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娯楽侵攻文明"スフェライオス"  作者: なー
リライト前
15/23

スフェライオス母星・反転攻勢

超空間転移。もとの基底空間に出る。

座標は、基底世界・恒星系・外縁部・オールトの雲圏内。

つづけて背後にワームホール開闢を確認された。

第2艦隊旗艦がワープアウトしてくる。


と、このような感じでともに帰ってきたわけだが……。


周囲を確認する。


第2艦隊接触メンバーの法術師を

──まあ、救出作戦冒頭でEMLに撃ち抜かれた法術師以外は──

全員健在だ。


スフェライオス第2艦隊は……旗艦含め6隻。

意外といるもんだな、穏健派。

残りの推定過激派は……全艦沈めたか。


穏健派代表・セファル(穏健派メンバーを把握している)、

創生者(スフェライオスの脳構造を把握してる)

そして法術師団による三重構造の識別と読心術による識別がなされているのだろう。


とくに異常は見受けられない。

セファルからの警告も干渉もない。

過不足なく“正しい穏健派”を救出できたってとこか。


「というより、旗艦の降伏のタイミングに同期して、他の艦も降伏したらしいですよ」

近くの法術師がそう言う。

そうか。

まあ、“全員過激派”という一時の予測よりは、遥かにいい結果だ。


CICへ超空間転移。

……ああ、もちろんスフェライオス艦船はCICには入れない。

リモート通信による対応となる。


会議を始めよう。


◇◇


CICに通信要請。

まあ、セファルと第2艦隊だろう。

CIC通信オペレーターが許可する。


──「第2艦隊旗艦だ。まあ、アインと呼んでくれ」

アイン……実況構造体の名称か。

あれ?よく考えたら実況構造体はCICに入れるな?

……もしかして、砲艦外交?


続けて会議に続々と第2艦隊個体が参加してくる。


「長距離砲艦クラス、No.2。まあ、ドライで」

「ミサイル艦クラス、No.5。グレイ。」

「電子支援艦クラス、No.6。ヘーだ。」

「レーダー支援艦クラス、No.9。カーム。」

「重護衛艦クラス、No.12。ファイ。」

「最後に重戦艦クラス、旗艦。アインだ」

◇◇

第2艦隊・参加構成体一覧(CIC通信ログより)

アイン(Ain)

 > 重戦艦クラス。第2艦隊旗艦。実況構造体。

 > 「まあ、アインと呼んでくれ」

 全体のまとめ役。自己紹介の仕方から見ても、やや余裕のあるリーダー格。実体験を持つ実況構造体というのが特異点。対話志向の兆しあり。


ドライ(Dry)

 > 長距離砲艦クラス・No.2。

 感情抑制が強いが、淡々とした精密な指摘を行うタイプ? 砲撃精度やベクトル計算に特化してそう。


グレイ(Gray)

 > ミサイル艦クラス・No.5。

 やや皮肉屋、もしくは慎重派。誘導制御系の高度処理ユニット搭載。非情な判断も辞さない?


ヘー(Hé)

 > 電子支援艦クラス・No.6。

 情報収集、撹乱、電波干渉などの専門家。柔軟な思考回路を持ち、ユーモアを解す可能性も(あえて中華風名?それとも無意味な音?)。


カーム(Calm)

 > レーダー支援艦クラス・No.9。

 常に冷静。全体把握・状況認識に長けるが、口数少なめ?ドライとの連携が深そう。


ファイ(Phi)

 > 重護衛艦クラス・No.12。

 前衛防衛・遮蔽・随伴防御に特化。勇敢だが自己犠牲的な傾向あり?古典数学的な名に意味があるかも。


◇◇

よし、全員そろったな。

「第2艦隊穏健派は、無事救出完了。――次は、母星だ」


法術師のひとりが眉をひそめ、問いかける。

「で? どうやって行くつもりなんだ。スフェライオス母星の座標、形式エラーで弾かれてたはずだろ」


応じたのは、救出された第2艦隊の穏健派。

「座標は我々が提供する。いや……こちらで《通路》を開いた方が早いだろう。

我々がワームホールを生成する。あなた方は、そこを通過すればいい」


「そっちのほうが確実だな。今のところ、母星とこっち双方の座標を正確に把握してるのは、あんたらだけだ」


「いつ出発する? 我々はいつでも構わない」


「――今だ。迷ってる暇はない。電撃戦で行く。

スフェライオス母星救出作戦、始動!」


そういえば、だ。

「あー。ちょっといいか?

転移先の空間情報を把握したい」


「心配は無用だ。

仮にも空間間航行艦である我々のセンサーによる観測結果では、

……こちらの空間と本来の空間との間に顕著な差異は確認されていない」


「真空の情報量、絶対零度、プランク長、空間曲率、重力定数……すべてか?」


「ああ。物理定数の範囲内での誤差すら見られなかった。完全に一致している」


「……同じか。都合がよすぎるな」

軽く呟いたその言葉は、自分自身に向けたものだった。

無機と有機が共存する異星文明圏で、基本定数が地球と同じ──

……収斂進化?空間スケールで?

まるで“誰か”が合わせているような。


本当か?本当にみるべき法則に見落としはないか?

こちらは有機生命。向こうは無機生命。

本当に認識は同じなのか。


クオリア問題が脳裏をかすめる。

他人の見る“赤”は、自分の“赤”と本当に同じか?

言語も物理も、根本的には知覚を通じて得られる。

ならば、今感じている“空間的同一性”も──果たして同じ“実体”を指しているのか?


そんな疑問をよそに。

第2艦隊たちがワームホールを開闢する。


俺たち法術師はそこに続々と飛び込む。


眼前に現れるのは、かつて見たことのない空間。

超空間ワームホールによる転移。

もっと別の“なにか”を超えているかもしれない。

そこには、法術師連合にとって全く未知の、

特殊な位相重ねによって生成されたワームホールが開いていた。


神坂は一歩、足を踏み入れる。

目の前に広がるのは、見たことのない空間。

星も闇も存在しない。ただ、数千層の空間位相が干渉し合うことで編まれた、

波打つような非ユークリッド幾何の景観。


「現実が……分厚くなる」


時空が軋む。

時間軸が膨張し、過去と未来の境界が一瞬だけ曖昧になる。

空間は不連続な層に変化し、神坂たちの身体は、層間を流れるベクトル場の中を情報波として滑っていく。


因果律が崩れ、エネルギー保存則すら一時的に意味を失う──

それでも、すぐに再構築される。

まるで「通行人には触れないでください」とでも言わんばかりに、現実そのものが形を戻してくる。


――境界を、越えた。


空気が違う。音の響きが微妙に鈍い。


各種定数は表面上同じでも、

分子レベルでは生化学的挙動に明らかな偏差がある。

生化学のありようすら異なるため、徐々に体内の違和が大きくなる。


法術師たちはその場で、素粒子の再配置──生体再構築を始める。

素粒子オーダーベクトル操作。

空間適応のため、自己の組成をこの空間にフィットさせる。


ベクトル操作、トポロジー変換。

ここは、既知の宇宙ではない。


その後、前を見据える。

音も光もない先に、“母星”の座標が存在する。


神坂は、あらかじめ設定された干渉場の座標を思い出す。

その向こうにあるのは、穏健派すら届かぬ、

スフェライオスの本質が埋め込まれた「真なる星」。

本当に、そこに星があるのか。

それすら、神坂の視覚では確かめようがなかった。


神坂は呟く。

「行こう。ここからが本番だ」


母星が見えてきた。


銀青色の星雲を背に、彼らの母なる惑星がその輪郭を現す。

かつて創生者が蒔いた情報の樹が育ち、

いまや自己進化する無機の文明を宿した球体——スフェライオス母星中枢域。


だがその星も、表層はすでに黒く、爛れていた。

第2艦隊の穏健派が支配していた広域区画は、

すでに過激派の手に渡ったのだろう。

マグマのような演算光が脈打ち、断続的に惑星表層から電磁嵐が吹き上がる。


「距離、0.2天文単位……惑星の外殻に進入可能です」

読心術師の一人が報告した。


「現地の物理法則、座標系を補正。こちら側の空間モデルでオーバーライド開始……」

神坂は空間演算を指示する。


空間がひずむ。法術師たちは、

惑星を包む干渉的な超構造の“膜”に自らの空間律を浸透させる。

あたかも“異なる宇宙”の一部を、母星空間に重ね合わせるように。


「空間係数確定。現在、局所プランク単位:1.22×10^34秒。共有化完了しました」


「よし。現地の演算密度を基準に降下ルートを構築する。感性干渉を最小限に」

神坂の声が、周囲の法術師たちの精神に流し込まれる。

さあ、救出作戦の開始だ。


──その直後。

読心反応。数、三。


人型。大気圏を上昇してくる。

既に我々が測定した、第1宇宙速度を超過。

大気圏外への迎撃。

速度は、歪んだ殺意をまとっていた。


……実況構造体の迎撃個体。

そう推定される。


通信チャンネルを自動侵食。

信号波形にエンコードされていたはずのノイズが、

突如明瞭な「声」として意味を持ち始める。

幻聴に似た少女ボイスが、無線通信を通じて響いた。


メル「……こんメル~っ☆ あなたの心に直接接続♪ 好奇心担当、メルで~す♡」

リット「状況冷却、情報蒸留、感情は凍結。機能担当、リット。……ふふ、裏声モードにする必要ある?」

ライ「らいらいらいっ! 殺意満タン突撃型! 推しメンのライがぶち抜いてあげるよぉ☆」


うわでた。Vtuberもどき。


3つの声が周波数的に不協和音を起こしながらも、“和声”として重なっていく。

あらゆる感覚フィードに干渉するように、それは空間を揺らした。


「「「スフェライオスΔ群・実況構造体、ただいまご参上っ☆ 

ターゲット様、心の準備はいいかなぁ?」」」



断熱圧縮熱で赤熱した人型は、

我々法術師の眼前で空気を割るようにブレイク。



そして──こっちには、ライとやらが来た。

「さーて、敵性法術師、8名確認。

個体No.4の正体……っと、あらら~、既知個体じゃん!

あの、同接最大をフォーに授けた、あの神坂じゃん~!」

にやついた声が跳ねる。


「じゃあ! こっちも全力でいこっ☆

EML、らんしゃ~っ! 撃ち抜くねっ!」


直後、電場展開を感知。

……芸がないな。またEMLか。


三条の光が星の光のない宙域を切り裂く。


……プラズマ弾頭・電磁加速弾。

第2艦隊の戦闘から学習したか。


細心の注意を払って、“回避”。

さすがに、防御するより回避の方が手っ取り早い。


……が。


「甘い甘い~っ♡ びっくりしてね!」


(魔力場内にて空間撚れ(トポロジカル歪み)を検知)

(反物質と推定)

(直近座標における対消滅反応を確認)


閃光。

……は?いや、なぜ直前まで検知できなかった?

いや、後だ。


「プレゼント・フォー・ユーっ!

──爆ぜろっ☆」


即座に、グラフェン×タングステンの多層ラミネート装甲、

および局所展開型・非ニュートン流体防護結界を展開。


――放射線・衝撃波に対応。


空間そのものが爆ぜるような余波が、

電磁的な咆哮を上げながら周囲に散っていった。


衝撃波が緩衝材を叩く。

衝撃がやんだ直後。


「まだまだいくよ~っ☆ いぇーい!」


弾けるような声。

あの人型が、宙域でひょいっとジャンプした。器用だな?

重力を無視するその様に、器用さと異常性を感じる。


示指を地表に向けて──


「制圧・攻撃、いっきまーす♡」

こちらに、ビシッと指を差す。


直後、周囲に小規模熱源、多数。

(誘導性を確認)

(弾頭:走査不能)

またか!


「またまたビックリ弾頭のプレゼントっ♪ うけとってねぇ~っ!」


全力回避。耐G術式。《魔力の弾》。

回避しつつ、迎撃。

続いて、ミサイルに対してばら撒けるものはすべてばらまく。


マグネシウムリボン生成。着火。散布。

アルミ箔片散布。

魔力圧縮。光エネルギーに変換。拡散。


熱源誘導・レーダー誘導・画像誘導への対策だ。


が。被弾。

なにが抜けた?

……直後、彼女の声が重なる。


「きっらっきらだったね~☆ でも、む・だ・っ♪」

──そして。


「あすぽーつ! ってことでぇ……転送!ドカーン♡」


(微小な空間歪曲を検知)

「転移マーカーミサイルか……!」

これが先ほどのトリックか。


(ワープアウトを確認)

(高電圧体。電圧:10メガボルト)

落雷レベル。肉体……タンパク質を焼きに来た。

周囲から放電が炸裂。

雷撃が、空をねじ切るように襲いかかってくる。


ベクトル操作は雷速には対処できん。

反射的に、銅の網を魔力で生成。

展開。全身を覆う。

◇◇


闇。星すら存在しない暗闇の宙域を、

雷撃とEMLの閃光が無慈悲に切り裂く。

対消滅反応が咲き乱れ、破壊の舞踏がこの空間を支配していた。


そんな混沌の只中、銅の檻に籠もる神坂は、冷静に反撃の準備を整える。


素粒子オーダーベクトル操作。

原子構造干渉。物質置換。

変換先はTNT。爆発の破壊力を魔力で呼び起こす。

効果範囲は半径2メートル。

読心信管を内蔵し、法術師間のIFF(友軍識別機能)もセット。

信管範囲は0.5メートル。


先に構築した魔力を弾頭として。

敵が乱射してきたEMLの電場──その偏在性を逆手に取り、シーカー機能を設定。

推力制御用の魔力構造を再調整。

比例航法、三系統を同時に構築。


三連構築──発射準備完了。


銅の檻の隙間から、

淡く輝く三本の魔力の矢が、静かに──されど疾く──宙域へと放たれた


魔力の矢は、闇の中で鮮やかな閃光を放ちながら敵機の装甲を貫いた。

EMLの電磁防御をかいくぐり、電場制御系統を一つ、また一つと破壊していく。


炸裂。

点ではなく、狙い澄ました「面」としての破壊。


迎撃個体たちの挙動が乱れ──ついには、沈黙。

電磁波も、咆哮も、熱源すらも、虚空に消えていった。


──静寂。


神坂は深く息を吐く。

だが、まだ目は閉じない。


「まずは一掃完了。次へ進もう。」

声は平静。その目はすでに次の戦いを睨んでいた。


◇◇


しかし、

「なめ……ないでよね!」


「虎の子の対衛星ミサイル、ぶっ放しちゃえっ!」


「ミサイル軌道は空間制圧、パターンB!にがさないよ!」


「まだまだ盛り上がれるよ!いぇーい!」


「……凌げるかなっ?」


ボロボロの三体がなにやら言い残して大気圏に墜落していく。


地表面より立ち上がる熱源体。

ICBM……否、ASM(Anti-Satellite Missile)。

飛翔速度:第1宇宙速度を発射後0.3秒で突破。

ベクトル軌道に乱れなし。誘導性はない。だが……。


(誘導性なし)

(弾頭不明)


次の瞬間——


「中性子星弾頭、どっかーん☆」


重力異常。

だが今度は違う。光が引き絞られる前に、膨大な質量密度による空間の軋みが宙域全体を揺らす。


直径1メートル弱、密度10^17kg/m³。

人工的に生成・圧縮された中性子物質。


炸裂しない。

ただ、存在しているだけで空間を崩壊させる。


近傍にあるあらゆる物体は、自壊。

分子間結合が耐えきれず、構造を維持できない。

ミサイルの残骸も、バリアも、空気ですらも。


「なんかすっごーい圧縮感☆ まさに“アイドルの重圧”って感じ? ふふっ♪」

──実況構造体、メルの声が艦内に響く。


思考加速。100倍に伸長。


どう対処する?

スフェライオス母星上空の空間が軋む。揺れる。

法術師たちの飛行術式が微細に乱れ始める。

ベクトル制御のフィードバックループに歪みが生じ、姿勢制御が一瞬遅れる。


「質量の暴力だと……!」

神坂は咄嗟に手を構え、術式を起動する。


中性子星なぞ胞構造間の紛争でも見たことがないぞ!

たいていは空間操作や切断で決着するからな。

だから完全に……。


──対処法を知らない。


座標転移。同期転移。法術師たちを巻き込み影響圏から脱する。

いや。わかってる。お茶を濁しただけだ。

対処しないと穏健派ごとスフェライオス母星が崩壊する。

あいつら、自爆かよ!


読心反応はすでに消えている。

あの実況構造体たちはすでに中性子星に圧壊されたらしい。


空間が、呻くような音を立ててよじれていく。

それは音ではない。だが、全身が“きしむ”ような圧を感じる。


「このままじゃ空間そのものが崩壊する……ッ!」

一人の法術師が呻いた。空間歪曲の影響で術式座標が乱数化し始めている。

一点でも座標軸が破綻すれば、飛行術式も、魔力流制御も維持できない。


神坂は冷静に観察していた。

否、観察せざるを得なかった。

あまりに異質だ。

力の質が、“魔力”でも“物理”でもない。ただの質量。


「解析する」

神坂は術式回路を展開し始めた。

魔力の流動を一時停止。空間観測に全リソースを割り振る。


──中性子星核。

──10の17乗kg/m³。

──高速回転。重力を発している。


この攻撃は、明確な粛清だ。穏健派だろうが、民間だろうが関係ない。

この星全体を、“質量でなかったことにする”、それが目的。


ふと、スフェライオス艦隊侵攻当初に思ったことを思い出す。

**

オールトの雲の小惑星群が惑星系、

──文明のある惑星に落下したらどうしてくれるんだ。


……この宙域の背後に“誰か”が住んでる。

雲間に星を数える、小さな文明。

子どもが夜空を見上げる、そんな時間を守るために戦うのがバカバカしいか?

あの星、基底文明から観測すらできない、

俺たち超文明の戦いの趨勢次第で理不尽に滅びる。


……馬鹿かお前ら。

**

──本当に、馬鹿だ。


スフェライオス母星がひび割れてきている。

潮汐力に引っ張られてる。

高速回転に合わせて脈動しているようだ。


……。

高速回転?

なるほど、遠心力。


神坂の脳裏に、かつての空間安定演算式の一節が走る。

回転体の臨界点は、内部の圧力と遠心張力が拮抗する瞬間だ。

もし、それを超えさせることができれば──


「回転速度を……強制的に上げる。そうすれば……」


遠心力で、中性子星核が自壊する可能性がある。

正確には、“構造を保持できなくなる”というべきか。

中性子物質の圧縮には絶対的なバランスがいる。

そこを崩す。たとえ相手が物理法則そのものでも──やれる。


「空間ベクトル操作、始動」

神坂は重ねて術式を呼び出す。

この空間を回転場と化す。


重力井戸の中心座標を中心に、

スフェライオス母星上空に、極端なトーラス状の回転界が出現する。


「これが……お前たちの“粛清”への答えだ」


加速。

加速。

加速──。


空間そのものが唸りをあげ、

中性子星核の自転が加速されていく。


ミリ秒で1回転……

0.1ミリ秒で1回転……

質量が、回転に“抗う”。


その瞬間──


中性子星核、裂けた。


断裂ではない。崩壊だった。

質量の均衡が破綻し、外殻がねじれ、内部圧が逸脱。

もはや中性子物質ではいられない。


核は閃光をあげ、圧縮を失い──

超高密度のプラズマの奔流と化し、宙域へ霧散した。


……。


沈黙。


いや、静寂が戻ってきた。


「……消えた?」

誰かが言った。

神坂は答えない。

ただ、目を閉じて一つ息を吐く。


「勝ったとは言わない。

 だが、まだ立っている。……それで充分だろう」


量子通信傍受。セファルか?展開。

◇◇

【最終通信ログ 実況構造体メル・リット・ライ】


メル

「えーっと、やっぱりすごかったよね〜!

さすがあの中性子星の圧縮感、もう“重さ”がガチだったもん♪」


リット

「だけど、相手もやるね~!

術式の精度、冷静な判断……

私たちの“質量の暴力”も勝てなかったね。仕方ないけど。」


ライ

「ぶっちゃけ、今回の負けは認めるけど、

この先ももっと盛り上がるから、みんな期待しててね!

だってさ、これで終わると思ったら大間違いだよ〜☆」


三姉妹(重なり合う声で)

「また会おうね〜♡ 次はもっとスゴイの連れてくるから〜っ!」


《通信途絶》

◇◇


……あの中性子星兵器を凌いでいたのか。

まあいい。無力化はしたとみる。

次が来る前にだ。


さあ、穏健派救出作戦、遂行だ。

俺は静かに息を吐いた。

大気圏へ──降下開始。

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