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バトル展開なんてありえない件について

日常成分+新キャラ登場。だからって訳じゃないけどギャグ成分が少なくなってしまった・・・。

今日は平日。つまり学校がある日だ。

学校には幽霊たちは来ない。リーマンは仕事だし、ニートと杏は家でセ○ムしている。またの名を留守番。

なので俺はここにいるときだけ幽霊とは無縁の時間を過ごせるというわけだ。

幽霊たちとの生活が嫌になったわけではない。むしろ今では貴重な体験だと日々楽しんでいる。

だけどいつも彼らのような存在といたら俺の常識はバグってしまうだろう。

ただでさえ最近ちょっと常識が危うくなっているのだからそこんとこ気をつけなくては。


「光、飯食おう」


「出たな。 諸悪の根源め」


「何の話だ」


つい口に出してしまった。

それにしてももうお昼か。まったく時間が経つのは早い。あと数時間でまた非常識空間に逆戻りだ。

もっとこの常識空間に浸っていたいがそうもいかない。

なぜならあの非常識空間を恋しがる気持ちもあるのだ。まったく自分の心ながらよくわからん。


「もう慣れたみたいだな」


「あいつらに? ・・・まぁあいつらがいないと物足りないと思うくらいにはね」


「それは結構」


ニヤニヤしながら啓は弁当を広げた。啓の弁当は見事なまでの日の丸弁当だ。

聞いた話だと啓がいる施設は金銭的にそこまで余裕があるわけではないらしい。

なのでお弁当が必要な子供は少しでも金の消費を抑えるため昨日の夕飯の残りを弁当に詰め持っていくのだが食べ盛りの子供たちがそう多く残すわけがない。

啓は「子供はたくさん食べて大きくならないといけない」と言って僅かな夕飯の残りを小さい子たちの弁当に全部詰めてしまうので基本彼はおかず無しだ。


「まったく・・・」


自分の弁当を開け、おかずをいくつか啓の弁当の上にのせた。


「いつも悪いな」


「それは言わない約束だろ」


これがいつもの光景だ。

教室にはほとんど人がいない。この学校は寮生活をする生徒が多い上に学食がうまいと評判なのでほとんどの生徒は学食に行っているのだ。

弁当を持ってくるのは家から通っている生徒か啓のように経済的にそこまで余裕がない生徒だけだ。

啓が食べ始めたのを見て自分も弁当に箸を伸ばす。

今日のおかずはミニハンバーグときんぴらごぼう。

おかずの種類が少ないと言われることもあるが男の手作り弁当なんてこんなものだろう。

食べるのが自分ならなおさらだ。


ふと、食べる手を止め窓の外を見る。

窓の外で鳥が飛び立っていくのが見えた。いつもと変わらない風景。

俺の生活が一変する前から変わっていない。平和そのものだ。


「どうした? 幽体離脱でもしてるのか?」


窓の外を見つめたまま動かない俺を不審に思ったのか啓が声をかけてきた。

どっから幽体離脱なんて発想が出てきたんだ。


「いやこんな平和な日常がずっと続けばいいなーって思ってさ」


「大丈夫だ。 突然バトル展開になったりはしない」


「何言ってんだお前」


春の陽気でおかしく・・・って、こいつの謎発言はいつものことだったな。


「ほら、漫画とかでたまにあるだろ? 最初は日常系コメディだったのに突然熱血バトルに路線変更したりとか」


「あー、あるな。 あれ正直意味わかんないんだよなー」


あれってよっぽどのことがない限り読者置き去りになるよな。

ちなみに俺はそうなった場合読むのをやめる。


「漫画ですら無理のあるような展開だ。 現実で起こるはずがない」


「まあ確かに」


日常がそんなふうに突然バトル展開になるようなことがよくあるのならもっと世界は荒んでいるだろう。


「いらぬ心配をするなってことだ」


「ま、それもそうだね。 もっともうちの霊たちにバトルなんてできるはずないか」


「霊・・・ですか?」


「こ、この声は・・・まさか!」


おおう、啓が近年まれに見るしかめっ面になっている。

珍しいもの見れたとひそかに笑いながら声のした方向をみるとそこにはクラスメートの南雲命なぐもみことがいた。

彼女は俺の幼馴染だ。ちなみに命ちゃんと啓は仲が悪いわけではない。今のはただの啓の悪ふざけである。


「久しぶり命ちゃん。 修行とやらは終わったの?」


「ええ、今回やるべき分は終わりましたです。 まさか学校が始まっても開放されないとは思いもしませんでしたが」


彼女の実家は歴史ある神社で彼女はその神社の巫女だ。つまり修行とは巫女としての修行である。

俺は少し前までは幽霊が視えなかったので巫女の修行といってもいまいちピンとこなかったのだが今ではある程度は想像がつく。

ちなみに今までは公欠扱いになっていたから出席日数の心配は無いらしい。


「それにしても光も視えるようになったのですね」


「まあね。 それにしても視えなかったのは俺だけだったのか」


「こればっかりは仕方が無い。 光も素質はあったけどきっかけがなかった。 それだけのことなんだから」


きっかけねえ・・・。俺の場合はあいつらがきっかけだったんだろうな。


「それでさっき幽霊がどうこう話してたみたいですがどうしたのです?」


「うちにいる幽霊のことを話してたんだ」


「光の家に幽霊がいるのですか? 危なくないのです?」


いやあいつらを危険視するほうがある意味危ないと思う。


「俺は危険だとは思わないが心配なら自分の目で見ればいい」


「それもそうです。 というわけで今日光の家に行きますです」


「ちょ・・・おま・・・」


決定事項か。まぁそれぐらいはいいか。どうせ特に問題もおきないだろうし。


「いざって時は修行の成果を見せてやるです!」


起きない・・・よね?つか起きないでください。被害あうのは俺んちなんだから。



――――


あっという間に放課後となりみんなで俺の家の前まで来た。


「とりあえず騒ぎは起こさないでね」


「善処するです」


確約しろよ。

不安に苛まれながらも我が家に入る。


「ただいまー」


「おう、おかえり」


出迎えてくれたのはニートだ。

今日も立派にセ○ムしていたようだ。杏はいつも通り居間にいるのだろう。


「お、その嬢ちゃんは初めて見るな。 みっちゃんが連れてきたってことは俺たちが視えるんだろう?」


「視えますですよ。 どうも初めまして、南雲命といいますです」


「俺は尾崎仁、みんなからはニートと呼ばれてる。 ソウルネームはニーヴェ・トリスタンだ」


「ソ、ソウルネーム?」


「聞き流せ」


それが人生を賢く生きる方法の一つである。


「そ、それはともかく彼は問題ないです。 あと何人いるですか?」


「二人だ。 どっちも人畜無害なやつだけどな」


「でもリーマンは仕事でいないよ。 杏は?」


「居間で体育座りしてるぜ」


いつもどおりか。

ニートが受け入れられたなら杏も受け入れられるだろう。あいつはニート以上の人畜無害だ。

そう思って居間に入ったのだが・・・。


「む! すさまじい負のオーラを感じるのです!」


「負のオーラ?」


「あれです!」


命ちゃんが指差した先にいるのは杏がいた。いつもと変わらず闇に包まれているのだが・・・まさか。


「いやあいつはあれで平常運転なんだけど」


「ああ、初めて見たときからあれだ」


「それではいけないのです! あれがどのような影響を及ぼすかもわからないです!」


「起こらないから! つかあんなひきこもりのオーラでどうにかなってたまるか!」


「わからないじゃないですか! 光が引きこもったら私はどうすればいいのですか!」


「引きこもらねえよ!」


ああ、くそ。啓とニートは面白そうに笑ってるだけで助けてくれないし、杏はそもそも現状を理解できてない。

孤立無援とはこのことか!


「このままじゃ埒が明かないです! とにかくそのオーラだけでも祓わさせてもらうです!」


そう言うと命ちゃんは符を取り出した。

ちょっと待て。お前は俺の家でバトルでもするつもりか!?


「まさかのバトル展開だと・・・」


「いや別にあの霊自体をどうこうする気は無いですよ!? とにかくええい!」


何故か驚愕している啓に突っ込みを入れてから命ちゃんは符を杏に向かって投げた。

ビシッと音がしたと思うと杏のまわりの闇が晴れ、額を押さえてぷるぷるしている杏の姿が現れた。

・・・お払いだとしても地味だなこれ。


「・・・いたい」


「杏、大丈夫? あー、額が赤くなってる」


杏はしばらく痛がっていたがキッと命ちゃんを睨むと彼女に近づいていった。

そして目の前まで行くと彼女の脛を思いっきり蹴飛ばした。


「~~~っっ!?」


「・・・おかえし」


うわぁ、今度は命ちゃんがぷるぷる震えてる・・・。つか杏容赦ねえな。


「まぁなんだ。 互いに一発ずつで済んでよかったな。 例えるなら開幕クロスカウンターで同時K.O.」


「その例え悪すぎるだろ」


この後なんやかんやで命ちゃんと杏は仲直りした。帰ってきたリーマンの紹介も済ませこれで全員の幽霊を紹介することができたので一安心。

それでも命ちゃんは俺が幽霊と暮らしていることに若干の不安があるようだったが「私がしっかり監視すれば問題ないですね」と納得したように頷いていたので問題ないだろう。

それからというもの命ちゃんも啓同様俺の家に入り浸るようになったのは些細なことだ。


次はちょっと長めの話でも書いてみようかな。

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