そういう年頃
「よろしくー」
中学一年生のとき、私は初めてあいつと隣の席になった。
その頃は、ただのクラスメイトとしか思っていなかった。
けれど、一緒に話すうちに、私たちは自然と打ち解けていった。
ふざけ合って、笑い合って、気づけばいつも一緒にいるようになっていた。
小学生の頃から異性が苦手だった私にとって、初めてできた“男友達”だった。
だから、単純に嬉しかったのを覚えている。
授業中は隣の席でちょっかいを掛け合い、笑っては先生に怒られる。
休み時間になっても、私たちは飽きずに話していた。
そんな私たちを、クラスメイトは聡く見ていたらしい。
中学生なんて、男女が仲良くしているだけですぐ恋愛に結びつける年頃だ。
当然のように、私たちもクラスの噂になった。
「あいつと付き合ってるの?」
放課後の帰り道、友達にそう聞かれて、私は呆れながら答えた。
「そんなわけないでしょ。あいつは友達」
「そうなんだ。結構みんな噂してるよ」
その言葉に、少しだけ胸が引っかかった。周りから見れば、私たちはそんなふうに見えていたんだ。今まで忘れかけていた、あいつが異性だということに気が付かされた瞬間だった。
次の日の朝。いつも通り、隣の席のあいつに挨拶をした。
それなのに、彼と目が合った瞬間、“いつも通り”が崩れた。
胸がざわつく。なんだか落ち着かない。
『あいつと付き合ってるの?』
不意に、昨日の友達の言葉が頭をよぎる。
いや、そんな感情、一ミリもなかったはずなのに。
ああ、だめだ。目が離せない。
「おはよ」
あいつはいつも通り、私にそう言った。
でも彼のその言葉が、昨日よりも特別なものに聞こえて。
それから私は、あいつに溺れていった。
どこにいても考えてしまう。意識すればするほど、息が苦しくなる。
少し話せただけで、その日は世界でいちばん幸せなんじゃないかと思えた。
今なら分かる。
あの頃の私も、そういう年頃だった。
あいつへの恋は、周りに影響されて気になり始めたのがきっかけだった。そんな簡単なお年頃だった。
あの頃は、この恋をどうしていきたいかなんて考えずに楽しんでいた。
だから、中学一年生の私はまだ知らなかった。
そんな小さなきっかけで始まった恋に、青春のすべてを捧げることになるなんて。




