第二話 決断と正義感
前回までのあらすじ!
ごくごく普通の中学生、赤曽根壮真は、通学路で小さな剣を拾う。
壮真が学校へ行くと、学園のマドンナである溝呂木ほまれも小さな武器を持っていたことが判明する。
二人が話す中、アーツを狙うミストという怪物が現れる。
壮真は二人で協力してミストを撃退するが、理科の先生から選択を迫られて⁉
「選択…?」
春希に急に選択を迫られ、壮真は驚きが隠せなかった。
「そう、選択。アーツを使ってしまった以上、君には二つの選択をしてもらわなくてはならない。 一つ目はアーツを僕たちに返還し今まで通りの日常を送る。二つ目は君がArts Labの一員と なり、僕やほまれくんと共に戦いに身を投じる。どっちを選ぶかはキミ次第さ」
二つの選択を求められ戸惑っていると、春希が続けた。
「明日まで待とう。ゆっくり決めてくれ。今日はもう遅いからね。気をつけて帰るんだよ」
外を見ると、落ちようとする夕焼けが空を真っ赤に染めていた。
壮真とほまれは学校を後にし、足並みをそろえて帰り道を歩いていた。
しばらく歩いていると、ほまれが申し訳なさそうに口を開いた。
「すまない、赤曽根。こんな面倒事に巻き込んでしまって」
「ああ、それなら問題ない、倒せたから結果オーライ。…と言っても、放課後の情報量が多すぎて 頭パンクしちゃいそうだけどな」
「赤曽根は、これからどうするんだ?」
「どうすればいいんだろ。俺は順風満帆な生活に戻りたいけど、かといって一人で戦ってるほまれ さんをほっとくのも気が引けるし…」
「私的には、元の生活に戻ることを勧めるよ。これ以上一般人を戦いに巻き込みたくない」
壮真とほまれはしばらく会話を交わした後、それぞれ帰路に就いた。
壮真が家に着くころには、空は暗闇に包まれていた。
翌日、壮真は何げなく登校した。
家では、その選択についてのことばかり考えていた。
そのおかげで、勉強にも力が入らず、単元テストのこともすっかり忘れていた。
そのことに気づいて少し焦りながら教室に入ると、黒板に衝撃の一文が書かれていた。
『3-A赤曽根壮真 学校のマドンナと熱愛か』
「な、な、なんじゃこりゃぁぁーー⁉」
壮真は慌てふためき、必死に弁明した。だが、
「なぁ壮真、昨日ほまれさんと一緒に帰ってたんだって?くぅー、やるじゃんか!」
と矢口に言われてしまった。
壮真がみんなに囲まれあたふたしていると、ほまれが登校してきた。
ほまれが教室に入るや否や、たくさんの女子がほまれを取り囲んだ。
「赤曽根君とどんな関係?」「手ぇつないだ?」「赤曽根君のことどう思ってる?」
たくさんの質問がほまれに降りかかり、ほまれは耐えきれなくなった。
「何を馬鹿なことを言ってr…いや、私は赤曽根君と何の関係もございません。偶然帰り道で出く わし、他愛ない会話を交わしただけです」
ほまれは一瞬素の男勝りな口調が出そうになったが、こらえて何とか乗り切った。
その場を乗り切ってくれたほまれに、壮真は感謝のジェスチャーを送った。
今日も授業は順調に進む…かと思ったが、問題は単元テストだった。壮真は数学が大の苦手なのに、昨日はアーツのことを考えていたため、勉強に身が入らなかった。
ねじれの位置?体積?表面積?何が何だかわからない。壮真は撃沈した。
時間は進み、体育の時間になった。今日の体育は男女混合のサッカーだった。
4チームに分かれ、戦いの火ぶたが切られた。パスが回った途端、ひとつのボールにみんなが群がる。その光景は、バーゲンの際の主婦を彷彿とさせる。
壮真はその争いの蚊帳の外にいたせいか、ロングパスが壮真のもとへ渡ってきた。壮真はそのボールを軽く足でいなし、ゴールに向かって一目散に走り続けた。
壮真はシュートを決めようと思ったが昨日の疲れがたたり、空振りしてしまった。
「おい、何やってんだよ。いいとこだったのに」
クラスの男子が壮真を責めたてた。
「悪い、昨日寝付けなかった」
一同が揉めていると、空から何かが降ってきた。
その「何か」はもぞもぞと動き始め、壮真狙って襲い掛かってきた。
「こいつ…ミストだ!」
このミストは、ダンゴムシ型のミストだった。
そのミストは体を丸め、校庭を縦横無尽に走り回った。
サッカーゴールはなぎ倒され、阿鼻叫喚が広がった。その地獄絵図を目の当たりにして、壮真は自然と体が動いていた。
「ごめん、ほまれさん…俺、この光景を指くわえて見てるなんてできないや。俺、戦うよ。
Arts Labで、俺の大切な人たちを守るために!」
「…いい決断だな。なら、仲間としての歓迎の意を込めて、『壮真』と呼ばせてもらおう。」
突然の口調の変化に少し壮真は驚いたが、すぐに気持ちを切り替えた。
「初めての共闘か…準備はいいな?壮真‼」
「ああ!」
「「アーツ、解放!」」
壮真はBrade Arts、ほまれはArrow Artsを解放。直ちに戦闘態勢に入った。
「作戦はこうだ。こいつを校舎に近づけるな。私と壮真の連携攻撃で装甲を砕き、砕いたところを
一気に叩く!」
「OK.まずはこいつの転がりを止めなきゃな!」
壮真はミストの真正面に立ち、ミストの転がりをアーツの広い面で受け止めた。そして底にアーツを差し込み、力いっぱい持ち上げた。
ミストはひっくり返り、足元を見せた。そこには、無数の足がうじゃうじゃ生えていた。壮真は、その足の中に、一つの違和感があることに気づいた。
「ほまれさん、こいつの足の裏にコアみたいなものがある!」
「何だと…それなら作戦変更だ。私は校舎の上からコアを狙う。壮真はこいつが起き上がろうと
したら食い止めろ!」
「わかった!…こら、じっとしてろ!」
壮真は起き上がろうともがくミストを必死に押さえつけた。
「一発で決めてやる。Artsの力を…舐めるなよ!」
ほまれは狙いをつけ、力強く矢を放った。その矢はものすごい速度で飛んでいき、ミストの腹部を貫いた。
コアを砕かれたミストは灰になって消え、甚大な被害は免れた。
戦いが終わった後、ほまれと壮真はArts Labに赴いた。
「Arts Labには、理科準備室の掃除用具入れの前でアーツをかざせば入れる。出入りはいつでも OKだが、失くすと入れなくなるから気を付けてくれ」
二人がArts Labに入ると、春希先生が待っていた。
「お帰り。いい共闘だったね。もう決断はしたのかな?」
「ハイ、俺はほまれさんや春希先生とともに戦います。俺の…大切な人たちを守るために」
「そうか…こちらこそ歓迎するよ、壮真クン。ようこそ、Arts Labへ」
三人は微笑みあい、新たな仲間の誕生を祝った。
その窓には、輝くような夕焼けが空を覆っていた。
次回予告!Arts Labに加入することを決め、戦いに身を投じることになった壮真。早速初任務が!ウキウキで任務に取り掛かる壮真。場所を突き止め向かうと、そこに待っていたのは…?
次回 ARTS第三話「潜入と初任務」お楽しみに!