの凄い条件だな。でもまぁ確かにそんな人そうそう……
「そうじゃ!!」
「うわっ、どうしたんだよ」
「この際少女である必要性はないじゃろう!! 今は女性の社会進出がどんどん進展しておる、ここは逆に魔法少年と言う新しい物に挑戦してみるべきじゃ!! ちょうど良い人材がいる事だしのぉ」
「ま、まて、この際その発想に文句を付けようとは思わん。だがその期待する様なまなざしは止めないか?」
「ふふふ…家を破壊した償いがしたいんじゃったなぁ?」
「……さ、さっき気にしないって言ってたじゃないですか」
やばい、これは眼がまじだ。なんていうか、危な過ぎる……
「のぉ、魔法とか使ってみたくはないか?」
「全身全霊をかけて遠慮させて頂きます」
「ふふふ、魔法少女というのはいつも嫌々もしくはやむおえなくなる物じゃ……」
「ちょ、ちょっと待って下さい。ああ言うのって意図的に作り出す物じゃないでしょう!?」
「問答無用じゃ!! 転移!!」
「……ここは……公園か?」
ったく、いきなり飛ばしやがって。てか魔法使えたんだな、あの人
『一応妖精じゃぞ? 当たり前じゃ』
「……テレパシーか……今すぐ家に返せ……」
『そうはいかんな、今から起こる危機に対して魔法を使ってもらわねばならん』
「危機……?」
なんだそりゃ、怪物でも出て来るのか?
「おい、兄ちゃん。俺らちょいとばかし話があるんだがちょっとこっちこいや」
「へへへ、怖がらなくてもいいぜ? 出すもんだして貰えばちゃんと解放してやるよ」
「…………」
『ほら危機じゃぞ、心の中で助けを求めろ』
ぜってー嫌だ……ってか明らかにこれは魔法関係ない怖さだろ
「おい、黙ってないで……へぶっ……」
「てめぇ何す…げはっ……」
「これくらいなら大家さんに鍛えられたからな、何かあった時の為に」
『素人とは言え一撃……しかもハイキック顎へのハイキックと後頭部への回し蹴りか……』
残念ながら手は料理人の命……ってわけではないけど大家さんが『玲の手が相手に触れて汚れたら困る』って言って教えてくれなかったんだよなぁ。蹴りだけは靴をはいてるから教えてくれたけど。
「さぁ、早く家に返せよ」
『ふっ、何も危機はこれだけではない!! いでよ、我が下部!!』
「…………」
ヴォォォォォォ!!!
なんでわざわざ危機を増やすかなぁ……、なんか今度のは、うにょうにょして、ベタベタしそうな液体っぽい怪物だ。うう、気持ち悪い……
「流石にあれは無理そうだな、生理的に」
『ふふふ、そうじゃろうそうじゃろう。仕方がない、そなたにアドバイスをくれて一緒に戦う、便利な仲間ポジションの助っ人をやろう』
「なんでもいいから早くしろ、触りたくない」
『いでよ、富田!!』
……すげぇ普通な名前だな。しかしどんなのだ? フェレットとか猫とかが何か普通っぽいけど
ピカァァァァァァッ!!!
「…………」
「ふっ、お前が今回の仕事仲間か。なかなか良い面構えだ」
「えっと……」
「話している暇はない。すぐにあいつを片付けるぞ!!」
「え、はい……」
えっと……普通の人間じゃね? いや、普通ではない、スキンヘッドでサングラスかけて身長2メートル以上あって筋骨隆々な人を普通の人とは呼ばない
「ど、どうやって倒すんですか?」
「ん? お前は初仕事か、なるほどな。あいつは魔法の武器で倒すんだ。ほら、お前の武器はそこに浮いてるだろ」
「いつの間に……」
これは松竹梅の宝丁……一回使ってから飾っといたけど、これって魔法の武器だったのか……
「うわ、刀になった」
「ふっ、日本刀か、良い趣味してるじゃねぇか。」
「どうも……」
なんか調子が狂うな。富田さんと並び立って平然としてる人の方が少ないだろうけど
「それじゃあ俺が援護するから、その日本刀であいつを倒すんだ」
「分かりました」
仕方ない、ここは早くこいつを倒して帰ろう。反論したらこの人に殺されそうだ
「おらぁ!!」
ズバッ
「よし、一刀両断……何!?」
「ふん、再生したか」
ダメージ無しかよ、最初からレベル高過ぎなんじゃないのか?
「くそ、どうすれば」
「避けろ、相棒」
「……は?」
ズガガガガガガガガッ!!!
富田さんの手にある、どう見ても機関銃なあれはなんだろう。何かスライムが一瞬で消滅したぞ
「ふう、危なかったな。何とか倒す事ができた」
「……富田さん、その持ってるのはなんですか?」
「見て分からないか? 魔法の機関銃だ」
魔法ってなんでもありだな。普通の機関銃じゃねぇのか? とはいわない、怖いから
「だが初めてにしてはなかなか筋がいいな」
「どうも……」
この人がいれば俺は要らない気がするんだけど、気のせいか? てか褒められても嬉しくない
『二人共良くやった、これから二人はパートナー同士じゃ。共にモンスターや犯罪者を駆逐してくれ』
「OK、ボス」
「おい、俺は……」
『む、新たな反応がそこから500メートル先にある。そちらも駆除してもらうぞ』
「いくぞ、相棒」
「もう好きにしろ……」
くそ、あの妖精め。もう慈悲なんてかけてやるか……