《スフェライオス観測戦闘群・実況構成体04号》“フォー”
◇◇神坂視点
核を切離空間に追放した直後。
読心術自動展開領域に反応。
とはいえ、思考が“読めない”。
同格の上位空間管理者ら以外では珍しい。
こんな存在は久しぶりだった。
同じ生物種ではなく、
ここの基底世界の住人と脳構造が大きく異なる、
有り体に言えば異文明と思われる以上当然だが。
やがて艦隊の先頭の艦、
おそらく旗艦から人型が吐き出されたのを目視。
こいつらの目的は何だ。交渉か?戦闘か?
先手を打ちたいが……。無力化にとどめるか?
とりあえず無防備に先手を打たれるのだけは避けよう。
電荷を召喚。励起開始。
「スフェライオスのみんな~、おはこんばんわー」
「今回はこのなんか変な奴をフルボッコにするよ~」
吐き出された人型が目の前まで飛んでくる。
その後、目の前で急激な逆噴射で止まった。
法術師じゃなければ蒸発してるぞ。
そして、軽い調子で喋りかけてくる。
まるでゲーム配信の実況者みたいに――いや、Vtuberの配信だ。
"スフェライオスのみんな"、ねぇ……。
スフェライオスが彼らの自称か。
さっきのテンションと全く違うな。
それっぽい言語パターンを学習したのか。
加えて、宇宙なのに声が“届く”。
全帯域の電波通信、量子通信、指向性音波。
妙に親切な……違うか。確実な返事を求めているのだろう。
さながら俺は特別ゲストか。
敵の言葉が続く。
「ふむふむー。了解。……ねえ君。名前は?」
「この戦場、今リアルタイムで中継してるんだ」
「母星の視聴者さんたちが、すっごく気にしててさ~」
「教えて?
……わざわざ言語モデルも学習したんだからさ、なんか言ってよ」
そんなノリに合わせる必要はない。
言葉の裏にある“挑発”は、余裕のなさの裏返しだと知っている。
こちらは冷静に対処するだけだ。
集中を解けば死ぬだけの話だ。
執拗に、軽い調子で、名を問う。
だが――
「……名乗るのが礼儀なら、そちらが先だ」
言った。
淡々と、正面から。
口に出す必要もない。脳波送信で届く範囲に、確実に放った。
一拍の沈黙。
次の瞬間、返ってきたのは……
「おーっとぉ!? これは予想外の展開!」
「なんと! 逆に名前を要求されてしまいました~~!」
「これは“対話フェーズ”か? いや、“トラストビルドイベント”か!?」
通信先の反応は騒がしい。
声の主が複数なのか、演技なのかすらわからない。
「じゃあ改めて――」
「私たちは《スフェライオス観測戦闘群・実況構成体04号》!」
「でも長いから、“フォー”って呼んでね★」
……子供向け番組か。
「さあ、君の番だよ! 神秘の生命体さん!」
「この歴史的な戦場に、名を刻もう!」
神坂は無言で、術式の起動に入った。
空間の端が軋む。雷が集まりはじめる。
軽薄な声の裏側にある、異様な殺意と演算能力は決して侮れないものだった。




