表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ARTS  作者: 白金 薊
VSchemitry編
1/16

第一話 覚醒と出会い

この物語は、話の都合上、みんな日本語でしゃべります。ご了承のうえ、お楽しみください。

 2012年7月 スペイン サグラダファミリア。

まだ建設途中である摩天楼に、謎の男が舞い降りた。

「止まれ!」 「お前の身がどうなってもいいのか!」

警察官が男に向かって、脅迫めいた台詞を浴びせ続ける。

男は聞こうともしないで、黙々と暗闇の中を突き進む。

その時、男の探し物が視界に入った。

男はにやりと不吉な笑みを浮かべ、撤退しようと思った途端―

男の周りを無数の警官が取り囲んでいた。

警官が「武器を捨てろ!」と言った次の瞬間、今まで警官と口を利かなかった男が、初めて言葉を発した。

「何を言っているんだい?君たちは拳銃という立派な武器を持っているのに、私にだけ武器を捨てろなんて言

 うのは…あまりにも不公平アンフェアじゃないか」

と言い、目の前の警官を徒手空拳でなぎ倒した。

「君たちも武器を捨てないというのなら、わたしもこのたくさんのアーツの中から特上のものを使おうか。

 うん、これでいいな」

男は小さな日本刀のようなものを手に取り、こう叫んだ。

「アーツ、解放!」

この時の出来事が、とあるごく普通の少年を人生を大きく狂わせるキッカケとなる。

 時は流れ、2023年4月…

サクラが町を桃色に色づかせ、暖かな気候に、気持ちも自然と弾んでくる。

そんな春の日の通学路を、ごく普通の少年、赤曽根壮真は歩いていた。

しかし、壮真は言うほど新学期に期待はしていなかった。

なぜなら、壮真の通う私立武島中学校は、中学3年の新学期にはクラス替えが行われないからである。

しかし、壮真は得られない新鮮な出会いを悔やんでも仕方がないと考え、歩みを進めた。

しばらく歩いていると、壮真は道に何かが落ちているのに気が付いた。

壮真はそれを拾い上げ、よーく観察してみた。

それはサービスエリアで売られているような剣のキーホルダーの豪華版、といったような見た目であった。

確かに小さいが、手に取ってみると、合金か何かでできており、ずっしりと重い確かな手ごたえを感じた。

壮真はこれを学校で見せびらかそうと思い、そのまま制服のズボンのポケットに入れて、そのまま持って行ってしまった。

 壮真が教室に入ると、クラスメイトの矢口が話しかけてきた。

「おーっす、壮真。お前、今日提出の課題、もうやったか?」

「うん。昨日必死で終わらせた。それがどうかしたのか?」

「それがまだ終わってなくてさ。答え見せてくれよ!今度ファミレスでなんかおごるからさ!」

「ああ。だけど、提出の時間になるまでにはちゃんと返せよ?」

一応の念を押して、壮真は昨晩必死で終わらせた課題ワークを手渡した。

すると、その光景を見ていたクラスの一軍女子が、壮真に声をかけた。

「なんか赤曽根くんと矢口君ってさ、いいように利用されてる、してるって関係じゃない?大丈夫?」

「問題ない。なんだかんだ、オレも矢口君には世話になってるからな」

そんな他愛ない会話をしていると、クラス中の視線が入り口付近に集まった。

その視線の先には、学校一のマドンナ、溝呂木ほまれの姿があった。

すらっとした抜群のフォルム、人形のような整った顔立ち。このような美しい美貌の上に、運動神経抜群、成績優秀ときたものだから、武島中学の生徒たちは彼女に憧れと尊敬の感情を抱くのである。

ほまれは優雅に教室の中に入り、にこやかにあいさつを交わした。

「おはようございます、皆さん。今日も頑張りましょうね」

彼女がそう言った瞬間、教室の男子はみな溶けるように倒れこんだ。

そこでホームルームを告げるチャイムが鳴り、壮真は拾ったものを見せつける暇もないまま、ホームルームに移行した。

 1,2時間目は何事もないまま過ぎ、事が進んだのは3時間目だった。

その時は数学の授業で、昨夜課題に追われていたせいか、妙に眠かった。

気を紛らわすため、拾ったものをいじくっていながら授業を受けていた壮真だったが、一瞬眠気が襲い、持っていた剣を落としてしまった。

カランカラァーンと、教室中に落ちた音が響き渡った。教室中の注目が壮真に向いた。先生は、

「おい赤曽根ー。何寝てんだ。しっかり授業聞いてろー」

「す…スンマセン」

教室中が笑いに満ち、明るげなムードになったが、ほまれだけは愕然とした顔で壮真のほうを見ていた。

昼休みになった。各々好きなことをし始める。

昼休みに外で遊んでいる人を見ると、よくそんなに元気が有り余ってるなと、逆に尊敬する。

その時、壮真にある人物が話しかけた。

「赤曽根君、放課後、3階の空き教室に来てもらえますか?」

精製水のような澄み切った声が耳に入り顔をあげてみると、眼前に立っていたのはあの美少女、溝呂木ほまれだった。

壮真は、その言葉の意味を理解するのに戸惑った。

放課後に来てほしい?しかも学校のマドンナと?こんなどこにでもいるようなオレに?

いきなりの連続で、頭がパンクしそうだった。

「わ、わかった。行く」

彼女のオーラに押され、思わずOKを出してしまった。

周りからの針のような視線が、とにかく痛かった。

 授業も終わり、放課後になった。

壮真は何も部活に所属していないので、帰りの挨拶をした後そそくさと帰りの支度を終え、指定された3階の空き教室へ向かう。

5分ほどすると、彼女はやって来た。

芳醇なシャンプーの香りが、あたりを優しく包む。

壮真は彼女からの告白を少し期待していたが、彼女の口から突拍子もない言葉が飛び出した。

「君、今日何か拾わなかったか?」

クラスの時とは180°変わった口調に、壮真は面食らった。

「数学の時に君が落としたもの、私には見えてしまってね。返してくれないか?」

「え、それだけ?待ってて。今取り出す…」

壮真が謎の剣を取り出そうとしたその時、ほまれの後ろの壁が瓦礫と化し、そこからカマキリのような怪物が現れた。

「あれは…ミスト?なぜ学校に?このアーツを狙ってるのか?」

ほまれは謎の怪物を睨みつけ、戦闘態勢に入ろうとした。

「何がどうなってる?アーツ?ミスト?あーもう訳分かんねぇ!おい!ほまれさん!危ないぞ!」

壮真は軽くパニック状態になったが、ほまれはいたって冷静だった。

「大丈夫だ。私は…戦う力を持っている。アーツ、解放!」

彼女がそう叫ぶと、小さな弓がみるみる姿を変え、大きな武器になった。

「ここは私が時間を稼ぐ!君は早く逃げろ!」

彼女がそう告げたが、壮真の体は動かなかった。

学校では見せなかった彼女の男口調、目の前にいる謎の怪物、アーツという謎の物体、その怪物とクラスメイトが戦っている…この数分間で起こった様々な出来事に、壮真は状況が呑み込めなかった。

ほまれは、ミストと呼ばれる怪物とデッドヒートを繰り広げていた。ほまれは遠距離から攻撃しようと距離を取り、そこから弓矢の連続攻撃を叩き込もうとする。

「まずい…この狭い廊下でこいつと戦うのは無理があったか…?でも、ここで取り逃せば甚大な被害が及  ぶ。ここは私が食い止めなくては」

序盤はほまれが比較的優勢に立ち回っていたが、徐々に追い詰められていき、ミストに突き飛ばされ、壁に激突した。

ミストは、そのスキを見てターゲットをほまれから壮真に変え、一目散に壮真に向かっていき、鎌を振りかざそうとした。 

やばい、死ぬ… そう思った時、ほまれが壮真をかばい、攻撃を受けた。ほまれはみぞおちを切られ、その場にうずくまった。

俺のせいで、人が死ぬ。そう思った壮真は、何かできることはないかと考え、ある一つの結論に至った。

「ねえ、ほまれさん。今日俺が拾った剣って、アーツって言うんだよね?それ、オレにも使えないかな?」

「君、いったい何を…?」

ほまれが怪訝そうに言うと、彼はこう言い放った。

「オレがほまれさんの代わりに戦う」

「無理だ!下手したら死ぬぞ!」

「大丈夫。それも承知の上。女が必至で戦ってんのに、それを見ているだけなんて、不甲斐ねぇ」

壮真は、手探りでアーツを探した。

「お、あった。えーと、確かこう叫ぶんだったな…『アーツ、解放!』」

壮真が叫ぶと、手に持っていたアーツが光り、見る見るうちに巨大な剣に姿を変えた。

「こいつは近接型のミストだ!Brade Artsは近接戦が得意だが、君のアーツならば奴の力に押し勝て   る。懐に潜り込んで一気に決めてしまえ!」

「OK、ならば一心不乱に…」

壮真はアーツを構え、ミストが来るのを待つ。壮真を狙い、ミストが計画通り向かってきた。

「ぶった切る!」

壮真が決め台詞を吐いた瞬間、アーツが伸び、ミストを一刀両断した。ミストは無残に切り裂かれ、息はなかった。

ほまれは唖然とした。

「嘘だろう…戦闘など未経験の者がアーツを使用し、ミストを一撃で葬り去るだと!?」

「大丈夫か?ほまれさん」

ほまれは壮真に呼びかけられ、落ち着きを取り戻した。

「ああ、なんとか一命はとりとめた。ありがとう。」

二人が手を取り合ったその時、理科の春希先生が現れた。

「うわー、これはパックリ切られてるじゃん。これ、ほまれちゃんのアーツじゃなくない?」

「え、理科の春希先生?なんでここに?」

壮真が不思議そうに見つめると、また驚きの一言が飛び出した。

「うーん、壮真クンはアーツを使ってしまったわけだし…隠す意味もないかな!俺は武島中学校理科教師  かつArts Lab主任の2つの肩書を持ってるんだ!アーツを持ってしまった以上、君には2つの選択をし  てもらう!」

「は?」

壮真はまた状況が呑み込めなかった。







次回予告!

アーツを手にし、勝利を手にした壮真。春希先生から、ある二つの決断を迫られる。決めあぐねているまま学校生活を過ごしていると、またもや学校にミストが現れる。そのとき、壮真が下した決断とは?次回ARTS第二話「決断と正義感」お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ