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昼休み。

図書室に向かっていると、反対側から綾部(あやべ)さんが歩いてきた。う、緊張する…。

頭を上げる綾部さん。視線が合う。思わず立ち止まってしまった。話題になるようなものなんて何も持っていないし…。どうしよう!

すると、綾部さんは何事もなかったかのように、視線を逸らし図書室の中へと入ってしまった。

い、今!どれくらい視線が長く合っていただろう!1分?いや、3分か?すごい長かったよな?うん、絶対長かった!

浮き足を我慢し、ドキドキしながら続いて図書室の戸を開けた。









カウンターを横切り、辺りを見渡す。

図書室は、校庭とは違い静寂(せいじゃく)に包まれていた。この学校の本棚の数は多く、ロフトのような二階も合わせておおよそ12、3列程ある。古い書物から最近の新人賞、それに芥川賞など様々なものが揃っている。どうやら今日は人が少ないようだ。

並んでいる本棚を1つずつ——そっと覗き込む。手に汗がにじむ。息はころしている。心臓はもつだろうか…。のどが鳴る。

次は4つ目の本棚。ジャンルは歴史、か。覗き込むと——いた!

綾部さんは、本棚の前で立ち読みをしているようだ。本を選んでて、読みふけってしまったのか?その気持ちはだったらわかる!我を忘れて本の世界に入り込んで、そのまま予鈴が鳴ってしまって…。そして、色々本を選びたかったのに、時間がなくてそのまま読んでいた本を借りてしまうという!さらに、教室に戻る時、借りた本を読みしながら歩いて行——。

ハッ、とし本棚の方を見ると、そこにはいつの間にか蓮山(はすやま)さんが一緒にいた。


「ねぇ、綾部さん。ちょっとお願いがあるんだけどさぁ…。今晩空いてない?」


綾部さんは、一瞥(いちべつ)もせず立ち読みをしていた分厚い本を閉じた。そして、無言で本棚に戻す。

その態度に苛立ったのか、綾部さんの顔のすぐそばに手をバン、と置く蓮山さん。あぁ…大切な本が…。


「ちょっと…聞いてるの?」


ここでようやく、綾部さんが蓮山さんに振り向く。


「聞いています。なんでしょう?」


手を引っ込め本棚に寄りかかる蓮山さん。そして、唸りながら自分の金髪の毛先を、クルクルと指で遊び始めた。


「この町にある廃駅——」


と、話始めた途端、予鈴がなってしまった。舌打ちをする蓮山さん。


「後で授業中に話すわ」


そういうとコチラに向かって歩いて来たので、ぼくはあわてて本を持ち隣の本棚に隠れた。通り過ぎるのを横目で確認する。本を棚に戻し、また先ほどの本棚を覗き込むと——いない。他の本棚を次々と覗き込んでみるがやはりいない。いるのは他の生徒ぐらいだ。椅子に…テーブル席に行ったのか?

向かってみる事にした。だがそこには誰もいなかった。









5限目。

なかなか集中出来ない。さっき、図書室からどのように帰ったんだろうか。

綾部さんを見つめていると、またうるさい映画オタクが声をかけてきた。


飛鳥(あすか)幽霊列車(ゆうれいれっしゃ)…気にならねぇ?」


そんなものはどうでもいい。ぼくが好きなのは、本とあや——。

おっと、前の席の蓮山さんとなにやら話始めた。蓮山さんの眉間にしわが寄っている。綾部さんは真面目に授業を受けているようだ。それが眉間にしわを寄せている理由だろうか。


「夜中の0時66分に列車が来るんだと」


勝手にしゃべっている龍二(りゅうじ)

蓮山さんと綾部さんはなにを話しているんだろう。といっても、蓮山さんが勝手に1人で話しているようにしか見えないんだが…。


「噂じゃあ、人間の魂を地獄だか三途の川(さんずのかわ)だかに運ぶ用らしいぜ」


「しつこい」


流石に痺れを切らしポツリとつぶやいた。無論、視線は綾部さんのままだ。

すると、それにムッとしたのか、突然起立し手を挙げる龍二。


「先生!(はぎ)君が綾部さんばかりを見てて、大切な授業を聞いてません!」


お、おい!大きな声で変な事を言うな!

クラス全員が爆笑する。龍二のブレザーを引っ張り、慌てて座らせようとする。チラッと、綾部さんの方を見たら教科書で顔を隠していた。そこを、蓮山さんが笑いながら弄っている。ご、ごめんね!綾部さん!巻き込んじゃって!

と、仕切り直すかのように、数学の先生がゴホン、と咳をする。そして、ワックスで固めている髪を後ろに流す。


諏訪部(すわべ)君。『博士の愛した数式』を観たことあるかね?」


キョトン、としながら頷く龍二。


「はい。80分しか記憶がもたないっていう…俳優寺尾聰(てらおあきら)さんが出ている作品ですよね?」


流石、ハリウッドを目指しているだけある。映画は本当に色んなのをよく観ているんだな。

先生が、メガネを上げながらキッ、と龍二をにらむ。


「それじゃあ、あの元教授のように数学…詳しくなりなさい。放課後、15分程補習します」


ガックリと、うなだれる龍二。しかし、すぐさま顔を上げなぜか誠斗(まさと)のほうを指さした。


「では、利根川(とねがわ)君にもお願いします」


誠斗が、今にも飛びかかってきそうな表情でにらんでくる。

しかし、先生は気に止める様子はなかった。


「彼は関係ありません。早く着席しなさい」


言われてゆっくりと席につく龍二。ははん!いい気味だな!

教科書で顔を隠し笑っていると、次はぼくの名前が呼ばれた。


「萩君は、授業が終わるまで廊下に立っていなさい。その間に、次テストが出るところをやります」


隣で龍二が教科書で隠す事もなく、堂々とぼくを笑う。あのリーマン教師め!

真面目な誠斗(まさと)は頭を抱えていた。

ぼくは、教室の後ろを通りながら廊下に向かう。

その時、恥ずかしくて蓮山さんと綾部さんの顔を見れなかった。








授業が終わり、ガラリと教室の戸が開く。リーマン先生が入っていいぞ、と親指でさす。

ため息まじりに入ると、龍二が誠斗の机まで来て話をしていた。ぼくが入って来るのを見つけると、手招きをする龍二。


「なぁ、なぁ!幽霊列車(ゆうれいれっしゃ)…気にならねぇか?」


誠斗はぼくの顔を見ると、思い出したかのように、先ほどのおにぎりを手渡してきた。


「ほら、今のうち食べておけ」


メガネを上げる誠斗。まだお腹いっぱいだ。昼ごはんがまだ消化しきれていない!首を音が鳴るほど振ると——。


「じゃあ…食わされたいのか?」


あまりの威圧にゴクリと、のどが鳴る龍二とぼく。喜んでいただきます!深々と頭を下げながら両手で受け取る。

ぼくが食べ始めると、先ほどの話の続きをし始める龍二。


「あの山のふもとにある廃駅を知ってるか?」


首を横に振るぼく。しかし、誠斗は知っていたようだ。


「10年以上も前に廃止になったらしいな。それがどうかしたのか?」


目を輝かせ、机に身を乗り出す龍二。思わずのけ反る誠斗。


「そう、そう、そう!その廃駅!0時66分に幽霊列車が来るんだと!」


いや、66分って時計でそんなもの無いはず。まず、そもそもどうやって針がさすんだよ。チラリと、誠斗をみたら案の定目が合った。視線がオレは興味無いと言っている。無論、ぼくもだ。

ため息をついたその時。近くの戸が乱暴に開け放たれる。思わず、口から全てのおにぎりを吐き出すところだった。


「諏訪部…諏訪部は()るか!」


凛とした声が教室内に響く。そこに立っていたのは、長い水色の髪を1つにまとめた女性だった。それにしても、同じ高校生とは思えないほど美人だ。細いメガネがまた知的に見える。あれは…地毛なんだろうか?どこかで見たことあるが…誰だろう。

首をかしげていると、龍二がカエルを踏んだような声を出す。

そして、誠斗と声を揃えてつぶやく。


「「麗華(れいか)」」


思わず、2人を見てしまった。誰だろう?顔はどこかで見たことあるんだけど…。思い出せない。

麗華と呼ばれた彼女は、ズカズカと入って来ると龍二の胸ぐらをつかんだ。


「お主だろ!ボールを校長室に投げ入れたのは!」


「な、投げてねぇよ!打ったらたまたま、入っちゃっただけだって!」


おにぎりが包まれていたラップを丸めながら誰だ、と誠斗に視線を送る。ため息混じりに教えてくれた。


夏目麗華(なつめれいか)。この学校の生徒会長だ。家が近くて俺とは幼なじみなんだ」


こんな美人が…幼なじみとか!コイツめ!隠していたのかよ、おい!

あせる龍二をよそに、胸ぐらを揺らす生徒会長——否、夏目会長。


「お主のせいで…校長室にあった飾り物のいくつかが壊れたのだぞ!」


「飾り物じゃあなくてトロフィーっつーんだよ!ってか、そんな過去の栄光なんてどうでも良いだろうが!」


なんだか仲がよろしいようで。呆れながら誠斗の机の上にそっとラップのゴミを置く。


「いつもこんな感じなんだ」


ボソリ、とつぶやく誠斗。2人を見つめるその目はどこか寂しさも混じっており——。そういえば、誠斗の好きな人は誰なんだろうか。


「そう…遠いんだ」


「えっ?」


思わず声を上げてしまった。それは、聞こえるか聞こえないかの大きさで——。

ボンヤリ、と誠斗を見つめていると、どこからともなく金切り声が聞こえてきた。


「ねぇ、私の龍二になにか用?オ・バ・サ・ン」


金髪の毛先で遊びながら歩いて来たのは、蓮山さんだった。あぁ、なんだかややこしくなってきた…。芥川龍之介の続きでも読もうかなぁ。

龍二も蓮山さんに助けを求める。


「あ、あぁ…ちょうど良かった。今、のぞみの名前を心の中で呼んだところだよ」


「あいかわらず、都合のいい心ね」


ふん、と鼻を鳴らすも、頬がほんのり赤い。ん?少し照れてる?もしかして、蓮山さんは——。

確か以前に、2人は少し関係をもっていたと聞いたことがある。龍二本人曰く「関係はとっくに終わっている」らしい。まぁ、彼女は尻軽とも裏で呼ばれているから、どんな関係だったのかは想像がつくが!

蓮山さんは、髪から手を離すと龍二の肩に手を置いた。


「ねぇ、その手…いい加減離してくれない?オバサン?」


蓮山さんの手に力がこもる。嫌な予感がするのか龍二の顔が引きつっている。


「の、のぞみさぁん?オレの肩を掴む必要性ってなんですかねぇ?」


夏目会長の両手にも力が入る。あ、少し…締まっている?


「貴様に用は関係ない。次の授業を受ける準備でもしておれ」


「あ、麗華…さん?少し苦しいのですが…」


夏目会長の手をパチパチと叩いて意思表示をする龍二。

そして、肩もメリメリと言い出す。


「残念ながら次の授業は道徳なんですぅ!そんなに準備するものありませんー!」


「痛いッス!のぞみさん、痛いッス!見かけによらず力があるんスね!」


以外と龍二は余裕そうだな。さすが体力があるだけすごい。それじゃあ、ぼくもそろそろ席に着くか…。

誠斗の席を離れようとしたその時、誰かに肩をつかまれた。


「ゴミ…忘れているぞ?」


反対の手にゴミを持ちながら、満面の笑みを向けてきた誠斗。


「はい…」








6限目の道徳は滞りなく終わった。

国語も担当していた50歳の先生が、実はこの教室の担任。なので、道徳はこの先生が担当していた。龍二はこの先生の事を『いそ』と呼んでいる。なので、ぼくもついでに呼んでいる。


「いそー!早く帰りのHR(ホームルーム)終わらせようぜー!」


「そんなすぐには終わらないよー」


いそ先生が白色混じりのボサボサの黒髪を掻く。すると、なにかを思い出したかのように先生があっ、と声を上げる。


「諏訪部ー。終わった後きちんと校長室行けよー」


「それじゃあついでに、もう2、3個トロフィー壊しておきますねー!」


龍二が冗談混じりに言う。クラスのみんなも釣られて笑う。あいかわらず、クラスのお調子者だ。

そういえば、先生はこれでも教育免許持っているんだもんなぁ。どうして国語を選んだんだろう。そして、なぜ教員になろうと思ったのだろうか。まぁ、見た目てきにはヒョロっとしているから、体育は間違いなく無理そうだけどけど…。

いそ先生が教卓に立ちHRを始める。ぼくはそれをボンヤリ見つめていた。









コッソリ帰ろうとした龍二は、先を読んでいた会長に連れさられてしまった。誠斗は、いつの間にか帰っていた。どうやら、用があったみたい。

教室内にはわずかな生徒。そして、いそ先生しかいなかった。名簿をトントン、と教卓で整え、廊下に出ようとする先生。ぼくはあわてて呼び止めた。


「お尋ねしたいことがあるんですが…」


「んー?なんだい?」


先生はぼくに声をかけられても、顔色1つ変えずほほ笑んでくれた。めずらしい。そして、どこか変わっている先生だ。


「先生は…どうして教員になろうと思ったのですか?」


身長がぼくよりもずっと高い。なので自然と見上げてしまう。近くで見ると180cmはありそうだ!キョトン、とする先生。んー、と言いながら天井を見上げポリポリとほほを掻く。


「そりゃあ、やっぱり好きだからねぇー。教えるのも国語も…。そして子供も」


ぼくは思わず大きく目を見開いた。同時に、胸があたたかくなった気がする。ほほが(ほころ)ぶ。

それを見た先生がニンマリ、と笑う。痩せているせいか、ほほ骨が強調される。


「突然どうしてだい?」


うっ、と言葉につまってしまった。ふと、思っただけであって意味なんてない。ただ、気になったからすぐに聞きたくなって…。

口を(つぐ)む。床を見つめていると、頭の上に何かが乗っかった。顔を上げると、それは先生の大きな手だった。目の前にある先生の顔。そして、どこかあたたかみを()びた視線とぶつかる。


「萩…いいか。今は悩め。無理して大人になるな。色んなものを見ろ。そして、たくさんのことを経験をしろ。わかったな?」


そういい先生は、背中を向けヒラヒラと手を振って教室を出ていった。

そしてぼくだけが残される。









カバンを持って急いで教室を飛び出した。べつに、早くに帰らなくちゃいけないってわけではないんだけど…。ボーっと、していたら少し時間が進んでいた。

ダッシュで教室の角を曲がる。そして、階段に向かおうとしたその時。だれかにぶつかってしまった。——いや、だれかの胸におさまったというべきだろうか。


「む、萩君か」


聞きなれた嫌な声。リーマン先生だ。


「廊下を走ってはいけません」


顔を上げる。すると、中指でメガネを上げていたリーマン先生と視線が合った。この先生も身長が高いな…。いそ先生よりかは少し低そうではあるけれども。でも、体格はリーマン先生の方が多少しっかりしている。

ぼくは静かに胸から離れた。先生は、ぼくが無事なのを確認すると、何かを思い出したかのようにそういえば、と声を上げた。


「諏訪部君は見ませんでしたか?」


首を横にふる。おそらく、今ごろ校長室だろう。

うむ、とうなずく先生。


「では、萩君は気をつけて帰りなさい」


先生がぼくを横切る。しかし、ふとさっきの出来事を思い出した。ぼくはあわてて先生、と呼んだ。リーマン先生は、怪訝(けげん)そうな顔で振り返る。


「あの…先生はどうして教員になろうと思ったのですか?」


リーマン先生が目を(またた)かせる。何故か少し緊張する。

しかし、先生は咳ばらいをすると毅然(きぜん)と答えた。


「それは、もちろん家族を守るためですよ」


思わずキョトン、とした。どういう意味だ?


「公務員は給料が良いですからね。家族を…子供を養うのには一番いいです」


そういえば、先生は結婚していたんだっけ?たしか歳も41か42だった気がする。見た目は30代っぽいのに…。


「一番上の子が中学生でして。偏差値の高い私立の高校を受験させたいのです」


さっきとは、まるで全然違う回答だ。リーマン先生が、メガネを上げる。


「教員はあまり好きではありませんが…。しかし、守る者のために我慢しなくてはいけないのです」


胸がみょうにくすぶる。


「大人になればいずれわかります」


そう言い残すと、先生は(きびす)を返した。そして、ぼくが通った廊下を歩き去って行く。

それをぼくはじっと眺めていた。









校舎の入り口を走り抜け、階段を勢いよく下りる。両わきの花壇(かだん)を横切ろうとしたその時。見慣れた1人の学生が、しゃがんで花を見ているのに目がついた。それは、白に近い灰色のパーカーで頭を常に隠し、黒縁メガネをかけている——綾部さんだった。心拍数が上がる。足も自然と止まる。

綾部さんは、1つの黄色い花をメガネ越しに見つめていた。片手をスッと出す。よく見ると、薄い手袋をはめておりパーカーと同じ色だった。そして、ゆっくりと前に出す。右手は、触れるか触れないかのところで1度止まるが、すぐに引いてしまった。

ぼくは静かに近付いた。——残り4、5メートル。その時、綾部さんがこちらに気がついた。思わずギョッとし足が止まる。視線もそれる。なんて話そう…。普段から、おしゃべりというわけでもないから、いざこういう時がこまる。視線を感じる。どうしよう…。チラッと、横に目をやる。すると、先ほどの花が目についた。よし、コレだ!


「お、おおお…お花…す、好きなんだ、ね」


今、ぼくはなんて言った?明らかに上手く言えてなかったよな?恥ずかしくて顔が見れない。視線がおよぐ。

彼女は気にせず、うん、とうなずき花に目をやる。


(はかな)くて、弱くて——。でも"そこが"キレイで好き」


どういう意味だろう?思わず顔を向ける。


(とうと)い命。(もろ)い肉体。そして短い人生。その中でこの子たちは必死に生きて、それぞれの人生を歩む。それがキレイだと思わない?」


それは、まるでどこか悲しそうな言い方だった。綾部さん…どうしたんだろう。いや、ここは男らしく元気づけてあげないと!


「そ、それじゃあ…気にせず触れてみたらどう?手袋を取ってさ」


今のは龍二みたいな言い方だったかな…。

そして、彼女がゆっくりと立ち上がる。顔をこちらに向けたその時。初めて気がついた。なんと、瞳が猫のように細いのだ!


「触れられないの」


彼女の背後にある夕日が、切なさを増させる。強い生温い風が長い黒髪をなびく。


この時、(あわい)い桃色のランプが静かに点灯した。



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