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娯楽侵攻文明"スフェライオス"  作者: なー
娯楽侵攻・実況文明
8/22

《スフェライオス観測戦闘群・実況構成体04号》“フォー”

◇◇神坂視点


核を切離空間に追放した直後。


読心術自動展開領域に反応。

とはいえ、思考が“読めない”。


同格の上位空間管理者ら以外では珍しい。

こんな存在は久しぶりだった。


同じ生物種ではなく、

ここの基底世界の住人と脳構造が大きく異なる、

有り体に言えば異文明と思われる以上当然だが。


やがて艦隊の先頭の艦、

おそらく旗艦から人型が吐き出されたのを目視。


こいつらの目的は何だ。交渉か?戦闘か?

先手を打ちたいが……。無力化にとどめるか?

とりあえず無防備に先手を打たれるのだけは避けよう。

電荷を召喚。励起開始。


「スフェライオスのみんな~、おはこんばんわー」

「今回はこのなんか変な奴をフルボッコにするよ~」


吐き出された人型が目の前まで飛んでくる。

その後、目の前で急激な逆噴射で止まった。

法術師じゃなければ蒸発してるぞ。


そして、軽い調子で喋りかけてくる。

まるでゲーム配信の実況者みたいに――いや、Vtuberの配信だ。


"スフェライオスのみんな"、ねぇ……。

スフェライオスが彼らの自称か。


さっきのテンションと全く違うな。

それっぽい言語パターンを学習したのか。


加えて、宇宙なのに声が“届く”。

全帯域の電波通信、量子通信、指向性音波。

妙に親切な……違うか。確実な返事を求めているのだろう。


さながら俺は特別ゲストか。


敵の言葉が続く。

「ふむふむー。了解。……ねえ君。名前は?」

「この戦場、今リアルタイムで中継してるんだ」

「母星の視聴者さんたちが、すっごく気にしててさ~」

「教えて?


……わざわざ言語モデルも学習したんだからさ、なんか言ってよ」


そんなノリに合わせる必要はない。

言葉の裏にある“挑発”は、余裕のなさの裏返しだと知っている。


こちらは冷静に対処するだけだ。

集中を解けば死ぬだけの話だ。


執拗に、軽い調子で、名を問う。

だが――


「……名乗るのが礼儀なら、そちらが先だ」


言った。

淡々と、正面から。

口に出す必要もない。脳波送信で届く範囲に、確実に放った。


一拍の沈黙。


次の瞬間、返ってきたのは……


「おーっとぉ!? これは予想外の展開!」

「なんと! 逆に名前を要求されてしまいました~~!」

「これは“対話フェーズ”か? いや、“トラストビルドイベント”か!?」


通信先の反応は騒がしい。

声の主が複数なのか、演技なのかすらわからない。


「じゃあ改めて――」

「私たちは《スフェライオス観測戦闘群・実況構成体04号》!」

「でも長いから、“フォー”って呼んでね★」


……子供向け番組か。


「さあ、君の番だよ! 神秘の生命体さん!」

「この歴史的な戦場に、名を刻もう!」


神坂は無言で、術式の起動に入った。

空間の端が軋む。雷が集まりはじめる。


軽薄な声の裏側にある、異様な殺意と演算能力は決して侮れないものだった。


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