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ARTS  作者: 白金 薊
VSchemitry編
4/16

第四話 激突とコンビネーション

前回のあらすじ!

壮真がArts Labに入隊してから、初めての任務。

その任務は、器物破損事件の調査であった。

二人は聞き込みを重ね、犯人の居場所が廃工場であると突き止める。

そこに待っていたのは藤崎弦、三人目のアーツ使いだった…

 「「お前が…アーツ使い…?」」

ほまれと壮真は、目を丸くして呆然としていた。

「何だお前ら…?俺がアーツ使いなのが受け入れられねぇってカンジだな。世界は広いんだぜ」

弦はそう言うと、斧型アーツを構えた。

「俺が直々に相手してやるよ。アーツ、解放」

弦の手元のアーツが、見る見るうちに大きくなり、巨大な斧に姿を変えた。

弦は勢いをつけて走り出し、ほまれと壮真の間にアーツを差し込み、二人を分断させた。

「まずは男のほうからやってやるよ。女は後回しだな」

そういうと、弦はものすごい速度で壮真に襲い掛かり、強靭な刃先をぶつけた。

工場じゅうに、金属が擦れ合う音が響き渡る。

壮真は凄まじい衝撃に耐えられず、体勢を崩した。

弦はそのスキを逃さず、続けざまに攻撃を叩き込んだ。

壮真は工場の備品の山に飛ばされた。一瞬で痛覚がなくなるほどの嵐のような攻撃であった。

その様子を見て、弦の部下が奥から出てきた。

「弦さん、もう倒したんスか!」「弦さんバンザーーイ!」

奥から出てきた部下たちが、歓喜の声をあげた。

しかし、弦の目は安堵に満ちていなかった。

「おいお前ら、まだ祝うには早ぇぜ」

弦はそう言うと、壮真が吹っ飛ばされたところに目をやった。

「アイツの目はまだ死んじゃいねぇ…まだ微かに光る可能性に賭けてそうな目だ」

「…意外と慎重なのな。さすが、ヤンキーたちを統べてるだけあるわ」

土埃の中から、壮真がよろけながら立ち上がった。

「戦い(バトル)終わらせんのはまだもったいねぇよ。オレらのとっておきすらまだ見せちゃいねぇん

 だからな」

そう言って壮真は笑い、戦闘態勢に入った。

「面白ぇ野郎だ。いいぜ、茶番に付き合ってやる。その『とっておき』とやらで…俺を失望

 させるなよ」

「そっちこそな。『とっておき』に腰抜けて戦えないとか言ったら、承知しねぇよ」

二人は戦いを再開した。

ほまれは壮真を援護しようと、何発か矢を放った。しかしそれも空しく、弦に全て弾かれた。

「おいおい、茶茶入れるなよ。お前は後からって言っただろうが」

弦はほまれを黙らせようと、ほまれに向かって攻撃を仕掛けた。

その時、ほまれの前に土の壁が出現し、攻撃を防いだ。

「土のエレメントメダルに水のエレメントメダルを重ねて土を固めた。ほまれさんは『とっておき』に

 必要不可欠だからな」

そう言うと、壮真はほまれを自分のところに連れてきた。

「ほまれさんに作戦の概要言っとくわ。ごにょごにょ…」

壮真はほまれに作戦を耳打ちした。

「なるほど、面白い考えだな。自然の摂理を利用するとは、酔狂な考えだ」

二人は、その作戦を実行しようと、ばらばらに散った。

壮真は、何の気なしに天井を破壊した。

「何だ、いきなり天井なんかぶっ壊して。気でも狂ったか?」

弦が口を開いた瞬間、大量の水が工場内に充満した。周りの空気が少し冷たくなった。

「言われたとおりにやったが…、私の仕事はこれだけか?」

ほまれが不満そうに壮真のほうを見た。

「ありがと、ほまれさん。これで下準備は整ったぜ。後は…、オレたちと存分に戦うだけだ」

「そういや、まだ私にも仕事が残っていたな。二人のコンビネーションで、奴を翻弄してやろうか」

ほまれと壮真は、赤いエレメントメダルを取り出した。

「「エレメントメダル、装填!」」

二人がエレメントメダルをアーツにセットすると、壮真のアーツの刃先が炎を帯びた。

一方、ほまれのアーツに変化は今のところ見られなかった。

「まずはオレから行く」

壮真は飛び掛かって弦に切り込んでいった。

弦は炎に一瞬体を翻した。

そこを狙い、壮真は攻めのチャンスを逃さなかった。

壮真はその勢いのまま、弦を壁際まで追い込んだ。その時、

『壮真!伏せろ!」

突然ほまれが叫んだので、壮真は咄嗟にその場にかがみこんだ。

すると、壮真の頭すれすれを炎を帯びた矢が通り抜けた。

その矢は弦の体に突き刺さり、後に消えた。

「なるほど、矢が離れたときに炎が付くのか。その代わり、刺さった後は消える…。なかなか

 面白い性能をしている」

ほまれはエレメントメダルの性能を冷静に分析した。

その時、辺りに白いもやが立ち込めてきた。

弦は視界を奪われ、その場に立ち止まった。

すぐそばにいたはずの壮真はもう忽然と姿を消している。

弦は斬撃と矢の射撃を一方的に受けた。

そこにまた壮真が姿を現し、種明かしをした。

「天井に穴をブチ開けたのは日光の熱も利用するため、水をまいたのは地面の熱を奪うため、

 冷えた地面の上で炎を使って攻撃すれば、自然と霧ができる…。俺たちはミストに苦しめられてきた。

 お前らが最初にミストで攻撃してきたんなら、こっちもミストでお返ししなきゃな」

と言って、壮真はまた霧の中に姿を消した。

「そろそろ終わりにする。行くぞ、ほまれさん」

「わかった。二人で決めよう」

「「エレメントミラージュコンビネーション!」」

壮真が最初に連続斬撃を仕掛け、弦の腹を蹴り、そこをほまれが矢で射った。

どこから来るかわからない攻撃に対応できるはずもなく、弦はそのままなすすべもなく倒れた。

「これがお前らの『とっておき』か…。こりゃ一本取られたね、俺の負けだ。さぁ、俺を警察に

 とっとと突き出せ」

弦は悟ったような顔をして言った。するとそこに、春希が現れた。

「おーっす、二人とも。この様子を見るに、この子倒せたみたいだね」

「何だ、アンタは…?警察の回しモンか?捕まえるんなら俺だけにしろ。あっちの奴らには手ェ出すな」

弦は春希に向かって声を荒げた。

「問題なし(ノープロブレム)!僕は宮島春希。武島中の理科教師であり、Arts Labの最高責任者と

 いう二つの顔を持つ男さ」

「センセイが何の用だ?」

「僕から一つ提案があるんだけどね。キミ、Arts Labに入らない?」

「「「えええっ!?」」」

春希の突拍子な提案に、春希以外は目を丸くした。

「話は最後まで聞きなよ。僕はこの戦いをずっと見てた。その中で、一つ気づいたことがあったんだ。

 弦クン、君は最初に壮真クンを追い詰めたときにとどめを刺さなかった。また、祝福に来た仲間に

 危険が及ぶのを恐れてすぐに部屋に戻した。しかも、かなりの数のヤンキーを束ねてるってことは、

 リーダーシップに優れてる。ちなみに、斧のアーツはかなり重い部類でね。戦闘スタイルも高いと

 見た。どう、二人とも。彼を仲間に入れたらどうだろう?」

「私は反対です。怪我人は出ていないにせよ、町を傷つけた悪党を入れるわけにはいきません」

「オレは賛成。戦ってる時、弦さんが慕われてるのもわかってた。この人は、根っからの悪人ではないと

 思う」

「弦クンはどうだい?僕たちと一緒に戦いたいかい?」

「俺は…、今までこの街を汚してきた。贖罪の場をくれるんなら、お前らと一緒に行きたい」

「それなら、決まりだね。ようこそ、Arts Labへ!」

弦は泣きじゃくり、感謝を春希たちに伝えた。

「奥にいるみんなもきたまえ、今夜は大宴会だ!」

春希たちは工場を出た。

辺りには、大歓声が響いていた。


-アーツ密売組織「chemitry」-

「あっれぇ、スパイ君じゃぁん、どーしたのぉ?」

謎の科学者の男が、スパイの言伝を聞く。

「ええっ、弦ちゃんやられたんだぁ!しかも、Arts Lab側についちゃったのぉ!?これじゃ、研究が

 台無しじゃん」

科学者はダンダンと足踏みをし、癇癪を起こした。その途端、にやりと笑った。

「でも、だっいっじょっおっぶ!この天ぇん才科学者リドーに任せんしゃい!」

天才は高らかに笑っていた。








次回予告!

リドーの手下であった弦は、晴れてArts Labの一員に!しかし、ほまれは弦に冷たい態度をとる。

そんな中、Arts Labに外国の姫の護衛の任務が入る。指名されたのは、ほまれと弦!凸凹な二人は、無事に任務を遂行できるか?次回ARTS第五話「不器用とお人好し」お楽しみに!

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