第25話:天使な悪魔と消毒方法
「はいどうぞ、お嬢様♪」
「ありがと、ハディム♪」
ミュウでーす♪ 今日はハディムがオヤツを作りに来てくれたんだよ!!相変わらず玲君とは仲が悪い見たいだけどなんでだろーね? 料理の話とかで盛り上がってもいいと思うんだろうけどなぁ?
「ほら汚豚野郎、貴様にお嬢様と同じ物を与えるのはイラっと来ますがまぁお嬢様の前ですから慈愛の心で作ってあげましたよ、ありがたく食しなさい」
「はいはい、ありがとうございますよ。だがこのホットケーキはその汚豚の家にあった材料で作ったと言う事を忘れるなよ?」
うーん、玲君も今日は何かちょっと違うな。ハディムも毒舌具合がいつもより十割増し位になってるよ。
「ねぇ玲君、シロップない?」
「あー…ちょっと切らしてるな、蜂蜜ならあるぞ? そこの戸棚の…」
「どうぞ、お嬢様。気が利かなくて申し訳ありません…。しかしシロップを切らしているとは……ふん」
「なんだよその笑みは? こんなに流れる様にケンカを売りまくるやつは初めてだな」
別に蜂蜜でもシロップでもどっちでもいいんだけどなぁ
「ねぇ玲君、今日の夕飯は何?」
「ホットケーキ食いながら夕飯の話かよ、今日は天ぷらだ。雫さんからの希望でな」
「流石は雫だね、私も天ぷらが食べたかったんだよ。なら明日はパスタだね♪」
「天ぷらの次の日はパスタという決まりでもあるのか?」
「特にないよ?」
ただそんな気分なだけだしね
「ふん、貴方のような愚民がお嬢様の高貴思考を理解出来るわけないでしょう。喉を切り裂きますよ?」
「そういう事は喉にナイフを当てながら言うなよリアルに聞こえるだろ。少し刺さってるぞ」
「リアルに切り裂くと言っているんですよ。……して、天ぷらとはどのような物なのですか?」
「あー、そう言えばハディムには作ってもらった事なかったなぁ。こっちにしかないから仕方ないけどね」
ハディムはあんまり城から出ないし、こっちに来る事なんて殆どなかっただろうし。ハディムは昔から私の事ばっかりだからね
「天ぷらって言うのは簡単に言えば、ころもを付けて揚げた食べ物だな」
「分かりにくいですね、そのあまりに少ない容量の頭でしっかりと要点を上げなさい」
「でも本当にそうなんだよ?」
「そうなのですか、物分かりが悪い待女で申し訳ありませんお嬢様…。……お嬢様に味方してもらっていい気にならないように」
「たまには非を認めたらどうだ?」
あ、そうだ。天ぷらが分からないならちょうどいいじゃん
「ハディムも玲君のやってるの見て覚えたら?」
「こいつのを…ですか?」
「まぁ俺は構わないけど…」
「よし!! じゃあ決まり!!!」
これで少しでも仲良くなってくれれば良いんだけどなぁ
「これに衣を付けて揚げるのですか? 奇怪な料理ですね」
「俺は切ってないカボチャに服を着せようとする人間を初めて見たよ。ハディムって意外と天然か?」
「っ…!! 私を愚弄するのですか!? 三段変形変態鬼畜の分際で!!!」
ハディム可愛いなー。一度覚えたら完璧にこなすけど知らない物には基本的にこう言う反応するんだよね
「切れば文句ないんですね? 私の包丁捌きを見せてあげます」
「だぁぁぁぁっ!! なんでカボチャを微塵切りにするんだよ!!! っていうかどれだけ力強いんだよ!!!」
「一々うるさい汚豚野郎ですね、口に入れれば一緒です」
「天ぷら作った人に謝れぇぇぇぇぇぇ!!!」
「私はお嬢様以外に下げる頭は持ち合わせていません!!!」
あ、まだカボチャあったんだ。あの細切れのカボチャはスープになるんだろうなぁ。楽しみ♪ にしても玲君の手際は相変わらず鮮やかだなぁ
「よし、ころもを付けてくれ」
「こんな物でいいのですか?」
「ああ、でも今回はドジをしなかったな…」
「残念そうに言わないで下さい殺しますよ」
「包丁は人に向けるな。んじゃあそれを油の中に……」
ぼちゃぼちゃ
「きゃっ!?」
「あ、熱っ!? そんな上から投下するな、熱いだろうが!! それと包丁は離せ!!」
あーあ、今思いっ切り油とんだよね。包丁持ってるハディムの左手に。あれ、ハディムっていつも左手に持ってたっけ? 何か本当にテンパってるみたいだね。やっぱり可愛いなぁハディム
「っ…」
「おい大丈夫か? あー切れてるな、包丁なんか持ってるからだよ」
「これくらいの切傷は怪我に入りません…だから大したミスではないんです!!」
「強情だな…いいから手をかしてみろ」
「………」
玲君こういうの慣れてるもんね。松竹梅って超絶不器用ばっかりで、油ひっくり返して喉切っちゃうくらいはやる人達だしね。それでケロッとしてるから不思議だけど
「……別に良いですよ。御気持ちだけ受け取らせて頂きます」
「いいからかせって」
「………」
…あ、そう言えば玲君の消毒方って……
はむっ
「ひゃう!? な、なにしてるんですっ…っつ〜!!」
あ、舌噛んだ。まぁ気持ちは分かるけどね。玲君って指を消毒する時とか舐めるんだよねぇ、私もやられた時はびっくりしたもん。アラナに関しては次の日まで余韻が続いてぼーっとしてたし
「暴れるな。指を動かすな。上手く出来ないだろ」
はむはむっ
「…あ…う……」
ペタリ
「ほら、絆創膏貼ったぞ。……どうした?」
はい天然、さすが玲君。大家さん達の教育の賜物なんだろうけど。
「ゆ、指を舐めるなんて……何処で教育を受ければ……」
「いや、大家さんと雫さんに昔から怪我した時はこうされてたし。あの二人はこれで消毒しないと駄目らしいんだが……なんか駄目なのか?」
やっぱりあの二人か。玲君、本当に愛されてるなぁ。凄く犯罪くさいけど…
「駄目と言うよりもこれはっ…!!」
「ちゃんと消毒しないとダメだろ。せっかく綺麗な肌してるのに跡が残ったらもったいないぞ」
「…私が…綺麗……って、そうではなくてですね!?」
下心ない天然玲君の殺し文句。ここらは雫さんの努力の成果だね。このやり取りも見てるだけで恥ずかしいよ
「こ、このような事は…」
「ミュウ、魔界じゃやっちゃいけないのか?」
「そんな事ないよ? それならこの前私にやった時に言ってるし」
ピキッ
あれ? ハディムが固まった
「お嬢様…今のはお嬢様にも…」
「うん、この前手伝った時にしてもらったよ」
「思いっ切り皿割ったからな」
あれ、ハディムがなんか怖い
「この鬼畜がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うわっ危ないだろ!!」
「二度と笑えると思うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ハディムも照れ隠しが下手だなぁ。顔真っ赤だよ。それより天ぷらまだかなぁ…