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幽霊たちに名前を付ける件について

「えー、短歌とは五、七、五、七、七の構成であり――――」


国語の先生の説明が聞こえる。だが頭には入ってこない。

学校での授業中、俺はずっと悩んでいた。

先生の説明がまるで頭に入ってこないのもそのせいだ。

国語の先生は厳しいことで有名で話を聞いてないとバレると怒られるのは確実なのだが悩みがあるのだからしかたない。と自己弁護。

悩みとは先日、幽霊達の名前の話題を出したが結局解決せぬままうやむやになってしまったことだ。

まぁ自業自得なのだが。

もう一度話すにしてもいまいちきっかけが掴めない。

そしてまごまごしているうちに五日も経ってしまった。


このままではいけない。

何度も言うようだが闇に潜んでいる人は非常に呼びにくいのだ。日常生活に支障をきたすレベルで。

早急に手を打たねばならない。

だが現状、闇に潜んでいる人がどんな人……いや幽霊なのかわからない。

名前を付けるにしても俺の灰色の脳細胞ではアレを見て根暗とかヒッキーとかしか思いつかない。

そんな名前は我が家の駄目人間比率がだいぶ高い事を自覚してしまうので避けたい。

家族4人の内2人がニートと引きこもりって家庭捨てて逃げてもいいレベルだし。


ふとそこで思いつく。何も自分ひとりで考える必要は無いのだ。

そう、俺には頼もしい友人がいる!

幽霊たちとの生活について今までも幾度と無くアドバイスしてくれた友人が!(そもそもの元凶もそいつ)


今は授業中、だが少し会話するなら問題は無いだろう。

「後で相談がある」そう言うだけでいいのだ。怒られるいわれは無い。

そう結論付け啓のほうを向く。ちなみに啓は俺の隣の席だ。


「ZZZ……ZZZ……」


(ね、寝てるーーーーっ!!??)


まさかこの授業で寝るものがいようとは!

って驚愕している場合ではない。早く起こさなければ!


「おいっ! 城島なに寝てんだっ!」


遅かった。

先生の大声で啓はもぞもぞと身じろぎして目を覚ました。


「んー、ねむ……」


「寝ぼけてる場合か!? あの先生めんどくさいってお前も知ってるだろ!」


この先生は無茶振りをしてくることで有名かつ嫌われている。

例えば少しうたた寝しただけでまだ習っていないところの問題を解かせようとしたり。それでできないと嫌みったらしくなじってくるのだ。

しかも自分の学歴をやたら自慢してくることもありまさしくうざったい先生だとすべての生徒に認識されている。


「城島っ! 寝るってことは今教えてるところは完璧ってことだよな! 今この場で短歌を作ってみろ!」


「んーと、


  春の日に

  眠気覚えて

  目を閉じる

  後に悔やめど

  抗えぬもの 」


あっさり答えたーーーー!しかも妙に整っているーーー!

てかそれ今のお前のことだろ!


「いいですか先生?」


「あ、ああ。 城島……座っていいぞ……」


啓は座るとまた寝始めた。まだ寝るのかこいつ。

って、あ。約束取りつけるの忘れてた。

ま、いいか休み時間で。


「せんせー、城島君がまた寝てますけどいいんですかー?」


「いやもうね……あそこまで寝たいって意思を示されたらな……先生どうすればいいのかわからなくなっちゃったよ…………」


「せ、先生気をしっかり保ってください!」


余談だがこの一件以来国語の先生の人気が上昇したらしい。

なんでもなんだか親しみを持てるようになったんだとか。


ちなみに啓は休み時間になった途端に起きた。


「なあ啓、例のアレについてなんだけどさ。 相談があるんだ」


「まったく仕方ないな。 このゴミめ」


なんか罵倒された。

満面の笑みで言う言葉ではないぞそれ。


「そろそろ俺無しでもやっていけるようにしないと」


「いやそうは言っても……おいその顔やめろ。 なんでドヤ顔してんだお前」


なんでさっきから俺の神経を逆撫でするんだこいつ。


「おもしろいから?」


「思考を読むなっ! てかなんで疑問系なんだよ明言しろよ!」


「それは置いといて相談だな。 じゃあ明日お前の家に行くからそん時話してくれ」


切り替え早っ!

こっちが切り替えについていけんわ!

そう言おうとしたが啓はすでに眠っていた。


ほんと切り替え早いなこいつ……。

ため息をひとつ吐いてから次の時間の用意を始めるのだった。




そして次の日。


「ふむ、名前ねぇ……」


説明を聞いた啓は唸っていた。


「頼むよ。リーマンやニートはともかく闇に潜んでる人は正直なんて呼べばいいのかわからないんだ!」


結構切実なのである。



「いいの無いかな? 俺はネーミングセンス無いからどうせなら啓に付けてもらおうかなって。

 皆もいいよね?」


「ええ、構いませんよ」


「俺もいいぜ。 なぁ闇のもいいだろう?」


「うん……」


了承は得た!

さぁ、わが友よ!彼らに名前を付けておくれ!

ちなみに最初は闇に潜んでいる人だけでいいかと思ったがそれでは不公平なのでリーマンとニートの名前も考えてほしいと頼んだ。


「何そのテンション? てか俺まだ返事まだしてないんだけどな。 まぁいいか」


そう言うと啓は幽霊たちをじっと見つめる。

どうやら最初のターゲットはリーマンらしい。


「んー。 まずリーマンは……幸仁ゆきひとさん」


おお、案外普通だ。


「なんだかしっくりきますね……。 もしかしたら私の生前の名前と近いのかもしれませんね」


リーマンも満足してるらしい。

つまりリーマンのフルネームは一応尾崎幸仁となるわけだ。


「次はニート。 ……ニーヴェ・トリスタン「ちょっとまてぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 なんだよもう」


「何だよじゃないよ! なんで横文字なの!? ニートバリバリのジャパニーズじゃん!」


というか名前にニートって入ってるし!ミドルネームみたいのあるし!


「ちょっとしたこだわりさ」


「そんなこだわり捨てろ!

 いいからもっとまともな名前をね……」


「いや、いいぜ……」


「は!?」


ニートを見る。その顔はキンキラキンと輝いている。

コ、コイツッ……まさかっ……!


「最高にかっこいいじゃねぇか!」


「厨二病だこいつーーーーー!!!」


なんということでしょう。ニートは厨二病を患っていたのです。

というかそんな名前の人が身内なんて嫌だ。かくなるうえは!


「そんなの駄目だーーー!」


たとえ押さえつけても止めてやる!という気迫でニートに飛び付く。だが


「ぶべっ!!」


俺の体はニートに触れることができずにすり抜け床に顔面からダイブしズサーッ、ってなった。顔が痛い。ヒリヒリする。


「みっちゃん大丈夫かい?」


「クソッ! ニートが幽霊だということを忘れていた! 生き生きし過ぎなんだよお前ら!」


「そう言われましても……」


リーマンが苦笑いしている。

少しだけ惨めな気分になるがそんなことより今はなせねばならぬことがある!


厨二病をわずらっているという身内の驚愕の事実を涙と共に飲み込んでニートの説得にかかった。

長時間の説得と家主の権限を使った結果、ニートの名前はじんということになった。

心底ほっとした。身内があんな名前なんて耐えられない。

ちなみにニーヴェ・トリスタンという名前はソウルネームという扱いになったらしい。なんだソウルネームって。


「さて、ついに……」


ようやくこの時が来た。

ついに闇に潜んでる人の名前を決めるときだ。

果たしてどんな名前になるのか。固唾を呑んで見守る。


「闇・・・やみ・・・あん・・・杏・・・うんあんでいいか」


「あっさりぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


「ちょっと啓さん近所迷惑ですよ」


思わず叫んだらリーマン……いや幸仁さんに怒られた。でも叫ばずにいられるか。


「散々引っ張ってこれかよ!つか安直すぎるわ!

 そもそも男につける名前じゃないだろ!」


「何を言っているんだ」


そう言うと啓は杏(仮)にそばまで歩いていく。

そのまま闇の中に手を入れて杏(仮)をつかんだ。


「ちょ、おま」


なんで掴めるの!?さっき俺ズサーッ、ってなったのに!

その疑問を口にする前に啓はずるりと闇の中から手を引き抜いた。


その手には少女。

少し暗い雰囲気だが見た目至って普通のどこにでもいそうな黒髪の少女だ。

だがそれは紛れも無く闇に潜んでいた人で……。


「へ?」


「こいつ女だぞ」


数秒の沈黙。

そして――――――――


「「「えええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」


絶叫。なんかデジャヴ。

なんか先日から驚きっぱなしだった。

まぁ何はともあれ幽霊たちに名前をつけることができたから一件落着だろう。

さぁこれからは新たな名前で心機一転だ!



翌日


「ねぇ、ニート・・・って、あ」


「……慣れませんね」


「今までどおりでいいんじゃねぇのかい?」


結局二人は今までどおりリーマンとニートと呼ばれるようになった。

あとで登場人物紹介でも書いておこうかな。


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