第2話:なぜ主人公はすぐに人里に向かうのか
目が覚めると、一面コンクリートの部屋だ。
一瞬、白い部屋かと思ったが違った。
店の事務所にあるセーフハウスだな。
そうそう、ここで寝たんだったよ。
昨日は怒涛の展開だったもんな。
まさか俺が異世界転移とは思わなかった。
そういうのは、俺の腐妹とかの担当だろと思っとったわ。
あれ、そういや今日になっても、
あんまり死んじゃったーとか、
親や妹や知人たちと会いたいとか、
あんまり思わないなあ。
これが、精神と体に安定かけるって言ってたやつか。
実はこれって重要だったんじゃね?
もし普通の精神状態なら、
まず死んだこと受け入れるの大変だし、
地球や家族が恋しくてたまらないと思う。
そして異世界で生きるのを受け入れても、
人に会いたいからと、
準備不足でここから出て死んだりしたかも。
だって俺って、
こんな状況で誰もいないのに、
落ち着いてるタイプじゃないもんな。
ずっと落ち着けるなら、
こりゃデカイチートだよ。
よし、まずは腹ごしらえだ。
食料品も毎日入れ替えらしいし、
良い肉喰ってやろう。
サーロインとカットフルーツに、
レジ横で売ってるフレンチフライとペプシ、
スシロール持って事務所へ。
サーロイン焼いて食う。
旨い。
んん?
あれ、抜けてたはずの奥歯がある?
触ってみるが、やっぱり奥歯が生えてる。
手を見るが、幼稚園の頃クギに引っかけた傷もない。
膝のサポーターを外してみる。
中学の時に――。
屈伸するが、痛みも違和感もない。
抜ける感じもない。
……おいおい、まじか。
ひょっとして、ここに戻ると
俺の体も毎回健康体に戻る?
これは至急検証せねば。
店から、消毒液と絆創膏、替刃メスを持ってくる。
怖いけど検証せねば。
指先ちょっとだけだし。
グッ……あれ?
もう一回、グーッっと……。
刺さらないのかーい!
どういうことなんだろう。
こりゃあれか、
少しでも皮膚に刺さった瞬間に治っちゃうから、
刃も入っていかないって事か。
ひざの状態も確認するか。
俺は中学生のときに、
左膝の靭帯と関節壊す結構な怪我をした。
今でも全力で走れないし、
膝サポーターも欠かせない。
先ほど屈伸した感じだと、
治ってるような気がする。
ゆっくりと空手の型をなぞってみる。
前蹴り、回し蹴り。
蹴り足でも軸足でも問題ない。
……よっしゃ。
全力で走ったり跳んだりできるのと、
足引きずってるのじゃ、
全然サバイバルの難易度ちがうぞ。
空手使えるなら、
銃使う以外の護身や近接にも有利だし。
よし、この後は、
①「揺らぎ」の向こうでは怪我するのか
②こっちに戻ったら治るのか
③揺らぎの場所は一緒なのか
を実験しよう。
早速、実験してみたところ――。
実験①:怪我は普通にする。
メスでの切創、木を殴って打撲。
不死身ではない。
実験②:揺らぎに触れた瞬間に治る。
また揺らぎの外に指を出してても治る。
万が一の時は揺らぎに触れば大丈夫。
実験③:出た場所から10メートルほど進み、
振り返って揺らぎに戻ろうとしたところ、
目の前に揺らぎが出た。
移動した先で揺らぎを意識すると揺らぎが出る。
また、一番最初に異世界に出た場所を意識すると、
セーフゾーンから出ることが出来る。
実験したところ、
あの管理者がいかに適当か分かった。
確かに不死身じゃない。
怪我もする。
けど、ほぼ不死身だろ。
一気に死ななきゃ、
揺らぎさえ触っちゃえばいいんだから。
それに、一度セーフゾーンにつながった場所に
自由に揺らぎを開けるなら、
死にかけて周りが敵だらけでも、
ここに逃げられる。
まだ数は少ないけど、
あちこちに転移装置あるようなもんだよ。
うん。
不死身ではないが、かなり安全なことはわかった。
とはいえ、
装備も無しに出ていくほど勇気はない。
ここのボブ爺は「プレッパー」気質で、
ここの土地自体が、
裏には軍の払い下げ半地下シェルターがあるから
買ったと言ってた。
シェルターの中には、
22口径の拳銃から、
ショットガンや軽機関銃までの武器と、
弾薬、食料などが、
ちょっとした体育館位のシェルターに
ぎっしりある。
おそらく、
アメリカで手に入る物は、
大体あるんじゃないかな。
まずはボブ爺の家で、
倉庫のカギとシェルターのカギを探して、
武装や装備を整えよう。
誰も居ないのは知ってるけど、
どうして人の家に黙って入ると、
気まずいんだろうな。
さて、鍵はどこにあるのかな?
うーん、入口のキーケースにもないし、
見当たらない。
いつも腰に下げてたしなあ。
あ、こういう時に鑑定って使えないのか?
(家:鑑定 シェルターとガレージのカギ)
『ロバートマケインの家
カギはガンロッカーの中の
ソードオフショットガンの銃身内
ロッカーの番号は0302』
おー、ちゃんと出たよ。
ショットガンの中って、ボブ爺らしいな。
ロッカーの番号も、
愛車のムスタングの排気量だしな。
よし、ついでに「収納」試してみよう。
うーん、とりあえず店の商品全部を入れるつもりで収納!
……あっさり全部入ったんですが。
時間経過知りたいから、
後で氷やアイス見てみよう。
とりあえず、エナジードリンク出してみよう。
あ、エクセルみたいな表が出て、
意識するだけで取り出せる。
食料とかの種類別や、
品名のアルファベット順でソート可能。
うーん、
でも銃は装填しておいて収納しないとな。
それじゃ、
ガレージとシェルター行きましょうかね。
……人も動物も虫すらいない。
風もない。
そういう時は、
自分の心臓や、息や腸の音が、
ハッキリと聞こえる。
焦りはないけど、
移動しながらでもセーフゾーンが使えるなら、
人が住む場所に向かってもいいのかもね。
さて、シェルターだ。
ボブ爺は、どんなトンデモ武器隠してるのかなっと。




