(別視点)第一の生物
戦闘準備区画の薄暗い照明の下、数体の半機械生命体が並んでいた。
彼らはスフェライオス艦隊の無機生命としての戦艦固有の人格であり、同時に「実況者」として機能する戦闘員。
宇宙戦艦という個体そのものが戦闘を配信する「実況構造体」。
彼らにとってこの空間への侵攻はいつも通りのものになるはずだった。
──文明の存在する惑星を発見。
──長距離通信は検出できず。
──恒星系外縁。距離1光年にワープアウト。
超恒星系文明を待ちわびる彼らにとって、落胆とともに迎え、教本通りの侵攻と実況を行う、
……はずだった。
──恒星系外縁部にワープアウト……終了。
──ステルス解除。惑星文明に露出しながら接近する。
──最大推力。速度1.15c。移動開始。
──!
──至近距離に熱源確認。
──人工的な移動を確認、原理不明。観測。
──量子的被観測検出器に反応。あれには、意識が存在している。
「彼」は青天の霹靂だった。
ゆえに歪んだ喜びとともに迎えられた。
「彼」をよく観測するために航行を停止。
──実況を開始する。
〈スフェライオス観測戦闘群・実況構成体04号 / 侵攻配信ログ:#D-741外縁〉
《配信開始──視聴者数:3.2億》
「──はーい母星のみんな、見えてるー?
えーっと、本日の侵攻ログは……あれ、なにコレ?」
実況構造体の発声ユニットが、明るく軽薄な声を放つ。
艦橋内壁にはモニターが立ち並び、「彼」が飛んでいる光景が映る。
計算された構図。
モニターの横に滑り込んだ実況構造体は通販番組の紹介のようにモニターを強調する。
「《至近距離に“意識反応”……?》
外縁で? ワープ直後に?
……ねえ君たち、これ文明レベルおかしくない?」
画面に、「彼」が真空を滑空する姿が映る。
人間ではあり得ない運動。
だが実況構造体は“未知”に歓喜する。
〔コメント〕
・〔マジ?外縁で有機生命が飛んでるの?草〕
・〔これ高エネ生命体でしょ。絶対おいしいデータ〕
・〔え、今日レア回じゃん?〕
・〔毎回おいしいところもっていくよな“フォー”って〕
「──観測ログ更新。
量子的被観測負荷 閾値突破。
これは……“意識の観測能力持ち”。
素敵だね。もしかして、君……」
実況構造体、あらためフォーは一瞬、声を下げた。
「……“超恒星系の文明”?」
その推測は、艦隊全体を熱狂に染める。
《全艦:対象個体の観測優先度を S へ昇格》
「Sランクだって……! 君、今日から人気者だよ?」
フォーは「彼」に通じるともわからない声を独りよがりに発信する。
その瞬間、
艦隊側の “対外初アクセス信号” として光線照射が始まった。
「彼」はそれを回避している。
「おっと、逃げる逃げる。
捕獲ビーム、通じない? いいねぇ……!」
〔コメント〕
・〔あの速度で避けるの何?物理学どこ行った〕
・〔身体スペック:バグ〕
・〔捕まえろよ早くwww〕
そして、砲塔が旋回し実体弾を射出した瞬間。
《対象個体、弾幕を意図的迎撃》
《迎撃率:100%》
「おっと、全弾迎撃された?
なんで?」
当然、周囲の小惑星への影響、文明惑星への落着の可能性には思い至らない。
思い至ったら思い至ったで彼らの戦略に組み込みそうだが。
《対象の迎撃弾の素材不明》
「へー……?解析しよっか。副砲発射」
その直前、砲塔が雷撃で破壊される。
フォーの声が一段跳ねた。
「──EMP、電磁障害発生。
嘘でしょ……!?
何を使って無機生命艦の砲塔を焼いたの!? しかも有機生命体が生身で!?」
〔コメント欄が爆発する〕
・〔は?????〕
・〔反則では?〕
・〔これ完全に“異文明 S クラス”だろ……〕
・〔今日の侵攻神回確定〕
フォーは背筋を震わせる(比喩的な処理)。
「やだ……好き。
全部見せて。全部、解析させて。」
そのとき。
《別艦隊:第二ワープアウト準備完了》
「──ああもう、増援来ちゃうの?
いいけどさ。
でも最初に見つけたのはボクだからね?」




