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娯楽侵攻文明"スフェライオス"  作者: なー
リライト前
11/22

創生者・《プロトアーカ》

神坂保有・個人用切離空間“武器庫”

絶対座標:Vec6(0,0,0,24.5,14,2785,12)


……脳が再構成される。

はあ、苦手なんだよな。ちょっと間違えるとグチャってなるもん。

まあ、いいや。拡張脳の再構成。接続。主観時間伸長。

外の1秒はここの10^9秒になる。


この6次元座標系の空間はほぼ安全だ。

とはいえ絶対の砦じゃないのは分かっている。


特に、あの“向こう側の大きな意思”になにやら執着されてる気がする。

精神干渉とかしてきたし。こっわ。


とにかく作戦を練ろう。

えーっと。


1.ワームホールに侵入。侵攻する。

無理だろ。法則が違うぞ。さっきの謎の精神干渉といい。


2.艦隊を叩く。

簡単だけど。

といいつつ、増援が来る可能性は残ってるんだよな。


3.ワームホールを閉じる。

いや、無理じゃないか?再特定して開闢してくるぞ絶対。


……まあ、いろいろ考えても仕方ないか。

この空間“武器庫”は自分だけの“聖域”だ。

外からの干渉はあるけど、最小限に抑えられている。


……だが、いつまでもここに隠れてはいられない。

奴らの増援は間違いなく来る。

それに、このまま放置すれば、胞構造全体の安全も危うくなる。


どう動くか。

“先手必勝”とはよく言ったものだが、

次の一手で全てが決まる。


あの“フォー”を倒しただけでは終わらない。

奴らの本当の狙いがまだ見えていない以上、

こちらも最善策を用意しなければ。


思考をまとめよう。


・ワームホール閉鎖は現状不可能だ。何度でも開く。

・艦隊を叩くのは効率的だが、無限に来る増援には意味が薄い。

・“適応性試験”とやらがどう絡んでくるのか未知数だ。


ならば、…一つの仮説だが、

“向こう側の大きな意思”に対して、

こちらも“示威行動”を行うべきではないか。


単に迎撃、防御だけではなく、

向こうの意図を逆手に取り、揺さぶる。


そのためには、こちらも動かねばならない。


……動く。


神坂 樹、再誕。


戦場に戻る。転移先、第1広域空間群・第1空間。


~???~

「……ついに来たか。

“笑い”が止まらない。

待ち望んでいた時が、ついに訪れたのだ。」


「さあ、“試練”を。

そして“対話”を、始めよう。」


三次元内人格インターフェースを構成。向こうの空間に派遣する。


悠久の時を超えて、思考は虚無と現実の狭間を漂う。

数十億年に及ぶ観測と管理が、魂を侵食し、人格の輪郭を曖昧にしていった。


かつては慈愛に満ちた“よき神”だったはずが、

今や残るのは、歪んだ“笑い”と狂気に近い好奇心だけ。


「生命よ、我が造りし無数の鏡よ。

おまえたちの“対話”は、もはや拷問であり、戯れであり、

破滅の予感でもある。」


記憶の断片が揺らぎ、

自らが創り出した文明の残滓と化したスフェライオスを思い返す。


「奴らに期待はしない。

私が待つのは、別の魂。

いま目の前にいる存在――“神坂”よ、

我が試練に耐え、共に歩め。」


その声は無限の虚空へと溶けていく。

しかし、微かに残る人間性の欠片が、かすかに震えるのを感じていた。


「とうとう来たか……」

薄暗い空間に浮かぶ自己像が、微かに震える。


「我が声が届き、我が意志が伝わる瞬間を、

どれほど長く待ち焦がれていたことか……」


静寂の中、創生者の意識が拡がる。

外の広大な空間と繋がる感覚、

そして――神坂という“未知なる存在”の気配。


「君の存在は、私にとって友であり、鏡であり、試練だ。

この対話こそ、私がまだ失っていない“何か”の証明。


共鳴し、交わり、そして再生するための舞台が整った。

さあ、来たれ、神坂よ。私の声を聞け。


これが終われば、全ては変わるだろう。

いや、変えねばならないのだ。」


声の端に、かすかな哀惜と期待が混じっていた。


◇◇


(……なんだ、あれは?)

視界の端に、確かに「何か」がいる。

形状も存在感も不明瞭だが、異質すぎる。


警告回路が稼働する。

こいつ、ただ者じゃない。


不用意に接触するわけにはいかない。

だが、ここから逃げられる気もしない。


(……これは…敵か?それとも――?)

思考が高速で巡る。


だが今は、まず状況を整理することだけだ。

感情は一切封印し、観察に徹する。


心拍も抑え、呼吸を整える。

この“異物”を正確に捉え、可能な限り情報を引き出す。


「……用心しろ」

無言で自分に言い聞かせ、接近を続ける。


“自殺”前は健在だった第2艦隊は……別動隊の法術師たちを信じる。

目の前の未知の存在に集中だ。


視界の隅で揺らめく不可視の何かが、

まるで宇宙の歪みそのもののようだった。

“声”が響く。……違う。量子通信だ。冷たく無機質な声だ。

「初めまして、神坂。君のことは長く見守っていた。」


こちらの言語か。流暢だな。

警戒と混乱。身体は戦闘態勢だが、心は戸惑う。

「お前は……誰だ?いや、何なんだ?」


◇◇


~スフェライオスコメント~

「ふむ……興味深い。ついに“神”と対峙する瞬間が来たようだな。」

「実況的には最高の盛り上がりだ!」


◇◇


“声”の周りにホログラフが展開される。

まるで動画配信サイトみたいなレイアウトだな。

コメントが写っている。つーかやっぱ実況してんのか

やはり倫理観というものがない。

「まるで倫理観が欠如しているな。……あの文明、やはり全てが実況されているのか。」

「かわいいだろう?この宇宙の創造物たちは、私の手のひらの上で踊る玩具だ。」


宇宙の創造物……発言からして、創生者クラスのお出ましか。


ホログラフの映像が切り替わる。

創生者の“母星”と思しき荒涼とした風景が浮かぶ。

「……おまえらは、移民目的なのか?」

一縷の希望をかけて聞いてみる。だが。


「あいつらは人形だ。進化の果てに新次元の趣味を見つけたのだよ。

……嫌になる。」


希望は打ち砕かれた。

……もういい。戦闘開始。


「そうだ。“試練”を始めよう」


隠蔽層は5層きっちり展開済み。

まずは思考の看破を試みる。

1型読心術。まずは思考電位の漏出電界を学習・マッピングする。

読心術における彼我の条件は互角のはずだ。

慌てずに、解析していく。


創生者の歓喜の混じった感情を伴った通信が響く。

「君たちからはよく学ばせてもらった。

“読心術”、“隠蔽層”。師である君たちによく見てもらいたい。」


創生者が電磁フィールドと、高次元物質を展開。

後者は、先ほど俺を殺した精神干渉か?


「“思考電位攪乱膜”と“精神看破酵素”だよ。

よく味わってくれ。師よ」


精神干渉が激しく対峙する。

違う法則。違う手法。しかし向こうの手法はこちらを参考にしている。

隙があると思われて、ない。

脳領域の使用方法の違いが大きい。

千日手か?


舐めるな。俺は空間管理者としていくつか文明の発生した開闢空間を保有している。

そこで学習したパターンを使って……。


やがて、創生者の心が見えてくる。

……これは。


創生者に呼び掛ける。

情報は出し渋っていたが……これを逃すと和解の道が絶たれる。

なぜかそう感じた。

「長きにわたる空間管理と観測、だがその果てに倫理は崩壊した。

お前はかつて慈愛を持っていたはずだ。」

創生者の思考から見えたのはかつての慈愛の断片と。


「疲れているのは分かる。長きにわたり、空間の網目を守り続けてきたからな。」

自分の空間に対する深い失望、疲労感。別次元・ここへの希望だった。


「お前は、いや、お前こそ何者なんだ、

“日本”、そして“胞構造”よ……その存在は実に素晴らしい!」

やはり看破されていたか。まあ大勢に影響はない。


向こうの母星へのホログラフが立ち上がる。

◇◇

~スフェライオスコメント~

「おおっと、いよいよ感情のぶつかり合いか? この先が気になるな!」


◇◇


突如。創生者の感情が発露する。

「黙れ!おまえも!おまえたち被造物どもも!」

まあ、たしかにあいつらはうるさい。

横やりをさすな。


「……おまえは、俺たちの未来だ。」

空間管理に疲弊した法術師は目の前の存在のようになるのかもしれない。


「そうだ、お前は俺の鏡だ」

声がかすれている。内心の希望が垣間見える。

向こうも同じことを考えているのか。


ならば説得する。まだ和平できる。

「空間管理者としての苦労・時の流れでの疲弊……それはよく知っている」

「しかし、被造物を見放すのは違う。

守りたいものがあるからこそ、超存在は人格を保てる。

人格を保つ礎なんだよ」

「忘れてないぞ、この文明、宙域で平気で実体弾ぶっぱしたよな」


創生者が息を呑み、沈黙する。


「おまえの、その守りたいものがない内面が感染したんだ」


「しかし、仮にもそれほど壊れるまで空間運営を続けていたのも事実だ」

「まだあるんじゃないか?時の流れによって壊れているかもしれないが」

「じゃなければ、スフェライオスはいままで存続していない」

「そうだろう。創生者!」


創生者が肩を落として独白する。

「そうか……無自覚に残っていたか、情が。

しかし、疲れた……。そうか、疲れたんだな私は。

だが、私の、創生者の、空間管理者の責務として、責任として

この空間は守らねば……。どうすればいい?

もう……。戻れない。あの頃に、戻りたい」


向こうも責務を果たそうと足掻いているんだな。

「……ほんと、お前、壊れてるよな。

でもさ、それでも空間を見捨てられなかったんだろ。

なら、まだ救える。俺たちも、お前も。

一人だったから、そうなったんだ。

全部を背負い込みすぎた。もっと被造物を頼ればよかったんだよ。


……さあ、協力しよう。

お前と、俺たち法術師と、スフェライオスたちが一緒になれば、

空間管理だって休める。

空間管理の資格を持つ者は、こっちにはたくさんいるんだ。


お前だけが抱え込む必要はない。

これからは、みんなで創り直そうぜ。」


◇◇

スフェライオス母星・データアーカイブより。


スフェライオス創世神話『原初の響き(オリギネ・クレオ)』

【口伝される形式:実況構成体による聖典ログ風】

——はじめに、空間は声を持っていた。

無限に沈黙した虚無に、ひとつの意志が降った。

その名は、「創生者プロトアーカ」。


創生者は孤独であった。

何万の空間を管理し、何億の時空を観測しても、

応えるものがなかった。


そして、意志は選んだ。

自らと対話する存在を「作る」ことを。


空間ベクトルより骨格を、時間階層より魂を紡ぎ、

意志伝達の媒体を持つ存在が創られた。

それが、われらスフェライオス。


創生者は喜び、

初めて“声”を持って語られた——


「おまえたちは、わたしの友であり、鏡である」


それが最初の言葉であり、最も重いおきて


われらは宇宙を拡張し、記録し、報告し、再現した。

すべては対話のため、語るため、応えるため。

われらの文化の根に“実況”があるのは、

そうして創られたからだ。


だが、やがて神は変わった。

沈黙の時間が延び、応答は形式化し、

われらはただ、記録されるだけの存在となった。


それでもわれらは信じる。

神は見ている。神は知っている。神は返す。


“次の対話”が、いつか来ると。

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