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事故死したので異世界に転移しますが、管理者のミスなのでアメリカの店ごと持っていくことにしました  作者: だい


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第41話:鉄の掟と、南への楽しい逃避行

叔父さんとの「別れ」から数時間。

 俺たちは、バベルの城壁を遠くに見る

 森の中で野営を張っていた。


 これより、

『チーム・ブンペイ』拡大に伴う、

 新メンバーへの「教育」を行う。


「いいですか、皆さん」

「この『揺らぎ』には、

 命に関わる絶対のルールがあります」


 リビングに集まった新人たちに、

 俺は真剣な顔で告げた。


 アリスお嬢様。

 執事のセバス、メイドのエマ。

 そして、女騎士のレオナ。


 レオナというのは、俺がつけた名前だ。

「名前を捨てた身ゆえ、新たな名を」

 と言われたので、

 獅子のように勇敢な彼女に贈った。


「命に……関わる?」


 レオナがゴクリと喉を鳴らす。


「まず、出入りの基本です」


 俺が指を鳴らすと、

 背後の空間がスッと滲んだ。

 音もなく、吸い込みもなく。

 ただそこにあるカーテンを開けるように、

 ミケがひょいと顔を出した。


「オーナー、在庫のおやつ食べていい?」


「夕飯前だからダメ」


「ちぇっ」


 ミケが引っ込むと、

 今度は別の場所が滲んで、

 サンが焼けた肉を持って出てきた。


「厨房借りてました! 焼きたてです!」


 さらに別の場所から、

 湯上がりでほかほかのシキが出てくる。


「いいお湯でした」


「……あなたたち」

「少しは自重しなさいよ」


 ニナがこめかみをピキピキさせている。

 まあまあ、自我が出てきて何よりじゃないか。


「このように」

「『揺らぎ』は一人一人、

 別々の入り口を開けて出入りします」

「俺が許可した人間は、

 自分の意思で自由に使えます」


 アリスたちが、

 ポカンと口を開けて見ている。


「ただし」


 俺は声を低くした。


「この空間に対して、

 あるいは俺たちに対して

『悪意』を持った瞬間、扉は開きません」


「……悪意」


「さらに『殺意』を持って触れようとすれば」

「その触れた身体の一部は、

 空間ごと『消滅』します」


「しょ、消滅!?」


「ええ、消え去ります」

「これは俺の意思じゃない」

「この空間そのものの『仕様』なんです」

「だから、俺にも止められない」


 新人たちの顔色がサッと青ざめる。

 そう、これは便利な隠れ家であると同時に、

 常に心を試される踏み絵でもあるんだ。


 かつて俺が検証した時、

 銃弾や爆風といった「意志のない攻撃」は

 全て無効化されて消えた。

 そして「殺意ある接触」もまた、

 容赦なく排除される。


「も、もちろん裏切りなどしませんわ!」

「生涯の忠誠を誓っております!」


 アリスが必死に首を振る。

 レオナたちも、

 改めて気を引き締めたようだ。


「よし、脅しはここまで」

「装備を渡すぞ」


 俺はボブ爺のコレクションを並べた。


 レオナにはM27 IAR。

 セバスにはMP5K。

 エマにはグロック18C。

 アリスにはドローン。

 そしてサンには、50キロ超えの

 M134ミニガン。


「使い方と、車の運転」

「徹底的に体に叩き込んでもらう」


 俺たちはガレージへ移動した。

 ボブ爺の愛車たちが眠る場所だ。

 もちろん、VRなんて便利なものはない。

 あるのは実車と、

 分厚いマニュアルだけだ。


   ◇


 1時間後。

 ガレージには、

 エンストの音が響き渡っていた。


「ぬわああ! 止まるぅぅ!」

「なんだこの『ハンクラ』というのは!

 馬より繊細ではないか!」


 レオナが絶叫している。

 マニュアル車の洗礼を受けて、

 ガックンガックンと車体が揺れている。


「お嬢様を乗せて、

 このような乱暴な運転は……」


 セバスは慎重すぎて、

 時速5キロでノロノロ走っている。


「……ふっ」

「懐かしい光景」


 後ろで見ていたミケが、

 ニヤリと笑った。


「笑い事じゃないでしょ」

「ミケだって最初は酷かったんだから」


 ニナが苦笑する。


「そうそう」

「アクセルとブレーキ間違えて、

 商品棚に突っ込んで

 ボブ爺の遺影が落ちてきたし」


「……ッ!? 言うな」


 ミケが顔を赤くして睨む。


「私なんて、ハンドルを握り潰しました」


 サンが遠い目をする。

 ステアリングをひしゃげさせて、

 泣きそうになってたっけ。


「私は最初から完璧でしたけど」


 シキが涼しい顔で言う。


「嘘つけ」

「バック駐車ができなくて、

 説明書を破り捨ててただろ」


「……記憶にございません」


 そんな失敗を繰り返して、

 今のあいつらがある。


 アリスのドローン訓練も難航していた。


「アンテナだけ出すのよ」

「手を出したら危ないからね」


「は、はい……!」

「ああっ、また穴が大きすぎました!」


 1センチの穴を開ける繊細な操作。

 これができないと、

 戦場での偵察は任せられない。


 アンテナの先だけを外に出す。

 電波を通さない『揺らぎ』の中で

 ドローンを操る唯一の方法だ。


 ……まあ、時間はたっぷりある。

 焦ることはないさ。


「さて、みんな」

「ここでの訓練が終わったら、

 バベルには入らず南へ行くぞ」


「えっ、入らないんですか?」


 アリスがキョトンとする。


「アリスは『死んだ』ことになってるだろ」

「のこのこ顔を出したら、

 叔父さんの決死の演技が台無しだ」


 それに、あんな重い別れをした直後に

「やっぱ来ちゃいました☆」なんて言ったら、

 叔父さん、心臓麻痺で死ぬぞ。


「だから、進路変更だ」

「南へ行こう」


 俺は地図を広げた。

 南の方にある、常夏の海岸エリア。


「海だ」

「しばらく殺伐としたのは無しにして、

 バカンスと洒落込もう」


「海……! 本でしか見たことないです!」


 アリスが目を輝かせる。

 ニナやミケも、尻尾を振っている。


 最強の戦力と、最高の家族。

 俺たちの旅は、

 雪国から南国へ。

 まだまだ面白くなりそうだ。

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