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事故死したので異世界に転移しますが、管理者のミスなのでアメリカの店ごと持っていくことにしました  作者: だい


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第37話:挟撃の令嬢と、死角なき援護

 あの最悪の「掃除」から一日。

 俺たちの旅は続いていた。


 心なしか、みんなの足取りが軽い。

 

 昨日の今日で落ち込むかと思ったが、

 むしろ「迷いが晴れた」ようだ。

 シキなんて、鼻歌交じりで

 街道の小石を蹴っている。


『――オーナー』

『前方3キロ。まただ』


 インカムからフィリアの声。

 

 ……またかよ。

 この街道、治安悪すぎない?


『状況は?』


『馬車が一台。護衛は4名』

『敵は……複合型だ』

『オークの群れが15体。

 それを指揮するような動きで、

 盗賊が10名』


 挟み撃ちか。

 

 魔物をけしかける盗賊なんて、

 タチが悪いな。


『護衛の消耗、激しい』

『あと3分で決壊するぞ』


 フィリアの冷静な分析。

 昨日の俺なら、ここで

「関わるメリットは?」と考えていただろ。


 でも、もう我慢はしないんだ。

 目の前で理不尽が起きているなら、

 それを踏み潰すだけだ。


「……行くか」

「今の俺たちに、遠慮はいらない」


 俺の言葉に、

 全員がニヤリと笑った。


「了解」

「蹂躙します」


 現場に到着すると、

 そこは地獄絵図だった。


 ひっくり返った馬車。

 必死に剣を振るう女騎士。

 魔法で牽制する執事とメイド。

 そして、その背後で震えている

 金髪の少女。


 敵は多い。

 

 オークの怪力と、

 盗賊の狡猾な弓矢が、

 彼らを追い詰めている。


「死ねぇ! 貴族のガキが!」


 盗賊の一人が、

 死角から少女に飛びかかった。

 

 女騎士はオークに阻まれて動けない。

 執事の魔力も尽きかけている。


 少女が悲鳴を上げ――


 ドンッ!!


 乾いた破裂音と共に、

 空中で盗賊の頭が弾け飛んだ。


「……え?」


 少女が目を見開く。

 次の瞬間、

 俺たちの独壇場ステージが始まった。


「制圧開始!」


 ニナの号令。


 ヒュンッ!

 赤い閃光が戦場を駆け抜ける。

 

 ミケだ。

 P90を片手撃ちしながら、

 すれ違い様にオークの足を斬る。

 

 崩れ落ちた巨体に、

 サンのライフルが追撃を叩き込む。


「な、なんだこいつら!?」


 盗賊たちが動揺する。

 だが、その隙を見逃すほど

 シキは甘くない。


 ズガガガガッ!


 AA-12が火を噴く。

 隠れていた盗賊たちが、

 遮蔽物ごと粉砕される。


『右1時、残存3』

 

 俺はスマホでサンに指示を飛ばす。

 見えていない敵の場所も丸わかりだ。


「サン、RPG撃て」


「了解!」

 

 榴弾が、集団の真中で炸裂した。

 動くものに向け、ゴロネがとどめを刺す。


「……終わりだ」


 俺が戦場に足を踏み入れた時には、

 もう立っている敵はいなかった。

 

 一方的な殲滅、被害ゼロ。


 呆然としている護衛たちに、

 俺は努めて優しく声をかけた。


「怪我はありませんか?」


 女騎士が、

 ハッとして剣を収めた。

 

 ボロボロの鎧、体中傷だらけだ。

 それでも、少女を守ろうと立っていた。

 

 昨日のクズ騎士とは大違いだな。


「か、感謝する……!」

「貴殿らのおかげで、

 アリス様をお守りできた……!」


 女騎士が深々と頭を下げる。

 

 執事とメイドも、

 涙を流して感謝している。


「あ、ありがとうございます……」


 馬車の陰から、

 少女が出てきた。

 

 12歳くらいだろうか。

 

 透き通るような金髪と、

 宝石のような青い瞳。

 

 震える声で、必死にお礼を言っている。


「怖かったでしょう」

「もう大丈夫ですよ」


 ニナが屈み込んで、

 少女の頭を撫でた。

 

 少女はニナの胸に飛び込んで、

 ワッと泣き出した。


 ……いい子だ。

 そして、周りの大人たちも、

 本気でこの子を愛しているのが分かる。


 昨日の胸糞悪い出来事が、

 少しだけ浄化される気がした。


「我々は、子爵家の者です」

「商業都市バベルへ向かう途中でした」


 執事が名乗り出た。

 

 バベル。

 俺たちの目的地と同じだ。


「奇遇ですね、俺たちもです」

「よければ、ご一緒しましょうか?」


「なんと! 願ってもない!」

「この通りの手勢ゆえ、

 心細かったのです」


 こうして、

 俺たちは子爵令嬢の一行と

 行動を共にすることになった。


 ……だが。

 その夜、野営地でのことだ。


『……オーナー』


 テントの中で、

 フィリアから通信が入った。


『どうした?』


『シキとも話していたんだが』

『あの一行、妙だぞ』


 フィリアの声が、少し低くなる。


『あのお嬢様、アリスといったか』

『子爵家の唯一の跡取り娘だ』

『なのに、護衛が少なすぎる』


『装備も古い。馬車も地味だ』

『まるで……』


『……誰にも知られずに、

 ひっそりと移動しているようですね』


 横で、シキが補足した。


『おそらく、事故に見せかけて

 消すにはおあつらえ向きの陣形です』


 ……なるほど。

 俺も薄々感じていた。

 

 あの執事たちの「必死さ」は、

 魔物への恐怖だけじゃない。

 

 もっと別の、

「見えない敵」に怯えている感じがした。


「……事情あり、か」


 俺は焚き火の方を見た。

 

 アリス嬢が、

 俺の作ったスープを飲んで

「美味しい!」と笑っている。


 それを見て、

 執事たちが目を細めている。


 あんなに温かい光景なのに。

 その裏には、

 ドロドロした何かが潜んでいるらしい。


「とことん付き合うさ」


 俺は呟いた。


「バベルまで送り届ける」

「その間に来る『敵』は、

 全部俺たちが引き受ける」


 昨日は救えなかった。

 だから今度は、

 絶対にハッピーエンドにしてやる。


 たとえその敵が、

 魔物や盗賊よりも厄介な

「貴族の事情」だったとしてもな。

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