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オレは舞う。たとえこの身が朽ち果てようとも  作者: 沙φ亜竜
第6章 オレは孤高のファイターだ!
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-1-

 クリオネ型のアストラルシャドーを退治したあと、オレたちはすぐに公園をあとにした。

 実のところ、すでに限界を超えているだろうに、水上アスレチックなんかもあると知った紅有さんが、そっちも試してみたいと駄々をこねたりはしたのだが。

 オレの体力ももたないし、時間的にも無理があるので諦めてもらった。


 そんなアスレチック公園からの帰り道。

 駅へと向け、三人並んで歩いていた。


 力が戻ったのだから、紅有さんがオレとなるべく一緒にいる理由はなくなったわけだが。

 それでも、いつもで電話で呼び出してくれていいですわ、と言ってもらえた。


 ただ、登校時に家まで迎えに来たり、下校時に家まで送ってくれたり、といったことまでしてもらう必要はなくなったため、それはやめてもらうことにした。

 紅有さんはこちらも、べつに構いませんのに、と言ってくれたのだが。わざわざ遠回りしてもらうのは、こちらとしては心苦しい。


「休みの日には今日と同じように、また一緒にどこかに遊びに行ったりしてもいいですわよ! 感謝しなさい!」


 両手に腰を当てて胸を張るお決まりのポーズで、紅有さんは高圧的に言う。

 どうやらアスレチック公園を随分と気に入ってくれたようだ。

 水上アスレチックにも興味を持ったみたいだし、なによりオレ自身も今日は楽しかった。

 また三人で遊びに行ってもいいだろう。どうせ、電車で三十分とかからない場所にあるのだから。


「ところでさぁ~……」


 疲れもあってか会話が途切れがちになっている中、不意に眠人が口を開いた。


「なにか忘れてるような、そんな気がするんだけどぉ~」


 仮にも男だというのに、三人の中で一番疲れきった眠そうな口調。

 アスレチックに興じていた時間だって一番短かっただろうに。もう少々体を鍛えたほうがいいのではなかろうか。

 と、そんな余計なことはこの際置いておくとして。


「忘れてること……ですか?」


 紅有さんもかなりつらそうな表情で考えを巡らせている。

 この様子だと、本当に明日一日ダウンしてしまうのかもしれない。


「忘れてること、忘れてること――」


 オレ自身も、疲れによって脳ミソの働きが完全に鈍っている頭をフル回転させ、どうにかこうにか考えてみる。


「……そうだ、オレたちを探っているかもしれない、怪しげな奴ら!」


 言われて、眠人も紅有さんもハッとなり、周囲に視線を配り始める。

 人はちらほらといる。アスレチック公園帰りの子供たちや親子連れなどが多いだろうか。

 怪しげな人影や視線などは、とくに感じられない。

 だが……。


「なにか……来る……?」


 眠人のつぶやき。

 それに合わせるかのように、本当に来てしまった。

 オレたちに視線を向けていた怪しい奴らが、ではない。

 またしても、アストラルシャドーが襲撃してきたのだ!



 ☆☆☆☆☆



 現れた影が変化した姿は、ゲル状の物体。

 スライムのような感じと表現するのが、一番わかりやすいだろうか。

 確か、紅有さんのもとに現れるアストラルシャドーがそういう形状を取ると、以前聞いたような気がする。

 とするとこれは、オレの敵というよりは、紅有さんの敵ということになるのか。


 そう考えたのは紅有さん本人も同じだったようで、すかさず腕を振り抜き、スライム状になった影の一体に向けて鋭いかまいたちを放っていた。

 おそらくは、一撃で敵を粉砕できるはずの、強烈なかまいたち。

 しかしスライムは消えることも切り裂かれることもなく、ぷるるんとその身を揺らすに留まった。

 つまり、これは――。


「飛鳥さんのもとに現れたアストラルシャドーのようですわね」


 紅有さんの下した結論に、オレも大きくひとつ頷いた。

 敵の数は、いつもどおり多い。ゆっくりと相手の出方を待っていては、不利になるのは必至。

 オレは素早く動いていた。


 紅有さんの支援もある程度はあてにできるだろうが、基本的にはオレ自身でどうにかしなければならない。

 力が戻った現在、眠人を投げつけて武器にするという手段は使えないことになる。

 となると、自らあのスライムに組みつき、投げ飛ばすべきか。

 考えると同時に、相手のふところ(と呼べる部分がスライムにあるかどうかは疑問だが)の辺りに潜り込み、両手を伸ばして抱え上げる構えに出る。


 つるんっ!

 作戦は失敗に終わった。

 ぬるっとしたスライムを、そう易々と抱えることなどできはしなかったのだ。


 すぐさま方針転換、蹴りをかまして地面に転がす戦略へと切り替える。

 ともあれ、それも空振りに終わる。

 足は空振ることなく、スライムに当たりはした。ただ、やはりつるりんと滑って弾かれてしまったのだ。

 逆にこちらのほうが転んでしまいそうになるのをどうにか堪えつつ、懸命に体勢を整える。


 相手をもう一度よく観察してみる。

 スライムのようなゲル状物体。

 某ゲームのように可愛らしい顔なんかがあるわけではないものの、形状としては似ているだろうか。頭頂部のツノのような突起も存在してはいないが。

 すなわち、単なる楕円形。重力の関係で下側のほうが広く横に膨らんでいるだけだ。


 弾力性が高めな球体状のゼリーみたいだ、などと考えると美味しそうにも思えてくるが……。

 地面に転ばせるなんて芸当自体が、どうあがいても不可能なように思えた。


 それにしても、どうしてスライムなのだろうか。

 オレのもとに現れるアストラルシャドーは、精神を読み取り反映するのか、嫌いなものの姿を取るのが常だった。

 しかしオレはべつに、スライムを嫌いだとも怖いとも思ったことがない。それどころか、某ゲームの影響もあり、愛らしいとまで思っていたくらいだ。

 それなのに、なぜ……。


 紅有さんから聞いた話の中に、服を溶かされるというトラウマがある、といった内容があった。

 それを無意識にイメージしてしまい、嫌いなものとして反映されてしまったのか。

 それとも、このところ紅有さんにもかまいたちで手助けしてもらっていたことで、オレだけではなく紅有さんの深層意識をも反映するようになってしまったのか。


 もしくは、オレたちの周りでこそこそと隠れて様子を探っている怪しい人物が、実はアストラルシャドーを知っている関係者だという可能性もありえるのか?

 なんらかの理由でオレたちを排除しようと考え、現れるアストラルシャドーを強めたり性質を変えたりする特殊な電波を送信しているとか……。

 最後の想像は、さすがに考えすぎの妄想でしかないとは思うが……。


 どうであれ、今は理由を追求している暇などない。

 襲いかかってくるスライム型のアストラルシャドーを滅するのみ!


 たかだかスライムだ。

 某ゲームでは、最初に現れるザコでしかない!

 オレは気合いを入れ直し、スライムたちをまとめて相手にすべく、低く構えを取った。


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