───アストルフォ私記 某月某日
今日は、きっと一生忘れられない日になる。
オルランドが結婚した。あの、誰より優しくて、誰よりも不器用で、そして───少しだけ壊れやすかった友が、ついに「幸せ」をその手で掴んだのだ。
式は大きなものじゃない。華やかな楽団も、貴族の列席も、豪華な装飾もない。けれど、不思議なくらい温かかった。
小さな灯りの下で、新婦は静かに微笑んでいた。遠い場所から来た姫だというのに(身元が不安で調べたと言うのはオルランドには内緒にしておこう)、今はただ、一人の花嫁としてそこに立っていた。
オルランドは───驚くほど穏やかな顔をしていた。
勝利した戦場でも、依頼を達成して報酬を受け取った時でも、あんな表情は見たことがない。きっとあれが、本当の彼なのだろう。
指輪を交わす手が、少し震えていた。それを見て、私は笑いそうになった。同時に、泣きそうにもなった。
……よかったな、オルランド。
お前は、たくさん背負いすぎていた。誰にも見せず、誰にも預けず、ただ一人で抱え込んできた。
でも今日、その半分を───いや、きっと全部を、あの人が受け取ってくれたんだろう。
式のあと、少しだけ酒を飲んだ。リナルドは相変わらず騒がしく、ブラダマンテは静かに笑っていた。そして主役の二人は、ただ隣に座っているだけで満ち足りていた。
それで十分だ。それ以上、何もいらないと思えるほどに。
───どうか。どうかこの時間が、長く続きますように。
戦いも、過去も、罪も、すべて遠くへ消えて、この小さな幸せだけが残りますように。
……いや。願うだけじゃ足りないな。
もしまた嵐が来るなら、そのときは今度こそ、私も隣で剣を抜こう。
友として。祝福した者として。
今日は本当に、いい日だった。




