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事故死したので異世界に転移しますが、管理者のミスなのでアメリカの店ごと持っていくことにしました  作者: だい


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第7話:濁ってる世界、光の子


朝七時。

俺は揺らぎの外に立ってた。


感情を残すか、真っ平にするか。


その選択肢があるだけで、

昨日より気分がいい。


「よし、今日から残す」


別に熱血になりたい訳じゃない。


でも、嬉しいとか嫌だとかを、

ちゃんと持てるなら持ってたい。


俺はロボットじゃないはず。


店に戻って装備を整える。

と言っても、防具は着ない。


あれじゃ行商じゃなくて、

まるで世紀末の人間だもんな。


俺がなるならジ〇ギかな。

ケン〇ロウもラ〇ウも、

意識高すぎてちょっと……。


あの悪党ムーブさえ

無けりゃだけどね(笑)


カーゴパンツとシャツ。

腰にナイフ一本。

見た目「変な旅商人」で十分だろ。


バギーは収納に突っ込んだまま。

今日は徒歩で村へ入る。

その方が揉めにくい。


森を抜け、柵が見えた。

見張りの狼男が俺を見つける。


「また来たか、人間」

「三日かかるって言ったけど、

 二日で飽きた」


俺は軽口を叩いて、

リュックを持ち上げた。


「今日は前より多いぞ」


門の中に入ると、視線が刺さる。


昨日より集まるのが早い。

やっぱりこの村、物に飢えてる。


俺は布を敷いて、品を並べた。


針、糸、石鹸、塩。

ハサミ、包丁、鋼ナイフ。


小さなガラス瓶と、香辛料の小袋。

火打ち石も二つ。


ついでに金属のスプーンも出す。

この世界、カトラリー弱そうだし。


「それは?匂いが強い……」


獣人の女が鼻をひくつかせる。


「これを振ると」肉がうまくなる」


そう言うと、目がキラっとした。

食い物は正義だ。


交換は毛皮と干し肉。


塩は値段が跳ねる。

塩を小分けにして正解だった。


俺、商才あるんじゃね?


話しながら、情報を拾う。


狙いはガルド。


役人の通行証、賄賂の相場。

関所の癖。

この世界の「現実」だ。


「ガルドは近いか?」


聞くと、若い奴が肩をすくめた。


「行けるのは偉い奴だけだ」

「偉い奴って誰だよ」

「ケモ度が高い奴」


あー、そういう感じね。


その時だ、広場の端。

例の小屋の方で、何かが動いた。


小さな影、子供だ。


耳と尻尾はある、ケモ度は低い。

服はボロで、髪はぐちゃぐちゃ。

でも目だけは妙に大きい。


俺と目が合った、逃げる。


……と思ったら、柵の影から、

ちょこんと手が出た。


小さく、手を振った。


「……おお」


声には出さない。

出したら、誰かが気付く。

布の上で品を整えるフリをして、

指先だけ動かした。


小さく、返す。


それだけで胸が軽くなった。


あ、俺、まだ人間だわ。

こういうの嬉しいって思える。


嬉しいが、同時に嫌な感じもする。

あの小屋は商品棚だ。


子供がそこにいる時点で、

まともじゃない。


昨日の「ナイフ一本で一匹」

の言い方が、また蘇る。


ついでに気付く。


あの小屋の影、女と子供ばっかだ。

男が見当たらない。


俺は近くの婆さんに、

さりげなく聞いた。


「男は?男の子も?」


婆さんは肩をすくめた。


「金にならん」


それだけだ。


今は飲み込む。

そんな自分が、ちょっとムカつく。


「…なるほど。こりゃ少しづつ

 こうして腹が立つんだな」


内心で毒づく。

でも今は買い物の最中だ。

俺は行商の仮面を被る。


しばらくして、村長が現れた。

相変わらず、値踏みの目だ。


「昨日の続きはどうだ、旦那」

「商売は順調だ」


俺は笑わずに言う。


「ガルドへ行く道の話を聞きたい」


村長はすぐに察した。


「通るには関所がある」

「賄賂か?」

「賄賂だ」


即答かよ、清々しいな。


「誰に渡す?」

「税吏の副官がいる」

「名前は?」


村長は口をつぐむ。

代わりに俺のナイフを見る。


「……一本追加で教える」

「高いな」

「安い。命が守れる」


まあ、正論だ。


俺は鋼ナイフを一本、

布の下から差し出した。


村長が掴み、満足げに頷く。


「副官はラドンという」

「ラドン、ね」


覚えた、忘れない。


「ガルドの門は人間がうるさい」


村長が笑う。


「獣人は都合のいい時に使われる」


うん、知ってる。

昨日の小屋で十分わかった。


俺は頷くだけにして、話を切った。


長居は危険だ。

感情も、変な方向に積み上がる。


帰り際、広場の端をちらっと見る。


柵の影の子供は、もういない。

手を振ってくれた記憶だけ。

少し暖かい記憶と気持ち。


「よし」

俺は心の中で言った。


この嬉しさが明日も残るなら、

俺はまだ折れない。


リュックを背負う。


交換した毛皮と干し肉は、

本当は収納に放り込みたい。

…面倒くさい。


門を出る。

森の縁でバギーを出す。


出したら騒がれるから、

村から距離を取ってからだ。


走り出しながら、俺は一度だけ笑った。


「よーし、ガルド行くぞ」


面倒くさい世界だ。

でも、攻略すればいい。


俺は確認厨だし、チート持ち。

何より、まだ人間だ。


手を振ってくれた。


それだけで、

今日の俺は前に進める。


明日の七時も外に出る。

この「嬉しい」を残すために。


残せるって分かっただけで、

気持ち悪さよりメリットをとる。

そういう所が、俺だ。

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