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雇用主の回想、そのさん。

短いです。

 両親が死んで、テニスを辞めようとした千夏を止めたのは兄だという。書店に並ぶ雑誌の表紙で時折見かけていたから、名前は知らなくても顔は知っていると云ったら千夏は苦笑していた。

 そんな千夏も国内での順位は上から数えた方が圧倒的に早くなり、スポンサーになった企業の広告塔の役割を果たし始めた。俺のバイトと称した援助はもう必要ない。

 嫌だと思った。千夏を手放したくないと。今まで誰にも抱いたことのない、執着心。


「俺がお前にしてやれることは、もう何もないんだな」

 これからも手伝いに来るけれど、バイト代はもう必要ない、と千夏が切り出したのに、俺は呟いていた。

「そんなことない。あんたから欲しいものならあるよ」

「え?」

 千夏の口から何かを欲する台詞が出るとは驚いた、しかも俺からだなんて。

「俺はあんたの心が欲しい」

「……」

 幻聴だろうか。今、千夏は、

「迷惑だってのは判ってる。ただ云いたかっただけだから」

 反応のない俺に少し傷ついた顔をして、じゃあなと踵を返す腕を掴んで引き寄せる。

「!?」

 抱き込んだ腕の中で、千夏が身を強張らせるが、もう離してやれない。

「躰も込みだ。俺は大人なんでな」

 形良い耳朶に唇で悪戯しながら囁くと、見る間に灰紅く染まっていって。

 くたりと力の抜けた躰を抱き締めると、明日は臨時休業だと心に決めた。

アレなシーンまで書く気力がないので、こんな終わり方に。


いちばん書きやすい三男が諸般の事情で動かせないのが思ったよりキツいです。

瑞樹の両親とか、孝春のトンデモ私服とか、また書きたくなったら追加するということで、一旦終了です。


お付き合い頂き有難うございました。

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