次男坊と雇用主。
次男坊は眠り姫状態の上短いですが、次話から視点が変わる為このように。
独特のエンジン音を響かせ、黒いスポーツカーがカーブの多い山道を走り抜けていく。安定したその走りは、同乗者に安心感をもたらす。
「やれやれ……静かすぎると思ったら」
苦笑して、佐野は助手席の無防備な寝顔に手を伸ばした。整った容貌は、目を閉じていると作り物めいて見える。
滑らかな頬に指の背を滑らせると、小さく身動いで千夏が目を覚ました。
「あ……ごめん、寝てた」
「気にするな。まだ暫く掛かるから、もう少し寝てろ」
「ん、……」
掌で瞼を閉じるように撫でると、千夏はそのまま眠ったようだった。
「最初は物凄く警戒していたのにな……」
信頼を勝ち得たのだと思うと嬉しくなる。出会った頃はプライベートな接触に毛を逆立てていたのに。
車を発進させながら、佐野は千夏と出会った頃を思い出していた。
先日、同僚たちと泊まりがけの下見に出掛けました。
帰りにお世話になった方の運転が非常に滑らかで。
生後六ヶ月の娘さんを溺愛するパパさんなのですが、以来佐野のイメージがより明確になりました。
運転時にサングラスは欠かせません。(爆笑)