第十六章 贖罪の道
戦場は、まだ炎と硝煙に包まれていた。瓦礫の山、血に染まった地面、そして数千の兵士───すべてが、オルランドを中心に回っているかのようだった。彼は、ドゥリンダーナを握って立ち止まる。剣先には、まだ狂気の残滓が宿る。だが、今の彼はわざと、兵士たちの怒りを買うように振る舞う。
「おい、こっちを見ろ!この程度で止まると思ったか!」
刃の動き一つで、兵士たちの眉間に緊張を刻み、数千の憎悪を自らに向けさせる。兵士たちは咆哮し、怒りに満ちた足音が迫る。その真っ只中、アストルフォが駆け寄る。
「オルランド、やめろ! まだ止まれるんだ!」
必死の呼びかけに、オルランドは微笑む。しかしその微笑は、悲しみを秘めた決意のものだった。アストルフォは友を止めようと槍を伸ばすが、オルランドの速度と距離感を前に、あっという間に気絶させられる。彼の体が瓦礫の上に崩れ落ち、息をつく暇も与えられない。オルランドは静かに、ドゥリンダーナを地面に置く。それは、もはや自分の戦いのための武器ではない。託された愛の象徴を、今、自らの手で返す瞬間だった。この剣は、アストルフォが受け継いでくれ、そう願った。
「……これで、終わりだ。」
低く呟き、剣から離れる。彼はそのまま、怒れる兵士たちの中へと踏み込む。注目を集め、大勢の兵士が彼を取り囲み、突き刺す、切り裂く、殴打する───剣も槍も、銃も、すべてがオルランドを斬る。だが、彼は避けない。受ける。耐える。一撃一撃が体を打ち抜き、血が滴り落ちる。骨が砕け、筋肉が裂け、血の感覚だけが残る。怒りと憎悪に満ちた兵士たちは、次々と刃を振るい、撃ち、投げる。だがオルランドは歩みを止めない。一歩、一歩、自らの罪を背負うように前へ進む。最期の瞬間、彼は微笑む。狂気も、怒りも、破壊も、すべてを手放すように。目の前には、彼を憎む者たちの顔。だがその顔のひとつひとつに、彼は謝罪の思いを送る。そして、最後の一撃を受けた瞬間、体は瓦礫と血の上に崩れ落ちる。オルランドは死んだ。背中に刺さった何本、何十本の武器は、彼が背負って旅立った罪を表しているかのようだった。彼が倒れたことで、兵士たちは歓声を上げる。
だが、アストルフォの周囲で、血に塗れた瓦礫の中で、空虚だけが彼を包む。ドゥリンダーナは、そこに静かに横たわる。かつて託された愛と、そして最後の贖罪の証として。世界は変わらない。だが、彼の罪を背負った者の物語は、ここに終わった。オルランドの影は、もはや誰も恐れない。ただ、悲しみと静寂だけが、残された。




