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あいつ

そういう年頃

作者: 末摘
掲載日:2026/05/13

「よろしくー」


中学一年生のとき、私は初めてあいつと隣の席になった。


その頃は、ただのクラスメイトとしか思っていなかった。


けれど、一緒に話すうちに、私たちは自然と打ち解けていった。

ふざけ合って、笑い合って、気づけばいつも一緒にいるようになっていた。


小学生の頃から異性が苦手だった私にとって、初めてできた“男友達”だった。

だから、単純に嬉しかったのを覚えている。


授業中は隣の席でちょっかいを掛け合い、笑っては先生に怒られる。

休み時間になっても、私たちは飽きずに話していた。


そんな私たちを、クラスメイトは聡く見ていたらしい。

中学生なんて、男女が仲良くしているだけですぐ恋愛に結びつける年頃だ。

当然のように、私たちもクラスの噂になった。


「あいつと付き合ってるの?」


放課後の帰り道、友達にそう聞かれて、私は呆れながら答えた。


「そんなわけないでしょ。あいつは友達」


「そうなんだ。結構みんな噂してるよ」


その言葉に、少しだけ胸が引っかかった。周りから見れば、私たちはそんなふうに見えていたんだ。今まで忘れかけていた、あいつが異性だということに気が付かされた瞬間だった。


次の日の朝。いつも通り、隣の席のあいつに挨拶をした。


それなのに、彼と目が合った瞬間、“いつも通り”が崩れた。


胸がざわつく。なんだか落ち着かない。


『あいつと付き合ってるの?』

不意に、昨日の友達の言葉が頭をよぎる。


いや、そんな感情、一ミリもなかったはずなのに。


ああ、だめだ。目が離せない。


「おはよ」


あいつはいつも通り、私にそう言った。

でも彼のその言葉が、昨日よりも特別なものに聞こえて。


それから私は、あいつに溺れていった。

どこにいても考えてしまう。意識すればするほど、息が苦しくなる。

少し話せただけで、その日は世界でいちばん幸せなんじゃないかと思えた。


今なら分かる。


あの頃の私も、そういう年頃だった。

あいつへの恋は、周りに影響されて気になり始めたのがきっかけだった。そんな簡単なお年頃だった。

あの頃は、この恋をどうしていきたいかなんて考えずに楽しんでいた。


だから、中学一年生の私はまだ知らなかった。


そんな小さなきっかけで始まった恋に、青春のすべてを捧げることになるなんて。


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