第4話:ついに引きこもり脱却かなあ
うーん、よく寝たわ。
シェルター内は安心して寝れるし、やっぱベッドはいい。
さて、まずはガレージを見てくるか。
戦車に装甲車にジープにハンヴィー。
しかも新品で、武装付き、弾薬付き。
……でもな、乗員がいないのよ。
奴隷とかが異世界にない限り、乗員は諦めよう。
縛りもなく、他人を信用するとか無理。
それでは、揺らぎがどのくらいの強度で結界を作っているのか。
外から攻撃してみる。
装備を付けて、揺らぎの外を確認する。
うーん、正面じゃなくて右手側なら車両を出せそうだ。
とりあえずジープでいいか。
揺らぎを維持しながら、百メートルほど離れる。
とりあえず、ライフル程度じゃ安心できない。
まずはM2からだな。
九十年以上使われ、絶大な信頼を誇り、
二百万丁以上が製造された伝説――
「ブローニングM2重機関銃」。
俺は周囲を確認し、装填した。
ダンダンダンダン。
野太い音が響く。
続いて、収納からさらに威力のある
M72ロケットランチャーを撃つ。
結果、揺らぎの前で消えた。
セーフゾーン内に戻ってみるが、
撃ち込んだ痕跡は見当たらない。
セットしていたカメラを見るが、
何かが当たったようにも見えない。
攻撃は吸収される、ということなのか?
今度は揺らぎのすぐ前で、ショットガンを撃ってみる。
固い壁に跳ね返されているのではない。
攻撃そのものが吸い込まれて、
「無かったこと」にされている感じだ。
じゃあ、刀とか素手で攻撃されたら?
吸い込まれて、腕とか無くなるのか?
ゆっくり触ろうとした場合は?
攻撃判定になるのか?
触っただけの場合は、どうやって平和的に排除する?
色々と試してみたいが、
銃以外の攻撃は、俺のものでもすり抜ける。
……なんで銃の攻撃だけ消える?
「ああ、なるほど!」
撃った瞬間、弾はもう俺の“意志”じゃない。
ただ飛んでいるだけの物体だ。
揺らぎが消しているのは、攻撃じゃない。
“主体のない存在”なんだ。
一つ、スッキリした。
揺らぎの外は見えない。
だが、シェルターにあった資材の中の
ファイバースコープを使えば見える。
ドローンも、コントローラの先が外に出ていれば
操縦もモニターも問題ない。
だがアンテナを揺らぎ内に入れると、
映像も操作も即アウトだった。
次に、セーフゾーン内。
店外の看板を撃ったら壊れる。
揺らぎの外に出る。
戻る。
……直ってない。
うーん、自分で壊した場合はダメか?
補充とは違うのかな……。
――あれ?
直った?
ほーん。
店や銃と同じ扱いか。
俺が思った形で補充されるわけだ。
よし、それじゃ外に――
……行かなーい!
まだ、やることがある。
銃は撃てるが、初めて触る銃も多い。
練習しないと、いざという時に困る。
戦車や装甲車も同じだ。
乗員が見つかっても、
俺が動かせなきゃ意味がない。
マニュアルを見て、練習しないとな。
ブンペイは敷地内に的を立てた。
拳銃、散弾銃、ライフル。
納得するまで撃ち込む。
重機関銃やロケットランチャーは、
揺らぎの外に向けて練習だ。
合間に、膝を壊してから緩んだ体を
徹底的に絞る。
朝から晩まで、練習と鍛錬。
夜は夜で、マニュアルを見ながら
車両を動かす練習。
たまに、揺らぎの外の偵察にも出る。
ハイブリッド式の大型ドローンで
二キロ四方を測量したが、何もなかった。
どうせ揺らぎに逃げ込める。
だが、移動するにしても、
向かう方角の根拠くらいは欲しい。
それは、日課のドローン偵察の時だった。
ふと、足元の小さな花が綺麗で、
カメラ代わりに持ち歩いている
スマホを持ち直す。
すると、アプリが起動した。
……これでネットに繋がればなあ。
ウィキとかあれば――。
……あれ?
俺、ウィキ以上のチート持ってるよな?
揺らぎを鑑定してみる。
『世界の境界:存在の保存領域』
それだけ?
存在の保存領域……?
『その存在が
“壊れずに在り続けること”を
最優先にする領域』
よく分からんが、
存在が壊れないってことは、
死なないって意味か?
そうだ。
揺らぎの外を鑑定できるか?
(一番近い街は?)
『人類が住む一番近い集落は、
獣人が住む北北西二十キロの
大岩村。
領主がいるなら、
百二十キロ先のガルド』
……アッサリ出るんだな。
鑑定、持ってなかったから、
思い出すまで忘れてたわ。
ここまで、色々と試した。
銃の練習。
体の鍛錬。
装備の準備。
不測の事態へのシミュレーション。
さすがに、移動しようか。
ここで小説なら、
「旅立つ」場面だろう。
でも俺の場合、
移動して、店に戻るだけだ。
冒険って感じでもないな。
よし。
それじゃ行くぞ。
ボブ爺のガレージから
バギーを出す。
まずは、
大岩村とやらに
向かうとしようか。




