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お供え物をしてみる件について

だいぶ投稿するのが遅くなりました。

「どうぞ。 これ今月の給料です」


そう言ってリーマンが差し出したのは茶色い封筒。

ひと目で給料袋とわかる。だって封筒にそう書いてあるもの。

しかも平仮名で。ごっこ遊びか。

受け取って中身を見てみれば諭吉さんが1、2,3・・・30人ほどいた。


「幽霊にも給料って出るんだ……」


「家族ができたと言ったら上司が上に申請してくれまして」


「いい上司やね……」


そんな上司滅多にいないぞ?

そもそも幽霊な上司自体あんまいないんだろうけど。


「それとそろそろ幽休を取れと言われまして」


「有休?」


「ええ、幽休です」


「む、なんだか二人の間で意思疎通が若干ミスっているような・・・」


ニートがなんか言ってるのが気になるが有休か。なら今度学校が休みの時にでもみんなで出かけるかな。

それは置いといて今はこの封筒の中身が問題だ。


「どうするかね? 仕送りがあるからお金には困ってはいないし…」


家族が増えたといっても幽霊ばかり。死者の割合が75%の家族だ。

基本生活費はかからないのでこれ以上お金が増えても使い道が無い。

それにリーマンが稼いできたお金で好きなもの買うってのも気が引けるし……。


「あっ、そうだ!」


「なにかよい案でも?」


「リーマンが稼いだお金なんだし幽霊たち(みんな)で使ったらどうかな? 欲しいものがあったら俺が買うからさ」


「い、いえお世話になってるのにそこまでしてもらわなくても……」


まったく……リーマンは頭でっかちだなぁ。


「いいんだよ。 家族なんだから遠慮しないで」


「そうだぜリーマン。 せっかくみっちゃんがこう言ってくれてるんだ。 好意に甘えようぜ」


「甘えっぱなしのあなたが言いますか……」


そう言ってリーマンはため息を吐いた。

でもニート結構働いてるよ?セ○ム代わりになってるし。


「いいからいいから。ほらなにか無い?」


「いや……急に言われましても……」


急かすがなかなか思いつかないみたいだ。まぁ基本使うもん無いしね。

それはニートも同じでうんうんと唸っている。

お前はノリノリだったじゃねーか。なんで悩んでんだ。案ねーのかよ。


「……ご飯食べたい」


ボソッと呟きが聞こえた。杏だ。


「ご飯?」


「そーいえば幽霊になってから飯なんて食ってねーな」


「あたりまえですけどね」


ようやく出た案でニートとリーマンもそれで良さそうだけど・・・え?どうすりゃいいの?

幽体にご飯食べさせるとかかなり難易度高いんだけど。

悩んでも答えは出ない。ここは奴に助けを求めるしかあるまい。


おもむろに携帯を取り出しメールをする。

送り先はもちろん啓のところだ。


『件名:ちょっと聞きたいんだが


 うちの霊がご飯食べたいって言ってきたんだがどうすればいい?』


そーしん。

ちゃくしん。


『件名:Re:ちょっと聞きたいんだが

 

 お供えすれば?』


単純明快な答えが返ってきた。てか返信早っ。


「一応解決法ゲットしたし買ってくるか。 みんな何食べたい?」


「……プリン」


「お前こういうときは行動早いのな」


「……照れる」


褒めてねぇよ。


「まぁいいや。 リーマンは何食べたい?」


「いえ私は・・・」


「遠慮禁止! 生前よく食べてたものでもいいから」


「じゃ、じゃあゼリー飲料を」


「は?」


「生前はよく飲んでたんですよ。 ご飯の代わりになるってすごいですよね」


「まさか毎食それだったとかないよね?」


「そうですけど」


こいつそのせいで死んだんじゃねーの?過労と栄養失調とかマジ笑えない。


「ニートは?」


「キャビア!」


「滅するぞ」


高すぎだろ。つかあれ単体で食ってもうまくねーぞ。


「まあいい。 じゃ、買ってくるから」


しかしプリン、ドリンクゼリー、キャビア。なんだこの組み合わせ。


―――――――――



「買ってきたぞー」


「おかえりなさい。 道中何か問題はなかったですか?」


「店員に変な目で見られた以外にはないわ」


あれ地味に辛いね。知らない人ならなおさら。

あまりの精神的ダメージに思わず全力疾走して帰ってきたので精神的な意味でも肉体的な意味でももう限界だ。

言うなれば赤ゲージ。

あと一回敵に触れてしまったら前回セーブしたポイントからやり直すハメになるだろう。


・・・・・・何を言ってるんだ俺は。

どうやら酸素が脳に行き渡っていないようだ。そうだと信じたい。こんな思考がデフォルトになったらもうどうしたらいいのか。


「少し涙目になってるぜみっちゃん」


「泣いてない」


これは目の表面への栄養補給がちょっと過剰になっちゃっただけだ。


「ところで質問があるんだが」


「何?」


「なんで旦那がいるんだい?」


「エンカウントしたらついてきた」


すれ違ったのには気づいたけど家着いてから振り返ったらいるんだもの。軽くホラーだった。


「面白そうなことやってるみたいだから見なきゃ損かと思ってな」


「見せもんじゃねーぞ」


そもそも始まるのはただの食事シーンだ。


「さて、じゃあ早速お供えしてみようか」


とりあえず買ってきたものをそれぞれ皿の上に乗せる。

ぷっちんプリンをぷっちんする際、杏がすさまじく恨めしそうな目でこちらを見ていたが気にしないことにする。


「・・・・・・口惜しや」


・・・気にしないことにする。


皿を並べ啓と一緒に手を合わせた。

イメージはこう・・・お墓とかにお供えする感じで。


「どう?」


「変わりないように見えるが・・・」


見た目変化は無い。失敗か?


「ちょっと動かしてみるか」


啓がそう言うのでためしにプリンをスライドさせてみる。


「おお!」


「お供えってこういうものなんですね」


プリンをスライドさせた後にはなんと若干向こう側が透けて見えるプリンが!

これはプリンの・・・霊?食物に霊体ってあるの?

と、とにかくそれっぽいものが出現した。


「・・・いただきます」


真っ先に杏が飛びついた。

それからニートとリーマンもそれぞれ自分の食べ物|(透けてる)を持って食べ始めた。

幽霊の貴重な食事シーンである。


「そういえば残った本体のほうは・・・って本体どこいった?」


少し目を放した隙に買って来た食べ物がなくなっている。

ついでに啓もいない。あいつ何する気だ?


「おまたせー」


そんなことを考えているとタイミング良く啓が帰ってきた。

その手には皿が一枚。


「待ってないっていうかお前何を・・・」


ん?皿一枚?

元々あった皿は三枚。だが啓の手にある皿は一枚。

まさか・・・。


「キャビアのゼリー掛け、プリン添えだ」


「何作ってんだお前ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


キャビアとゼリーはあわんだろ!てかそもそもなんで合成することを思いついた!

それとなんでプリンが添え物なんだよ!そっちのほうがボリュームあるわ!

幽霊たちもドン引きしている。こいつはなぜこの世に存在してはいけないものを生み出すのか。


「はい」


「渡すなっ!!!」


「いいから食べてみろ。 俺プリン担当でいいから」


「良くねえよ! 逆にしろ逆に!」


結局余った食べ物は俺がプリン、啓が合体事故が起こったキャビアとゼリーを担当することになった。

皆が食べている横で消費していく。


「もぐもぐ・・・これゼリー掛けたキャビアみたいな味がする」


「まんまじゃねぇか」



―――――――――



「・・・おいしかった」


「ええ、久しぶりに食事の楽しみが味わえましたね」


満足してくれたようでなにより。


「物足りねぇ・・・」


当たり前だ。


「・・・また食べたい」


「ああ、別にいいぞ。 二人もなんか食べたいものがあったら言えよ?」


「はい。 ありがとうございます」


「頼むぜみっちゃん!」


これでみんなにも少し楽しみが増えたな。夕食なんかでも軽いものを用意するのもいいかもしれない。

あ、でも本体は俺が処理するんだよな・・・。

・・・・・・うん。たまにでいいか。






「くっ・・・次はこんな失敗はしない」


「お前はなにもすんな」


つかやっぱまずかったんだなキャビアのゼリー掛け。

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