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事故死したので異世界に転移しますが、管理者のミスなのでアメリカの店ごと持っていくことにしました  作者: だい


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第5話:獣人キター!そしてその現実

大岩村へとバギーを走らせる。

途中で大回りはしたが、二時間かからず、大岩村を見渡せる崖の上に出た。


タブレットに繋いだデジタル望遠鏡で、村を見る。


獣人の「ケモ度」は、ケモ耳としっぽだけを1とするなら、1~7ってところだな。

なんか、狼男みたいなのもいるし、怖いわ。


ふーん。

見た感じ文明レベルは近世。

そして、所謂「ファンタジー世界」だ。


服も、そういった感じで、カーゴパンツなどは大丈夫そうだが、防具はどうなんだろ。

いわゆる「冒険者」や「傭兵」が居れば良いんだけど、今のところ見えない。


んー。

不審者風だけど自分の安全第一で行くか。

それとも、揺らぎの治療能力を信じて、コットンのカーゴパンツとシャツで行くかだなあ。


それか無理しないか。

悩むが、中々答えが出ない。


ここでスルーしたところで、引きこもるのをやめた以上は、どこかで異世界人と接触はある。

ならば、ここで接触して異世界人に慣れたり、情報を取っておいた方が、防具外してもメリットあるんじゃなかろうか。


それに、話も通じず、村として攻撃して来たら、この位の規模なら殲滅できるだろ。

精神安定で、敵対する相手は普通に撃てそうだし。


さて、そうと決まれば、どんな設定で行こうかな。

うーん、そうだ。鑑定で出るかな。


『大岩村:年に一度、ガルドの街より徴税官と移動店舗が来ていた。しかし一部の獣人が人間の領主が気に入らないと徴税官と移動店舗を追い返して以来、外部とは接触がなく住人の不満はたまっている。』


おおう。

意外と情報量多くてビックリしたよ。


なるほどなあ。

徴税官を追い返したって奴等は、行政としてのサービスや、経済活動に入る権利も無くなるって理解してないんだろうね。


しかし、よくガルドに攻められなかったよな。


まあ、ガルドから100キロだと5日行軍か。

無理に攻めなくとも、どう見てもこの村って、領主に頭下げなきゃジリ貧だもんなぁ。


税を納めないで貯めた物も、売れなきゃ金にもならないから意味がない。

納める税以外で売ってた物も、誰も何も買いにこない。

ガルドに売りに行っても、当然入れない。


自給自足で、村内で全て賄うなら構わない。

でも、この村の人たちは「金で必要な物を買う」という行為を、知ってしまっているのだ。


なのに、一部の人間のせいで経済圏から外されたことに、強い不満があることは想像つく。


今なら、一攫千金にかけて、ガルドより遠い地方から来た行商人で入れるんじゃね?

普段なら怪しいだろう。


だが今なら、以前のように「買い物したい獣人」だけではなく、

「排他的な獣人」達にとっても、ガス抜きとなる。

入れる可能性は高い。


よし。

じゃあ何を持っていこうかなあ。


鋼ナイフ×3。

包丁×1。

ハサミ×2。

裁縫セット×2。

虫眼鏡×1。

ガラス瓶×3。

塩・砂糖・香辛料(小分け)。

石鹸×数個。

針 大小をそれぞれ多めに


とりあえず、こんな所かな?。


リュックに詰める。

見た目だけなら、旅商人っぽいのか、ね。

まあいいや。変なのは今さらだ。


俺は崖を下り、村に近い森の縁でバギーを止める。

村の真ん前に停めて、「なんだその鉄の獣は!」って騒がれたら面倒だしな。


バギーは収納に入れ、服も着替えてリュック背負う。


……よし。


銃は持たない。

いや、収納に持ってるけど見せない。


相手が、銃が武器だと知らなきゃ

脅しにも使えないしね。

俺の保険だ、隠しておきたいしな。


代わりに、腰にナイフ。

そして背中にリュック。


手には虫眼鏡の箱。

あとは、笑顔……は無理。

笑顔のマ〇クの店員て凄いな。


村へ向かう道は一本だった。

近づくほど、獣人の匂いが濃くなる。


焚き火と、獣脂と、汗と、土。


門らしい門はない。

木を組んだ柵と、見張り台が二つ。

そこに、ケモ度高めの獣人が数人。


……やっぱ狼男っぽいのがいる。

体格がでかい、腕が太い。

目が、黄色い。


俺が近づくと、すぐに声が飛んだ。


「止まれ。人間か?」


言語理解、ありがてぇわ。

通じるだけで難易度が十個下がる。


「そうだ。行商だ。売り物がある」


そう言って、リュックを軽く叩く。


見張りの一人が、俺をじろじろ見る。

そして鼻をひくつかせた。


「……油の匂い。金属の匂い。変な匂いだ」


そりゃそうだね。

異世界にないもんだらけだ。


もう一人が、露骨に嫌そうな顔をした。


「ガルドの犬か?」


「違う。ガルドには行ってないぞ?。というか、場所も今日知ったしな」


「なら、どこから来た」


「遠い所だ。説明しても分からないと思うぜ?」


俺はわざと曖昧に伝える。

嘘はついてない。

地球から来たなんて通じないしな。


見張りが俺の背中のリュックに目をやる。


「売り物を見せろ」


ここで見せすぎると、奪われる。

見せなさすぎると、追い返される。


知ってるよ、ラノベで読んだもんな。

でも現実は加減が難しい。


俺は、ナイフを一本だけ取り出した。

鞘から少しだけ抜いて、刃を見せる。


「……ほう」


獣人の目が光る。

刃物が好きな男の目だ。


「切れるのか?」


「木でも、皮でもいけるさ」


俺は地面の小枝を拾い、刃先で軽く撫でた。

小枝が、すっと割れる。


見張りが唸った。


「鍛冶屋の刃より……細いのに……」


「売るぞ。交換でもいい。食い物でも、情報でもな」


俺はそう言って、刃を鞘に戻す。


しばらくの沈黙。

見張り同士が目配せする。


すると、奥から別の獣人がやってくる。

年齢は獣人はよくわからん。


耳と尻尾はあるが、ケモ度は低め。

服は小綺麗で、首に小さな飾り。


村長か、村の代表だろう。


「……人間の行商だと?」


「そうだ。売り物がある」


俺は同じように、ナイフを一本見せた。


その獣人は、刃を見た瞬間に表情を変えた。

俺でも分かる、欲が出た顔だ。

でも、すぐに押し殺す顔。


「……久しぶりだな。外の品だ」


「村は外と揉めてるらしいな。俺は関係ない。商売がしたいだけだ」


「ほう。賢い言い方をする」


村長っぽい獣人が、俺を上から下まで見た。

目つきが、値踏みだ。


「入れ。だが、争いは許さん」


「争う気はない。俺は買って、売って、帰る」


「帰る? どこへ?」


俺は一瞬迷って、答えた。


「……店にかな」


そうだ、もう地球には帰れない。

あの店が、今の俺の全てだ。


村長は鼻で笑ったように見えた。


「まあいい。最近は皆、腹に溜めている。変なのが来た方がガス抜きにもなる」


おいおい、さらっと物騒なこと言うな。


門が開いた、俺は村の中へ入る。


村の空気は、外より乾いていた。

そして、視線が多い。


獣人たちが、遠巻きに俺を見てくる。

好奇心と、警戒と、敵意と、欲。


俺はゆっくり歩いた。


まずは広場へ案内された。

土の広場。


周囲に屋台の骨組みだけが残っている。

以前は移動店舗がここに並んでいたのだろう。


村長が言った。


「外の物を売るなら、ここだ。皆が見える」


「了解」


俺は地面に布を敷き、そこへ品を少しだけ並べた。

ナイフ、ハサミ、針、糸、石鹸、塩。

虫眼鏡はまだ出さない。


獣人が寄ってくる。

最初に食いついたのは、やはり女たちだった。


石鹸を手に取り、匂いを嗅ぐ。

針を指でつまみ、目を丸くする。

糸を引っ張って強度を確かめる。


……なるほど。

この世界でも、獣人でも、強いのは女か。


次に寄ってきたのは、若い男たち。

ナイフ、ハサミ

刃物はここの鍛冶屋とは比べ物にならない。


「これ、いくらだ」


「交換でもいいぞ。何がある?」


「干し肉。毛皮。木の実。酒」


「んー。毛皮なら考える」


鑑定して価値を計る、価値より少し安く売っていく。

俺は会話しながら、村の情報を拾った。


ガルドのこと。

領主のこと。

村の誰が強いか。

誰がうるさいか。


そして、やっぱり出てくるのは不満だ。


「前は年に一度、店が来たんだ」

「鍋も針も、粉も、全部あそこで買った」

「今は何もない」

「追い返した奴らが偉そうにしてる」

「でも狩りは狩りで面倒だ」

「塩が足りない」

「布が足りない」

「刃が欠けたままだ」


みんな、買いたい。

そして、外に出られない。


俺は淡々と、交換を進めた。

干し肉、毛皮、木の実。

それを収納に入れるわけにはいかないから、

リュックの奥に詰めるフリをする。


そんな時、

広場の端にある小屋が目に入った。


柵がある。

窓が小さい。

人影が動いた。


……あれなんだ?


俺が見ているのに気づいたのか、

村長がにやりとした。


そして、

悪意でも善意でもない声で言った。


「旦那。人間なら、ああいうの好みでしょう」


俺は意味が分からなくて、村長を見る。


村長は、広場の端の小屋を顎でしゃくった。


「ナイフ一本で、一匹と交換でどうです?」


――その言葉で、理解した。


あそこにいるのは、商品だ。

同じ獣人を、物みたいに言う。


俺は返事ができなかった。

何かが、静かに冷えていく。


村長は続ける。


「外が途絶えて、余ってましてね。丁度いい」


俺は笑えなかった、頷けなかった。

否定の言葉も、すぐには出なかった。


……ああ。


この村は、

外と切れただけじゃない。


中身も、

少しずつ腐っている。


何か言わなきゃいけない気がしたが、

その「何か」が分からなかった。

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