表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

鮎沢家の朝。

 鮎沢秋人(あきと)の朝は早い。

 午前5時起床、家族4人分の朝食と弁当を作成することから始まる。

 朝食は家族全員があまり重たいものを好まないのでコーヒーにトーストと目玉焼き程度、弁当のおかずは前日の夕飯のときに余計に作り置きしたもの、ご飯はタイマー設定した炊飯器が起床と同時に炊きあがりを告げているからそれほど苦ではない。

 それより大仕事になるのは、6時に家族を起こして回ることだ。

「起きろーッ!」

 某ゲームのようにおたまでフライパンを乱打しながら、2階の個室の前を練り歩く。

「ふぁ……おはよ、秋人」

 いちばん寝起きの良い次兄・千夏(せんか)が部屋から出てくる。階下のバスルームに向かう千夏に「はよ」と短く返して、末弟の部屋の前に立つ。おたまはフライパンを連打したままだ。

 数分後、眼鏡にぼさぼさ頭の小柄な少年が姿を現す。眠そうな末弟・冬生(とうき)の背を「顔を洗ってこい」と洗面所の方に押し遣ってから、秋人はひとつ深呼吸し、最難関の扉の前に向かった。フライパンを叩き続けたまま。


 廊下の突き当たり、いちばん奥は長兄・孝春(たかはる)の部屋だ。

 鮎沢家には各人の部屋には不測の事態以外立ち入らないというルールがある。だが秋人はおたまをエプロンのポケットに突っ込むと、躊躇いなくドアノブに手を掛けた。

 朝に限って、孝春の部屋は不測の事態に相当するからだ。

 遮光カーテンがしっかりと窓からの光を遮断して暗い室内。秋人は迷いなく窓に近づくと、カーテンを開け放った。間近から熊の唸り声。まったく意に介さずに、秋人はダブルベッドから掛け布団を引っぺがした。

 奇抜な、としか云いようのない、寧ろ一体何処で売っていたんだという色柄の寝間着を纏う熊もとい孝春の耳元で、秋人はすうっと息を吸い込んだ。そして――

「起きろってんだこの愚兄がッ!」

 部活で鍛えた肺活量をフル活用した大音量で叫び、叩き壊す勢いでフライパンを滅多打ちにした。


 まだぼんやりしている孝春を洗面所に押し込むと、慣れたもので髪を整えた冬生が世話を焼き始める。それを確認して、秋人はおたまとフライパンを片付けると独り朝食を平らげ、部活の朝練に向かう為に家を出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ