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事故死したので異世界に転移しますが、管理者のミスなのでアメリカの店ごと持っていくことにしました  作者: だい


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シチューの湯気と、サーマル越しの処刑

日が落ちて、夜が来た。

 俺たちは街道から少し外れた

 森の中で野営を張る。


 お嬢様たちは、疲れ切っていた。

 

 緊張が解けて、メイドのエマは、

 座ったまま寝そうになっている。


「まずは腹ごしらえだな」


 俺は収納から食材を出した。

 今夜のメニューは、

 疲れた体に染み渡るアレだ。


 大鍋で鶏肉を炒め、

 人参、玉ねぎ、ジャガイモを入れる。

 20分ほど少しの水を張って煮込む。

 そして箱に書いてる水と牛乳の分量を

 逆にして牛乳を3分の2いれる。

 

 そしてハ〇スシチューの素を投入。

 俺が日本から持ってきたものだ。

 最後にキャベツを入れるのが俺の流儀。


 フフフ、この世の中に

 シチューが嫌いな人などいないのだ!。


 具だくさんのクリームシチューだ。

 それに、炙ったバゲットにチーズ。

 飲み物はストレートティーを


「はい、どうぞ」


 俺はシチューをアリスに渡した。


「……いい香り」

「いただきます」


 アリスが恐る恐る口をつける。

 その目が、カッ!と開いた。


「おいしい……!」

「体が、内側から温まります……!」


「これがハ〇スの力ですよ」


 執事のセバスも、女騎士も、

 無言で啜っている。

 

 涙目になっているよ。

 ……君たち、貴族家だよね。


 ……さて。

 和やかな食事の裏で、

 俺たちの「仕事」は始まっていた。


『――オーナー』

『客が来たぞ』


 インカムからフィリアの声。

 シチューを啜りながらの報告だ。


『数は5名。完全にプロだ』

『気配を断つ魔法を使っている』

『風下から、音もなく接近中』


「……了解」


 俺は自然な動作で、

 足元のバッグを開けた。

 

 中から取り出したのは、

 一見するとゴツいゴーグルだ。


「みんな、食後の運動kだ」

「装着しろ」


 ミケたちが、

 手慣れた様子でゴーグルを被る。


 これはボブ爺のコレクションの中でも

 とびきりヤバい代物。

 

 ENVG III/FWS-I。

 最新鋭の暗視装置だ。


 こいつの凄いところは、

 銃の照準器サイト

 ゴーグルが無線でリンクすること。


 つまり、銃を構えて覗き込まなくても、

 ゴーグルの視界の中に

「どこに弾が飛ぶか」の点が

 表示されるのだ。


「……見えた」


 ミケが呟く。

 暗視モードにサーモ(熱源感知)を

 重ねて表示している。


 闇夜に紛れて、

 魔法で姿を消しているつもりの暗殺者。

 だが、このゴーグルの前では

 彼らは真っ赤に発光する

「歩く的」でしかない。


「行けるか、ミケ」


「余裕」

「走りながらでも、真ん中に当たる」


 ミケが音もなく立ち上がった。

 手にはサイレンサー付きP90。


「……処理します」


 シキもAA-12を構える。

 

 アリスたちが食事に夢中になっている

 その背後で、一方的な狩りが始まった。


 シュッ!


 ミケが疾走する、速い。

 普通の人間なら目で追えない速度だ。


 普通なら、

 走りながらの射撃なんて当たらない。

 

 だが、今のミケには

 視界の中央に「着弾点」が見えている。


 しかも獣人の腕力だ。

 反動なんてないも同然。

 

 片手で構えたまま、

 狙いもせずフルオートでばら撒く。


 トトトトトッ!!

 サプレッサーで押さえた銃声が響く。


「ぐああっ!?」

「な、なんだ!? どこから!?」


 暗闇の中から悲鳴が上がる。

 暗殺者たちは混乱している。

 

 姿は見えないはずなのに、

 正確に弾丸が飛んでくるのだから。


「見えてるよ、お前ら」


 俺もHK416を闇に向けた。

 ゴーグル越しに、

 木陰に隠れた赤い人影が見える。

 レティクルを重ねてトリガーを引く。


 パンッ。


 人影が崩れ落ちた。

 うん、俺の腕でも百発百中だ。

 これ、強すぎてゲームにならんな。


「ひ、退却だ!」

「状況が分からん!」


 残った二人が逃げようとするが


「逃がすわけないでしょ」


 ゴロネの声。

 残りの暗殺者の脚を撃ち抜く。


「うわあああ!!」


 倒れた暗殺者を、

 シキが上から冷たく見下ろしている。


「……捕獲完了」

「尋問の時間ですね」


 戦闘終了。

 1分もかかっていない。

 

 アリスたちは、

 少し離れた場所での騒ぎに

「何か音がしました?」と

 キョトンとしている。


「ああ、タヌキが出たみたいで」

「追い払っときました」


 俺は笑顔で誤魔化した。

 

 捕らえた暗殺者は、

 森の奥で縛り上げている。

 

 プロの暗殺者が、恐怖で震えていた。


「ば、化け物だ……」

「闇の中で、なぜあんなに動ける……」


「文明の利器だよ」


 俺は彼らの前にしゃがみ込んだ。


「さて、吐いてもらおうか」

「誰に雇われたのかな?」


 暗殺者は口を閉ざす。

 プロなら、依頼人は吐かないだろうな。


 そう思ったら、

 シキが二人とも森の奥に連れていった。


 戻ってきたのはシキだけ。

 シキは、俺に褒めて欲しげな笑顔で言う


「叔父が依頼したとの事です!」


 ……怖いよ、シキ



 俺はため息をついた。


「……やっぱりな」

 

 テントの方を見る。

 アリスがおかわりをして笑ってる。

 執事たちが微笑んでいる。


「叔父様は、私を可愛がってくれるの」

「バベルに行けば、守ってくれるわ」


 さっき、アリスはそう言っていた。

 その信頼が、残酷な刃になるなんて。


「……まだ伏せておこうか」

「せめて、バベルに着くまではさ」


 俺はシキに目配せをした。

 彼女は小さく頷いた。


 シチューの温かさと、世界の冷たさ。

 その両方を噛み締めながら、

 俺たちの夜は更けていった。

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