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作者: 一般読者

数年前のことです。


あの日、私は休みで何ヵ所か書店をはしごしていました。


それでもう、4時頃でしたね、向こうから喪服で歩いてくる男がいたんですよ。


真夏の暑い日でした。


まあ、真夏ですから、お互いに汗でベタベタ、相手は喪服ですからそれはすごいんですよ。


大変だなあ、って見てたんですね。


で向こうがこっちに気付いたんですよ。


ああ、ヤバイなあって思いながら。私はまあ臆病な人間でしてやっちまったなあ、どうスッかなあ。


すると向こうがこっちに向かって歩いてくるんですよ、そしてねお前鈴木じゃないかって、言うんですよ。


私は驚きました、喪服の相手は高校時代の友人だったんですよ。久し振りじゃないかって言って近くのコンビニの飲食コーナで、卒業後の色々なことを話していました。


でしばらく話して盛り上がりまして、話していくうちに友人の表情が柔らかくなったんで聞いたんですよ、今日どうしたんだ?って。まあ、失礼だとは思っていたんだけどね、聞いたんですよ。


そしたらポツポツ話してくれたんですよ。


友人が言うには死んだのは、彼の兄さんのお嫁さんで、何ヵ月か前から体調を崩していたらしく、医者からも匙を投げられていたそうです。


でも、体調崩した理由が変なんですよ、寒い寒いっていうんです。寝ながら。真夏ですよ。7月の終わりごろ、毎日30℃は行くような天気の日でも。しかも私じゃない私じゃないとか助けて助けてって、それが始めの頃で死の寸前じゃあもう、呪詛っていうんですね、私じゃ無いのにあいつ・・・あいつよ・・・あいつがいけないのよってぼうっとした表情、視点が合っていないんで不気味で仕方なくって友人は見舞いに行っていなかったんですよ。


でそのあとしばらくして死んでしまったんですが、もう体はがりがりで髪はぼさぼさ、見ていられなかった。って言ってるんですよ。


でも、問題はそれじゃあないんですよ。


わたしはその死んでしまったお兄さんのお嫁さんと面識があったんですよ。


で人の顔をね、私は余り覚えられ無いんですよ。


でもね、その人だけはすごく記憶に残っていたんですよ、その顔が、向こう。


道路の向こうからこっち見てるんですよ。しかも私じゃなくて、友人の事ををじぃっと、これでもかっていうぐらい見てるんですよ。じぃっと。


そのときはそこで別れて、次にあの友人と会ったのは彼の葬式でした。


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