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事故死したので異世界に転移しますが、管理者のミスなのでアメリカの店ごと持っていくことにしました  作者: だい


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第9話:消えた光



大岩村に戻ったのは、夕方だ。


ガルドで見た匂いが、まだ鼻に残ってる。

金と欲と、都合のいい正義。


あれを吸ったら、次は俺も同じだろうなって思ってた。


森の縁にバギーを出して、村までは歩く。


門の見張りがいないな。

柵の外に、犬みたいな獣が二匹いて、俺を見ると逃げた。


広場に入る。


人は少ない……いや、いるか。

いるのに、目が合わない。


合う前に逸らされる。

いったいなんだってんだ?


俺は、広場の端を見る。

そこには柵のある小屋がある。

昨日、手を振ってくれた子がいた場所だ。


足が勝手に向いた。

こういう時、揺らぎに戻って落ち着く?

今はいらない、今は、ちゃんと感じたい。


柵の近くで思わず鼻を押さえた。

汗と獣脂だけじゃない匂いが混じってる。


「……マジかよ」


中を覗いてみた。


暗い床に、獣人の女が倒れている。

小さな子を抱いたまま、二人とも動かない。


腕の中は昨日の子。

手を振ってくれた、あの子だ。


「おい、ちび。…冗談だよな?」


返事はない。

女の目は焦点が合ってない。

子の唇は乾いて、頬が白い。


俺は、子の首に指を当てた。

鼓動が分からない。


冷たい、冷たくて硬いんだ。


「俺……何してたんだろ」


胸の奥が、ぎゅっとなる。

泣くとか、叫ぶとかじゃない。


体が固まって、視界だけがクリアだ。

そして、頭は冷静に状況を考えてる。


便利だな、パニックにならないって。

感情が直ぐ揺れないのが、今は助かる。


背後で足音がした。

振り向くと、村長と取り巻きがいた。


昨日、俺に愛想笑いしてた連中。

ケモ度高めで体格もいい。


村長が肩をすくめた。


「捨てた。価値が落ちたからな」


言い方が軽い、軽すぎるだろ。

俺の中で何かが、カチッと鳴った。


「……捨てた、って。子供もか?」


村長は鼻で笑った。


「人間、その呼び方はよせよ」

「こいつらは商品だ。売れないなら、いらん」


取り巻きが笑う、誰かが言う。


「人間が拾えよ? 今なら捨て値だ」


笑えない、叫びもしない。

疲れるし、今はそんな気分でもない。


「なるほど。じゃあ確認なんだけど」


俺は村長を見る。


「いらない奴は、殺していい?」


そういう理屈で、合ってるよな?


村長が口を開きかけた。


収納からショットガンを出す。

見せる気はなかったけど、まあいいや。


武器を知らせない利点?。

みんな殺すし、どうでも良いよな。


「じゃあ、お前らもいらないよな?」


村長の膝が砕けた、頭にもう一発。


取り巻きは固まってる。

そりゃ理解が追いつかないだろな。


次。

左の男、右の男。


逃げようとした背中にも、二発。


俺は淡々と広場の獣人を撃つ。

こんなのただの処理だ。


処理を止める理由が、ない。


五人、六人。

広場が大分静かになったな。


十人目で胃が捻れた。

遅れて来る、人殺しの気持ち悪さ。


これが人を殺す感覚か。

ああ、ちくしょう、嫌だな。


でも手は止まらない、止めない。


一人が泣いて縋ってきた。

足に触れようとする、気持ち悪いな。


「触んなよ、お前と俺、今最悪に汚い」


言い訳みたいな台詞が出た。

撃って、息を吐く、胃の中の物も。


「……終わりでいいよな」


死体を置いて、獣人どもは消えていた。

銃を収納に戻す、血の匂いが濃い。


なのに村の空気が少し軽い気がする。

余計に腹が立つ、最悪の冗談だな。


俺は小屋へ戻る。

中には、まだ生きてるのが五人。

いや、「生きてるっぽい」が五人だ。


動けない、声も出ない。

目だけが、こっちを見てる。


助けを求めるというより、上の命令を待つ目。


ああ、そうなのか。

こいつらは「自分で決める」を知らない。


決めたら殴られる世界で生きてきた。

そりゃあ、そうなるよな。


俺は揺らぎを出した。

薄いオレンジが滲んで、空気が軽くなる。


「生きたいなら入りなよ」


言ってから、すぐに言い直す。


「違うな。入りなよ、じゃないな」


「触れろ。指一本でいいから」


俺は一人目の手を取って、境界に当てた。


一瞬で肌の色が戻る。

呼吸が深くなる、目が開く。


二人目、三人目、四人目も同じ。


触れた瞬間に、全部戻る。

予想通りだが、思わぬ実証実験が出来た。


最後は、さっきの子と抱えてた女。


抱えた腕が硬い。

目は虚ろで、息が見えない。


俺は手を持って境界に触れさせた。


次の瞬間。


「……ご、ほっ!」


女が咳き込んだ。

空気を吸って、胸が上下する。


「ああ、戻った」


思わず笑って、すぐ腕の中を見る。


子は動かない。

境界に触れても、変わらなかった。


「くっそ、なんだよ…」

「そりゃそう、か…」


死体は直らない。

だが、仮死状態なら届く。

心臓か脳が終わってなけりゃ、修復できる。


そういう線引きらしい。


この子は、線の向こうだったらしいや。


俺は子を撫で、抱き上げようとした。

だけど軽い、軽すぎて抱けないよ。


胸が熱くなる。

でも、泣き切れない。

温度が足りない。


それでも、ちゃんと嫌で悔しい。

その感情があるのが、今はありがたい。



子の母は、動かない子をただ見ている。


残りも全快してるのに座り込んでいた。

頭が追いつかないんだろうな。


俺は言う。


「あんた達は捨てられたんだって」

「だから、俺が拾ったよ」

「面倒は見る、飯も寝床も服もさ」

「嫌なら逃げていいよ、逃げ方も教える」


誰も動かない。

命令待ちのまま、俺を見る。


「……まあいいか」


俺は肩をすくめた。


「ちょっと待っててな、ここは終わりだ」


村に散らばっている死体を収納していく。

弔う気は全くないが、痕跡は消したい。


この村がどうなっても、気にしない。

だが死体から、銃の事がバレても嫌だ。


死んだ奴隷たちは、森に葬ろう。

あの子の墓は、可愛い花を植えよう。


揺らぎを大きく開く。

五人は吸い寄せられるみたいに越えた。


俺も続いた。


揺らぎの中は無音で安全。

それだけで、息が抜ける、安心できる。



心臓が遅れて騒ぎ出した。

気持ち悪さも、まだ残ってるな。

残ってるのが、むしろ助かる。


俺は小さく笑った。


「次はもっと上手くやる」

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