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事故死したので異世界に転移しますが、管理者のミスなのでアメリカの店ごと持っていくことにしました  作者: だい


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第59話:不死身のゾンビと、猫の贈り物

一触即発の空気が、

 老紳士の枯れた声で

 霧散した。


「……待ちたまえ、司令官殿」


 国軍兵士の列を割り、

 現れたのは

 ガンディアの領主だった。

 

 彼は足元に転がる

 バルトロ伯爵の首と、

 俺たちの背後に控える

 異様な兵器群を

 交互に見比べる。


「彼らを処刑すれば、

 この街を守る戦力は減ってしまう。

 ……マツシタ殿。

 取引といこうじゃないか」


 領主の提案は、

 あまりに現実的で、

 そして狡猾だった。


 伯爵殺害の罪は不問。

 

 その代わり、

 国境を越えて迫りくる

 「帝国軍」と

 「隣領の残存部隊」を

 食い止めてほしい、と。


「……街のためじゃない。

 俺たちの平穏のためだよな」


 俺は頷いた。

 どうせ敵は、

 この街を蹂躙しに来る。

 俺の家族を害する奴は、

 どこのどいつであろうと、

 何をしてでも排除する。


 皆で生きる時、

 俺たちはそう決めたんだ。


   ◇


 迎撃地点となる丘の上。

 眼下には、

 地平線を埋め尽くすほどの

 数千の軍勢が迫っていた。


 だが、こちらの陣営には

 悲壮感など欠片もない。


「……本当にやるの?

 その、常識外れな作戦」


 ニナが頭を抱えていた。

 彼女の視線の先には、

 殺る気満々の

 レオナ、シキ、ミケの

 三人が並んでいる。


「ニナ姉さん、平気だにゃ!

 危なくなったら、

 ブンペイが『揺らぎ』に

 引きずり込めばいいにゃ!」


 ミケが軽い調子で言う。

 それはつまり、

 「死なない」ことを前提にした

 特攻作戦だ。


「防御を捨てることで、

 攻撃効率は向上します。

 ……敵本陣、

 壊滅させてきます」


 シキが冷たい瞳で

 AA-12のドラムマガジンを

 叩いた。


「……ブンペイ。

 絶対に死なせないでよ。

 タイミングが命だからね」


 ニナの念押しに、

 俺は迫撃砲の照準を合わせながら

 親指を立てた。


「任せろ。

 俺とニナはここから、

 支援砲撃と『回収』に専念する」


   ◇


 正午。

 太陽が真上に昇った瞬間、

 「それ」は始まった。


「ひゃっはー!!

 お肉のお祭りだぁーっ!!

 みんなまとめて

 ひき肉になっちゃえー!」


 開戦の合図は、

 サンの狂喜の叫びだった。


 ボブ爺の遺産、

 『M16対空自走砲』。

 通称、ミートチョッパー。


 M3ハーフトラックの荷台に

 搭載された

 4連装の12.7mm重機関銃が、

 フィリアの冷静な操縦で

 敵陣へ突っ込む。


 ズバババババババッ!!

 ガガガガガガガッ!!


 それは銃撃というより、

 「空間の削除」だった。

 

 毎分2000発を超える

 鉛の暴風雨。

 歩兵も、騎馬も、

 分厚い鉄の盾さえも、

 紙切れのように引き裂かれ、

 赤い霧となって消滅していく。


「いけーっ!

 もっと踊れぇーっ!!」


 サンが旋回ハンドルを回し、

 戦場を薙ぎ払うたびに、

 百人単位の兵士が

 文字通り「挽肉」に変わる。


 後方からは、

 ゴロネの正確無比な狙撃が

 指揮官級の頭を

 次々とスイカのように

 弾き飛ばしていた。


   ◇


 その圧倒的な破壊の隙を突き、

 突撃組の三人が

 敵本陣へ到達した。


 最初に動いたのは、

 剣士レオナだ。


 彼女の前に立ちはだかったのは、

 帝国でも名高い

 「剛剣」の将軍だった。


「小娘が!

 我が剣の錆となれッ!」


 豪速の斬撃。

 レオナは避けなかった。

 いや、避けれなかったのか。

 肩から胸にかけて

 深く切り裂かれ、

 鮮血が舞う。


 普通の人間なら即死だ。

 将軍が勝利を確信し、

 口元を歪めた。


 その瞬間。


「……今だッ!」


 丘の上から見ていた俺は、

 空間を繋げた。

 

 フッ。

 

 レオナの姿が戦場から消える。


 『揺らぎ』の中。

 レオナは健康体で復活した。


「……よし、いってこい!」


 次の瞬間、

 俺は再び彼女を戦場へ放り出す。

 

 将軍が瞬きをする、

 その刹那の間に。


「……なっ!?」


 目の前の空間が歪み、

 無傷のレオナが現れた。

 傷跡一つない。

 返り血さえ消えている。


「……浅いな」


 レオナが冷たく言い放ち、

 剣を構え直す。


「ば、馬鹿な!

 確かに斬ったはずだ!」


 将軍が錯乱し、

 再び剣を振るう。

 今度は胴を薙いだ。

 

 だが、また消える。

 そして一秒後には、

 五体満足で立っている。


 ゾンビアタック。

 

 三度、四度。

 斬っても斬っても

 一瞬で全快して蘇る

 不死身の剣士を前に、

 名将の心がポッキリと折れた。


「……化け物……ッ!」


 恐怖で剣先が鈍る。

 その隙を、

 レオナは見逃さなかった。


 一閃。

 将軍の首が、

 美しい弧を描いて宙を舞う。


   ◇


 一方、本陣の奥深く。

 隣領の領主が

 近衛兵に守られながら

 逃走を図ろうとしていた。


「ひぃッ!

 なんなんだあの連中は!

 急げ! 馬を出せ!」


 その退路を、

 一人の美しい女性が塞ぐ。

 

 シキだ。

 彼女の手には、

 ドラムマガジンを装着した

 『AA-12フルオートショットガン』。


「……逃がしませんよ。

 あなたには、

 罪の重さを知ってもらわないと」


 シキが微笑む。

 それは氷点下の微笑みだった。


「や、やれ!

 殺せ!!」


 領主が叫び、

 十数人の近衛兵が一斉に襲いかかる。


 シキは無造作に、

 腰のピンを抜いた。


「……フフッ 

 今日も良い声で啼くかしらね」


 カラン、と転がったのは

 数個の手榴弾。


 ドガァァァァンッ!!


 爆風が吹き荒れ、

 近衛兵たちが

 肉片となって四散する。


「ああ……、いい啼き声」


 シキは心底嬉しそうに嗤う。

 偉そうな連中が這いずって

 啼くのは楽しい。

 もっともっと聞きたくなる。

 

 爆煙の中、

 ただ一人無傷で残された領主が、

 腰を抜かして後ずさる。


「あ、あ、ああ……」


「ああ、これ《《これ》》もいたわね」

 「お前みたいなのは啼かせても

 つまらないんだけどね」


 シキはゆっくりと歩み寄る。

 AA-12の銃口を、

 領主の足の指先に向けた。


「一気に殺すと、

 反省する時間がありませんから」


 ズドンッ!

 

 つま先が弾け飛ぶ。


「ぎゃああああッ!!」


 ズドンッ! ズドンッ!

 ズドガガガガッ!!


 シキはトリガーを引き続けた。

 足首、脛、膝、

 そして太もも。

 

 下から順に、

 丁寧に、丁寧に、

 領主の体を削り取っていく。


「あ、あがッ、やめッ……!」


「まだですよ。次は指先です」

 シキの瞳には、

 狂気すら宿っていなかった。

 あるのは、

 ただの事務的な処理。

 害虫を駆除するような、

 冷徹なサイコパスの仕事だった。


   ◇


 その頃、

 戦場の外れにある木陰で、

 ミケが「獲物」を追い詰めていた。


 豪華な鎧を着た青年。

 帝国の第三皇子だ。


「く、来るな!

 余は皇子だぞ!

 貴様ごとき獣人が……ッ!」


 皇子が震える手で剣を抜く。

 だが、ミケは楽しそうに

 尻尾を揺らしていた。


「にゃはっ!

 いい動きだにゃ。

 でも、遅いにゃ」


 ヒュンッ!


 ミケの姿が掻き消える。

 次の瞬間、

 皇子の剣を持つ手首に

 ナイフが突き刺さっていた。


「ぐああっ!?」


 剣が落ちる。

 ミケは皇子の背後に回り込み、

 P90の銃口を

 首筋に押し当てた。


「……殺すのは簡単だにゃ。

 でも、ブンペイは生きてる方が

 喜ぶかにゃ?」


 ミケの琥珀色の瞳が、

 獲物を値踏みするように輝く。


 まるで、

 狩ったネズミを

 飼い主に見せに行く猫のように。

 

 「生きたままの方が、

 遊べるしにゃ!」


「ひっ、ひぃぃッ……

 助け……ママ……ッ!」


 皇子は恐怖のあまり、

 その場で失禁し、

 白目を剥いて気絶した。


「あーあ、漏らしちゃったにゃ。

 ま、いっか。

 お持ち帰りだにゃ!」


 ミケは皇子の襟首を掴み、

 ずるずると引きずり始めた。


   ◇


 夕暮れ。

 死屍累々の戦場は、

 不気味なほどの静寂に包まれていた。


 俺とニナが

 熱を持った迫撃砲を片付けていると、

 揺らぎで綺麗になった三人が、

 ピクニックから戻るように

 帰ってきた。


「ただいまー!

 ブンペイ、お土産だにゃ!」


 ミケが誇らしげに

 放り投げたのは、

 二つの無惨な生首と、

 猿ぐつわを噛まされた

 一人の青年。


 レオナが討ち取った

 剛剣の将軍の首。

 

 シキが丁寧に「削った」せいで

 原型を留めていない

 隣領主の首。

 

 そして、

 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにし、

 ガタガタ震えている

 帝国の第三皇子だった。


「にゃっふふ〜。

 生きてるネズミも

 持ってきたにゃ。

 褒めて褒めて!」


 ミケが俺の首元に

 頭を擦り付けてくる。

 俺は苦笑しながら、

 その頭を撫でてやった。


「……大漁だな。

 よくやった、みんな」


 俺は震える皇子を見下ろす。

 これが、

 マツシタ家に喧嘩を売った

 代償だ。


 最強の矛と、

 不死身の盾。

 そして容赦のない狂気。


 これが、

 マツシタ家流の

 「外交交渉(物理)」の

 真の姿だった。

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